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ニュース

ドローンライトショーの事故をAIで防ぐ[小林啓倫のドローン最前線] Vol.98

花火に代わる新たなエンターテインメント、その裏に潜むリスク

2026年2月4日
小林啓倫のドローン最前線
2025年10月に中国の瀏陽(リウヤン)で開催された、現時点で世界最多となる15,947機によるドローンショー

夜空に浮かぶ数百、数千機、時には1万機を超えるドローンが、光の軌跡を描き、花火のように弾け、さまざまな姿を形作る。ドローンライトショーは、この数年で世界中の文化イベントやスポーツ大会、企業プロモーションに欠かせない演出となった。火薬を使わないため環境負荷が低く、複雑なアニメーションも可能。再利用できるためコスト効率も良い。しかし、この華やかな技術には、まだ解決されていない深刻な課題がある。

2024年12月、米フロリダ州オーランドのホリデーイベントで、500機のドローンによるライトショーが悲劇に転じた。ショー開始直後、複数のドローンが制御を失い、観客エリアに落下。7歳の少年が顔と胸を直撃され、開心術を要する重傷を負った。米国運輸安全委員会の調査によれば、原因は発射位置の7度のずれと安全バッファゾーンの設定ミスという「複合エラー」だった。また2023年には、オーストラリアのメルボルンで、500機中427機が海に墜落する事故も起きている。こちらは上空の風速を確認しなかったことが原因だった。

フロリダ州で2024年12月に発生したドローンショー事故の様子

こうした事故は、単なる機材トラブルではない。1機の故障が連鎖的に周囲のドローンを巻き込み、被害を拡大させる「カスケード崩壊」のリスクを浮き彫りにしている。密集して飛行するドローン群において、1機が制御を失えば、それが近隣の機体に衝突し、さらなる故障を誘発する。この問題に対し、テキサス州立大学とテキサス大学オースティン校の研究チームが、AIを活用した新たな解決策を提案した。

発表された論文によれば、研究チームが開発したのは、複数のドローンが同時に故障した際の「避難アルゴリズム」である。その核心にあるのは、故障したドローンの落下軌道を予測し、残りのドローンを安全な場所へ退避させるという発想だ。

この発想は極めて当然で、単純な話に思えるかもしれないが、実際には極めて難しい問題である。

論文によれば、ドローンの故障にはさまざまなパターンがある。バッテリー切れで緩やかに降下するケース、GPS信号を失って予測不能な動きをするケース、モーターが停止して自由落下するケースなど、状況によって挙動は大きく異なる。しかも、故障の瞬間に「どのタイプの故障か」を即座に特定することは困難だ。地上の管制システムは、ドローンが正常な軌道を外れたことは検知できても、その後どこに向かうかを正確に予測することはできなかった。

AIで致命的な事故を回避する

研究チームは、この予測問題を解くためにディープラーニング技術を活用した。具体的には、「Social LSTM」と呼ばれる手法をベースにした機械学習モデルを開発している。このモデルは元々、混雑した空間での歩行者の動きを予測するために考案されたものだ。

人々が互いの動きを意識しながら歩く様子をパターンとして学習し、次の瞬間の位置を推定する。研究チームはこの手法を応用し、故障したドローンの「過去数秒間の姿勢データ」から、その後の軌道を予測するモデルを構築した。

故障ドローンの軌道予測ができたとしても、それだけでは不十分だ。数百機が密集して飛行するショーでは、どのドローンをどこに退避させるかという「交通整理」の問題が発生する。退避中に別のドローンと衝突しては元も子もない。

研究チームは、この問題を解くためにショーの空間を3次元のグリッドに分割した。さらに時間軸も加え、「特定の場所に、特定の時刻に、故障ドローンが存在する確率」を計算できるようにした。機械学習モデルによる予測を複数回実行し、各グリッドセルが故障ドローンによって占有される確率を統計的に算出する。論文ではこれを、「占有確率」と呼んでいる。

占有確率が高いエリアは「危険ゾーン」として定義される。システムは、このゾーン内にいるドローンを速やかに退避させ、ゾーン外のドローンが誤って侵入しないよう制御する。退避経路の計算には、ロボット工学で広く使われる「RRT(急速探索ランダム木)」というアルゴリズムを応用した。各ドローンについて、現在位置から安全な「駐機エリア」までの経路を探索し、故障ドローンとの衝突確率が最も低いルートを選択するのである。

研究チームの提案には、もうひとつ興味深い仕掛けがある。「隠れドローン」の活用だ。これは、LEDライトを消灯した状態で待機させておくドローンのことである。故障が発生し、一部のドローンが脱落した後、この隠れドローンが起動してショーに参加する。観客からは見えない場所から登場し、欠けた位置を埋めてショーを継続させる。いわば、舞台裏で待機する「控え選手」だ。

この発想は、単なる安全対策を超えた意味を持つ。ドローンライトショーの事業者にとって、ショーの中断は大きな損失となる。イベント主催者への違約金、ブランドイメージの毀損、SNSでの拡散による評判リスクなどなど――前述のオーランドの事故後、同じ会社が予定していた別都市でのショーがキャンセルされたことからも、その影響の大きさがわかる。しかし「隠れドローン」による即時復旧は、安全性と事業継続性を両立させる手段となり得る。

研究チームはシミュレーション実験を行い、これらの手法の有効性が確認されたとしている。しかし実際のショーでの運用実績はこれからだ。軌道予測の精度、計算処理の速度、通信遅延の影響など、現場で検証すべき要素は多い。また、こうした高度な安全システムの導入は、事業者にとってコスト増要因となる。中小規模の事業者が対応できるかどうかも課題だろう。

ドローンのライトショーはいまや、世界中で行われるエンターテインメントになりつつある。この新たな手法が、その普及に弾みをつけるような技術として実用化されるかどうか、今後の取り組みに期待したい。

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TAGGED: AI, ドローン, ドローンライトショー, 小林啓倫のドローン最前線
masuko 2026年2月4日
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