概要
拡大する宇宙産業を支えるため、宇宙で確実に動くものづくりができる人材育成を目指した高度技術者育成プログラムの一環として、本学学生が製造した超小型衛星4号機「BOTAN」が初期ミッションを達成した。
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2号機「KASHIWA」(2024年4月11日ISSから放出)、3号機「SAKURA」(2024年8月29日ISSから放出)、1号機「YOMOGI」(2024年12月9日ISSから放出)に続き、4衛星連続で初期ミッションに成功した。
詳細
世界の宇宙産業はここ数年で数倍に拡大しており、我が国でも旧来の宇宙企業に留まらず、多くのベンチャー企業が宇宙ビジネスアイデアを提案し、企業活動を開始している。しかし、新たなビジネスアイデアを実現するために不可欠な技術者が圧倒的に不足しているのが現状である。
本学では、社会課題解決のための宇宙を使ったソリューションを確実に実現できる衛星づくりができる技術者を育成するために、2021年4月より「高度技術者育成プログラム」を実施してきた。
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その4号機「BOTAN」は、2023年4月に当時の学部2年生が開発に着手した10cm×10cm×10cmの超小型衛星(1Uキューブサット※1)である。2025年9月15日(日本時間)、アメリカ・スペースX社ファルコン9ロケットで打ち上げられ、ノースロップ・グラマン社シグナス補給船NG-23号機にてISSへ輸送された。2025年10月10日(日本時間)に国際宇宙ステーション(ISS)から放出・軌道投入された後、地上との通信が確立し、2025年10月17日、人工衛星局相当アマチュア局免許が交付された。
衛星基本機能の宇宙空間での動作確認を行い、「BOTAN」で計画していた初期ミッションを以下の通り達成した。
① ミニマムサクセスレベル(最低成功条件)「衛星が撮影した画像1枚を地球上で画像に復元する」をクリア
② APRS※2による一般アマチュア無線家へのメッセージ送信
③ 新しい衛星用太陽電池セル(CIGS太陽電池セル※3)の宇宙実証(出光興産株式会社との共同ミッション)
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初期ミッションは軌道投入後の運用初日に早くも達成され、「BOTAN」の高い完成度を示すことができた。
また、「BOTAN」は国際宇宙ステーションから放出後すぐに、ライブ中継の映像により起動していることを目視できるテレメトリとしてLEDを装備しており、その点灯も確認された。

今後数カ月の間、オーロラの観測と太陽フレアの影響の調査、アメリカ・サウスダコタ州のトウモロコシの生育状況の調査、海底火山噴火時の軽石の調査、ジャイロセンサを用いた衛星姿勢情報の収集に挑戦する。また、SNSやウェブサイトを通じて「BOTAN」が取得したデータを公開していく予定である。
本プログラム開始からの4衛星「KASHIWA」、「SAKURA」、「YOMOGI」、「BOTAN」は連続で初期ミッションを達成した。本プログラムが目指す「確実に動く衛星を作れる高度技術者の育成」が着実に成果を上げている。
(※1)キューブサット:1辺10cmの立方体サイズ・1kg程度の質量からなる(1Uサイズの)超小型衛星。世界的にも多くの大学・企業が参加し、衛星製造・運用の入口として活用されている。近年では3Uサイズの衛星単体、あるいは複数機を使った実用的な衛星利用も始まっている。
(※2)APRS:Automatic Position Reporting Systemの略であり、アマチュア無線局がアマチュア無線電波上に生データをリアルタイムに配信するパケット通信プロトコルである。
(※3)CIGS:Cu(銅)、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Se(セレン)の頭文字をとった、出光興産株式会社で開発中の太陽電池セルである。
