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コラム春原久徳

2026年、ドローン産業で何が起こるか[春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.98

前回の年末のコラムで、ここ10年間のドローン産業の動きを追ったが、今回は今年起こる大きな変化に関して考えてみたい。

2026年1月26日
春原久徳のドローントレンドウォッチング
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米国の大きな変化

何よりもドローン産業にとって、2026年に大きな変化が起こることの主役は米国になっていくだろう。それはやはりPart108の施行となる。

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Contents
米国の大きな変化運用者の対応機体メーカーの対応クラウド/アプリケーションメーカーの対応周辺事業者の動き米国におけるサプライチェーンや海外機体の扱い日本の動き

Part108の核心は以下3点となる。

  • BVLOSは"許可"ではなく"能力"で評価される
  • 安全の主語は、機体でも操縦者でもなく「運用組織」
  • 判断と記録が、そのまま規制適合性になる
目的
BVLOS(視界外飛行)を日常的に可能にし、商業ドローン運用を促進する。
運航主体
個人ではなく、企業(オペレーター)が責任を持つ「企業運航モデル」。
役割
「オペレーション監督者」や「フライトコーディネーター」が設置され、専門知識を持つ者が関与する。
安全管理
SMS(Safety Management System)の導入が必須。
許可体系
短期運用には「許可」、長期運用には「認証」という2種類の制度を導入。
メーカーの責任
型式証明は不要となり、業界基準に基づく性能確保と運航限界の設定が求められる。

機体の技術要件は以下となっている

観点 機体に求められること
認証 型式認証不要
状態把握 外部から健全性が分かる
通信 断絶時の挙動が説明可能
Detect-and-Avoid 技術 or 運用で代替可能
フェイルセーフ 安全側遷移が定義済み
構成管理 変更を追跡できる
ログ 判断・説明に使える
セキュリティ 異常が検知・抑制可能

この実施に向けて、米国のドローン産業は大きく動き出している。そして、米国だけでなく、米国をターゲットにした台湾や韓国の機体メーカーなども急速にその対応を開始し始めている。

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運用者、機体メーカー、クラウド/アプリケーションメーカーや周辺事業者がどのように動いていっているか記したい。

運用者の対応

今回、最終的な責任は企業運用者に集中している。
「オペレーション監督者(Operations Supervisor)」や「フライトコーディネーター(Flight Coordinator)」という責任者が置かれ、その運用責任として、この2つの役割が重要になっている。

観点 Operations Supervisor Flight Coordinator
責任範囲 運用全体 個別飛行
時間軸 中長期 リアルタイム
主業務 体制・手順・是正 判断・調整
FAA対応 主窓口 補助
中止判断 原則権限 即時権限

今回のPart108では国家資格としての操縦資格を必要としていないため(そもそも操縦に重きをおいていない)、この2つの責任者向けのPart 108 実務カリキュラムが作られ、そのトレーニングが急速に始まっている。これは国家資格でなく、運用安全性を自ら示すものとなっており、よりBVLOSの実態の安全性の強化にもつながっている。
以下がそのトレーニングの代表的なモジュールとなっている。

  • I. 共通基礎モジュール(OS / FC 共通)
    • Module C-1|Part 108 の思想と責任構造
    • Module C-2|ConOps(運航概念)の実務設計
    • Module C-3|Ground Risk / Air Risk(運用視点)
    • Module C-4|Security を Safety 判断に接続する
    • Module C-5|記録・説明責任(Evidence)
  • II. Operations Supervisor 専用モジュール
    • Module OS-1|運用体制設計と責任分界
    • Module OS-2|Safety / Security Case の統括管理
    • Module OS-3|変更管理(Change Management)
    • Module OS-4|監査・対外対応
  • III. Flight Coordinator 専用モジュール
    • Module FC-1|状況認識(Situation Awareness)
    • Module FC-2|Go / No-Go 判断実務
    • Module FC-3|異常・インシデント対応
  • IV. 統合演習モジュール(OS / FC 共同)
    • Module I-1|実運用シナリオ統合演習
  • V. 修了評価・認定連動(参考)
    • Module E-1|修了評価・認定

このトレーニングのモジュール目次を見ても分かるように、米国におけるBVLOSの運用安全性は圧倒的に高くなり、ドローン運用の高度化が一気に進んでいく形になるだろう。

機体メーカーの対応

Part 108 では、メーカーは「認証を取る主体」ではなく、「運用者が説明責任を果たすための材料を提供する主体」になっている。
「FAA に直接提出する」よりも、「運用者が FAA に説明するために使う」文書を準備する必要があるということだ。
Part 108 において、メーカー文書は次の 4系統に分かれている。

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  1. 運用適合性を示す文書(Safety 系)
  2. 異常・攻撃・誤用に関する文書(Security 系)
  3. 構成・変更・供給網を示す文書(Configuration / BOM 系)
  4. 運用者の説明・判断を支援する文書(Ops 支援系)

