プロジェクト推進の背景
日本の農林水産業は、国民の食料を安定に提供し、地域経済を支える重要な役割を担っている。だが、鳥獣による農作物の被害が農林業者の生産意欲を低下させる深刻な問題となっているという。
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そのため、環境省・農林水産省は2013年に「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」を共同で取りまとめ、「シカ・イノシシの生息頭数を2023年までに半減させる」ことを目標に掲げ、さまざまな活動をおこなってきた。その結果、農作物被害額は減少傾向にあるが、被害を受ける地域が広がる傾向となっている。また、狩猟者の高齢化が進んでいることもあり、目標未達の可能性がある状況だとしている。
千葉県においても、高齢化による狩猟者の減少が進む中、相反するように捕獲頭数は増加傾向にあるという。また、イノシシが県内を北上し、人口の多い地域へと増殖を続けており、人への危害の可能性も出てきて、狩猟者の負担が増すばかりの現状となっているという。
このような中、各社がそれぞれの強みを活かし、プロジェクトを推進することで、千葉県の害獣駆除の課題を解決できると考え、「先進的デジタル技術活用実証プロジェクト」を推進することとなったとしている。
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プロジェクトの全体スケジュール
2022年度
- 赤外線搭載ドローン自立飛行、AIによるイノシシの自動検知
- 検知できた場所へ大型ドローンによる「くくり罠」「遠隔通報機」を搬送
- 設置場所のシステムへのマッピング
2023年度
- 仕留めたイノシシの大型ドローンによる麓への搬送
- AIシステムと大型ドローンの連携による自動飛行の実現
- 害獣DX千葉モデルの確立
プロジェクト体制
同事業は下記の通り、役割を分担し実施される。
- 株式会社ダイヤサービス:プロジェクトオーナー、ドローン運航全体管理
- 株式会社SkyDrive:物流ドローンの機体提供と運航
- 株式会社ロックガレッジ:AIシステムの開発、地図データシステムの開発、同システムの提供
- 合同会社房総山業:狩猟現場案内、狩猟現場立ち会い
- 木更津猟友会:狩猟の専門家派遣
実証実験概要
これまで、千葉県の狩猟現場での物流ドローン「SkyLift」の活用をするべく、飛行試験を重ねてきており、今回は下記の通り飛行試験を実施した。
- 日程:2022年12月27日(火)
- 場所:千葉県木更津市矢那
- 実証内容:小型ドローンで害獣のAI検知し、必要箇所をマッピングする。そのマッピングポイントを想定した箇所に害獣捕獲用のくくり罠、監視用カメラなどの物資運搬
- 運搬物:・害獣捕獲用のくくり罠 ・遠隔通報装置(最大20kg)
- 運搬距離:263m(直線距離)※徒歩約25分程度
- 荷下ろし方法:無着陸でのホイスト機構による荷下し
実証実験の流れ
1.市販ドローンによる害獣のAI検知
2.物流ドローン「SkyLift」によるくくり罠・遠隔通報装置の搬送
3.狩猟者によるくくり罠・遠隔通報装置の設置
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4.マッピングシステムによるくくり罠設置場所の監視
実証実験に使用した物流ドローン「SkyLift」の基本仕様
- 全長:全長2.5m×全幅1.9m×全高1.0m(プロペラ展開時)、全長1.9m×全幅1.2m×全高1.0m(プロペラ折畳時)
- 機体重量:35kg(バッテリー20kgを除く)
- 最大ペイロード:30kg、20kg(ホイスト機構利用時)
- 飛行速度:36km/h
- 飛行可能距離:2km(最大積載時)
- 飛行時間:9~15分(積載重量による)
- 運搬方法:機体固定式ボックス・着陸せず荷物を昇降するホイスト機構
5社は今後、更なる実証実験を重ね、物流ドローン等を活用した猟銃モデル策定により、千葉県の害獣駆除の課題解決の推進に貢献していくとしている。