登山道を歩いてしか行けない八ヶ岳の山小屋「赤岳鉱泉(長野県茅野市)」に、重たい荷物を運ぶ新しい方法が誕生した。それは、30kgもの重量の荷物を運べる、大型でパワフルな物流用ドローンだ。
2025年8月と9月、国際ドローン協会(以下:IDA)と八ヶ岳赤岳鉱泉・行者小屋は、山岳地帯でこのドローンによる物資輸送を行い、無事に成功させた。
山小屋の方々や登山道を整備する方々の負担を軽くし、自然と人をもっと優しくつなぐ取り組みが、いよいよ動き出した。今回の輸送では、高度1,400mから2,200mまで、総重量30kgの物資を運搬した。特に、高低差約800mという大きな標高差での重量30kgの物資輸送は、日本で初めての試みとなる。
※2025年8月時点、総代理店へのヒアリング調査等による自社調べ。
果物30kgを日本で初めて赤岳鉱泉へお届け(8月14日)
8月14日、IDAは麓から約6.7km、標高2,200mにある赤岳鉱泉まで、重さ30kgの果物をドローンで運んだ。本来なら人が背負って2〜3時間かかるこの道のりを、ドローンはわずか7分ほどで飛行。運ばれた果物を見た山小屋スタッフからは驚きと喜びの声が上がった。
これは単なるイベントではなく、ドローンが山の新しい“運び屋”になれることを証明した、大きな一歩だ。今回使用したドローンは、大型バッテリーとGNSS機能、風にも強い安定した構造を持ち、山の上でも正確に荷物を届けることができる。今回の飛行では、機体のバッテリーを交換することなく山頂まで荷物を届け、往復を完了。帰還時も十分なバッテリー残量を確保していた。
壊れた登山道を直す資材もドローンで!(9月23日)
9月23日には、赤岳鉱泉からさらに山奥にある行者小屋までの登山道で、壊れてしまった箇所を直すための資材をドローンで運んだ。細く滑りやすい山道では、資材を手作業で運搬するのは容易ではない。特に重たい木材や工具などを何度も往復して運ぶ作業は、心身ともに負担が大きいものだった。そこでIDAは、荷物を上空からウインチとワイヤーを使って、目的の場所にピンポイントで下ろす作戦を実行。
結果、作業者の負担を大きく減らすことができ、安全性も飛躍的に向上した。これはまさに、テクノロジーが人の暮らしを助ける好例と言えるだろう。
「山に恩返しがしたい」IDA代表・榎本氏の想い
榎本氏は次のようにコメントしている。
登山道整備は本当に重労働で、多くのボランティアや山小屋スタッフが汗を流してくれています。そんな人たちの負担を少しでも減らしたい。そして、長年お世話になった山に恩返しがしたい。そんな想いがずっとありました。
今回のプロジェクトは、その願いが形になったものであり、今後も登山や自然保護の現場でドローンが役立つ未来を見据えているという。
今回の高度なフライトを担ったのは、国家資格を持つ2人のプロフェッショナルパイロットだ。
榎本 幸太郎(一般社団法人 国際ドローン協会 代表理事)
塚田 幸一郎(同 技術統括)
両名は、「一等無人航空機操縦士」の国家資格を有しており、最大離陸重量25kg以上、目視外飛行、夜間飛行の全ての限定解除を取得している。これにより、あらゆる状況下で安全性と信頼性を両立した運航体制を実現している。
どんなに技術が進んでも、安全第一で、IDAは法律を守り、自然と共存しながらドローンを運用していくという。
これからの八ヶ岳とドローン
これからIDAは、赤岳鉱泉と地域の人々と一緒に、ドローンを使った“山の物流”を本格的にスタートさせていくという。
食材、日用品、修理道具だけでなく、災害時の応急物資の運搬など、ドローンの活用は無限大だ。また、高齢化が進む山岳地域では、ドローンが人手不足を補う大きな力になると考えている。ドローンはただの空飛ぶ機械ではなく自然と人、人と人をつなげる「空の道具」である。誰もが山ともっと優しくつながれる未来を目指していくという。