いわば、上記に示すようなホワイトペーパーを準備しておかないと、運用者がそのメーカーの機体を購入してくれないということになる。
こういった動きも米国もしくは米国市場をターゲットにしている機体メーカーの中で進んできている。(この文書化の動きはBVLOSに限らず、安全性を高めるものになっていくのが、今後、産業用途であれば事実上の標準となっていくだろう)
これは文書化の標準ということであるが、当然、文書だけでなく、セーフティ、セキュリティ、構成/サプライチェーン、運用支援の機体への実装化が図られていくことになっていき、これも機体メーカーとしての総合力を圧倒的に向上させていくことになっていくだろう。

クラウド/アプリケーションメーカーの対応

このPart108の動きは、クラウド/アプリケーションメーカーへも影響を与えている。
それは、「操縦を助ける」存在から「責任を成立させる装置」へと変わってきている。
立ち位置が以下のように変化しているのだ。

従来(Part 107 時代) Part 108 時代
  • フライト支援
  • ミッション管理
  • 映像・テレメトリ表示
  • 操縦効率・UX 改善
  • Go / No-Go / Abort の判断支援
  • 判断根拠の記録と再現
  • 組織的運用(OS / FC)の実装
  • FAA・顧客への説明材料生成

日本においては、ドローン機体本体の機能や性能といったところに目が行きがちで、従来項目にあったフライト支援、ミッション管理、操縦効率・UX改善といった部分もまだまだであるが、米国においては、Part108に向けて、より高度な運用者支援のソリューションが揃ってくるだろう。
元々、日本のクラウドやアプリケーションベンダーにとっては、こういった運用者支援のソリューション開発に関しては得意としている企業も多いので、チャンスとも言えるが、そのターゲットがまず米国市場といったところで、なかなか経営判断がつきにくい企業も多いだろう。ただし、その2~3年程度の遅れが、決定的な差となってしまうが、それは最近の日本の傾向になっていることは悲しい。

周辺事業者の動き

ドローン産業にもその他の周辺事業者は様々ある。例えば、操縦スクールなどはPart107までは日本と同様に操縦資格が重視されていたが、Part108の発表により、先ほど記したような運用技術や技能が中心となっていく中で、大きな転換が図られている。
また、周辺事業者の中でも、重要な位置となっている損害保険会社であるが、これも大きく動いている。
今までは、「ドローンをどう補償するか」が中心であったが、これが「"補償できる運用"をどう定義・選別するか」となっている。
それは以下のような立ち位置の変化だ。

従来(Part 107 / Waiver 時代) Part 108 時代
  • 機体・操縦者・保有者中心
  • 年間包括・時間単位保険
  • 事故後支払いモデル
  • 引受判断は定性的
  • 運用(ConOps)単位
  • 組織(OS / FC)単位
  • 判断・記録・是正プロセス
  • 引受前・運用中・更新時の継続評価

この変化に向けて、米国の損害保険会社も勝ち残りにむけて大きく動いてきており、以下のようなガイドラインの作成や保険商品の開発が行われている。

  • Part 108 Underwriting Guideline
    • 引受可否基準
    • 必須文書リスト
    • NG 運用パターン
  • Claim Assessment Guideline
    • 事故有無より判断履歴
    • ConOps 逸脱の有無
    • Security 前提崩壊の扱い

米国におけるサプライチェーンや海外機体の扱い

昨年2025年の12月、米国の連邦通信委員会(FCC)は、米国の国家安全保障上の懸念に基づく判断として外国で製造されたUAS(ドローン本体)および重要コンポーネントをCovered List(リスク機器リスト)に追加した。
これは政府内の複数の国家安全機関が、外国製ドローンが米国内で継続監視や敏感データの抜き取り、リモート無許可操作のリスクを持つ可能性が高いと判断したためだ。
そのため、単に中国系企業の製品だけでなく、「外国製」のUAS全体に対する新規FCC認証の凍結・禁止措置という形になっている。
対象となる外国製ドローンおよび関連機器は、新規のFCC機器認証を受けられなくなっており、FCC認証がなければ、米国への輸入・販売・市場投入が実質的に禁止される運用となる。対象にはドローン本体に加え、通信モジュール、飛行制御装置、ビデオ送受信装置など重要コンポーネントも含まれる。ただし、例外的に米国防総省や国土安全保障省が安全と判断した個別機器・クラスは、FCC決定前に特別判断でリストから除外可能とされている。
今年の1月には、DJI排除法案の廃止(あるいは撤回)ということもあったが、これにより、FCCの動きがなくなったわけではなく、DJIに限らず、「外国製」の機体や重要なコンポーネントに関しての実質上の輸入禁止がなくなったわけではない。
しかし、これにより、「外国製」の機体や重要なコンポーネントの絶対的な輸入禁止となっているわけではない。
それは、「Blue UAS」の枠組みがそこにはあるからだ。
以前より、このコラムで記しているが、改めてその流れとこれからの動きを示したい。
その出発点としては、国防用途(Blue UASの原型)として、米国防総省(DoD)が主導し、Defense Innovation Unit(DIU)が評価する国防・安全保障用途の信頼UAS枠として2020年に始まった。
その評価軸として、サプライチェーン(製造国/所有構造/BOM透明性)、サイバー(通信・更新・ログ・データ経路)、運用(保守・更新・失効管理)となっていた。
実質上は、国防で使用可能なDJI Mavic代替という形であり、それがオープンアーキテクチャを中心として、その仕様が構成された。
その第1の拡張として、2022年ぐらいから、公共安全・治安(DHS/州・自治体)に広がった。
国土安全保障省(DHS)配下のCBP/沿岸警備/警察・消防が、Blue UASまたは同等評価を調達要件に採用していった。これは、監視・災害対応は国家安全と直結しており、また、連邦補助金の要件に組み込みやすいといったこともあったであろう。
第2の拡張として、2023年ぐらいから、重要インフラ(準公共・規制産業)、電力・通信・水道・パイプライン・鉄道などの重要インフラへ波及していった。
この背景としては、サイバー規制(NERC CIP 等)、事故時の責任分界(供給者の信頼性)、
連邦・州の調達ガイドラインの横展開といったことがある。
その後、2024年|「同等基準(Blue UAS-equivalent)」が登場し、民間メーカー向けに「Blue UASと同等の要件を満たす」自己宣言+第三者監査として動き出した。
これは、軍専用基準 から 民生適用可能な"信頼設計指針"へ抽象化といったこともあるだろう。
そこで、先ほど記した連邦通信委員会(FCC)が外国製UASの新規FCC機器認証を停止(Covered List)という出来事が起き、その結果として、Blue UAS(または同等評価)が"市場アクセスの救済条件"になってきている。これは結果的に、国防基準が民生市場の入口条件に昇格したことを示している。
また、今年以降、このBlue UASのスキームが民生BVLOS・産業利用への定着期となってくるだろう。これは、FAA Part 108(BVLOS恒久制度)やBuy American / NDAA / 調達要件と連動してきており、その実態として、公共・インフラ・BVLOS案件ではBlue UAS or 同等基準が事実上の前提となってくるだろう。
これは「Blue UAS = "米国におけるTrusted UASの事実標準"」を意味する。
いわば、2020年から積み上げてきたDJI依存からの脱却がようやく完成に近づいたということであり、BVLOSを中心としたドローン産業の本格化といったタイムフレームにおいて、米国のドローン産業が果実を得る土台が出来たということであろう。

日本の動き

米国のPart108に関して、日本でも省庁やドローン関連企業間でも様々な形で話題にあがる機会は増えてきてはいるが、大方は「注視する」といった形になる場合が多い。
個人的にコンサルティングなどを行っている企業に関しては、「注視する」といった消極的な捉え方でなく、もしドローン関連企業として生きていくためには、「対応前提」で動いていく必要があると伝えている。それはここで立ち遅れると、それをキャッチアップしていくことが困難であるからだ。今までも特にここ最近ではそういった時代の流れに乗り切れず、産業としての魅力を失っていってしまった産業が多い、というよりそんな産業ばかりだからだ。
先日1月7日、読売新聞で「ドローンの国内量産化へ助成、年8万台の体制整備目指す…政府方針」という見出しが躍った。
そして、「25年度補正予算に139億円計上」という内容もあり、ドローン関連企業の株価を押し上げた。
これは経済産業省が公開した「無人機産業基盤強化検討会 中間取りまとめ」といった経済産業省が審議会として設置した「無人機産業基盤強化検討会」で 2025年12月24日に公開された中間報告書をベースにしており、ドローン産業の活用分野や課題、政策検討の方向性が示されている。
そして、2025年度補正予算 139億円の主な内容(関連支援費用)は以下となっている。

  • 関連費用として139億円を計上
    → 政府はドローンの国産化・量産化を進めるため、2025年度補正予算に 139億円 を計上。
  • 今後3年間の補助を念頭にした支援策
    → この予算は、今後 3年間の補助支援を見据えた費用として割り当てられており、支援体制の整備を進めるための初期投資として位置付けられている。
  • 2026年に基金を設立して支援体制を構築
    → 公募開始時期を含め、2026年度に支援用の基金を設け、申請企業への助成・補助金支給など具体的な支援が実施される見込み。
  • 助成率・対象例(政策方針として想定)
    → 研究開発費や生産設備投資費に対し 最大50%の助成(例として提示)とし、主要部品の国内生産体制強化も支援対象にする方向。
  • 支援対象分野
    → 消防や災害対応、インフラ点検、農薬散布などの産業用ドローンを中心に国産化・量産化を促進する政策。

これは国産を中心としたドローンのサプライチェーンの充実といったものを構築していきたいという経済産業省の想いと連なっているものであるけれど、こういった予算措置といったものも大切ではあるが、先ほど記してきたように、中国が非常に強いサプライチェーンを握る市場において、米国が2020年から行ってきたような拡張性が高く、現実的なプラットフォームをどういう風に構築していくか、また、それを中国以外の国々(米国、台湾、韓国、インド、ウクライナなど)とどういう風に競合・連携していくか、そして、何よりその中でどんな形で強みを生かしていくかといったことが重要であるし、そのイニシアティブとなるべきであろう。

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masuko 2026年1月26日
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