UCAV(戦闘用無人機:unmanned combat air vehicle)の開発熱は世界中で留まることを知らない。それらのスタイルは、21世紀に入ったばかりの頃は実験機や偵察型も含めて垂直尾翼の無い無尾翼全翼機が多かったものの最近は有人戦闘機とさほど違わないか、むしろオーソドックスなスタイルに回帰したようなUCAVも現れ、その一方で、未来的な姿も散見される。UCAV自体の本格配備がまだ先の中、スタイルの変遷と広がりが先行しているようだが、これは何を意味するのか。
ステルスに"突起物"はいらない
航空機は空気という流体の中を飛ぶだけに、使う目的が同じなら、その流れの中で目的をいかんなく発揮できるようスタイルは必然的に似てくる。水中を泳ぐ魚と同じだ。例えば、戦闘機はどこの国でもいつの時代でも敵を撃墜する高い運動性と速度、長い航続距離を備えようとするため、米露のF-15とSu-27シリーズを見るように、細かな部分に違いはあるものの、全体的なスタイルは似てくる。ならば、同じ空気の力を借りて飛び、同じように戦闘(combat)を目的とする各国のUCAVはスタイルが似てもおかしくない。
同時に、各国の航空機の設計者は空気抵抗を減らそうと頭を悩ませてきた。解の一つが「全翼機」であり、垂直尾翼まで無くした無尾翼全翼機は平坦なスタイルゆえに、もう一つの頭の悩ませどころである、レーダーに映りにくいステルス性をアップさせることができる。尾翼などの「突起物」が如何にレーダー電波を跳ね返しステルス性の確保を妨げるか。米空軍のF-22戦闘機などは訓練時、胴体下に反射物を付けていることからも明らかだろう。

全翼機はなにも未知の技術ではない。かつて米ノースロップがYB-35、YB-49を試作している。これらを受けてであろう。無人機が戦場で役立つと認識され始めた2000年代初頭から、インターネット等で存在が確認された無人機は無尾翼全翼機、あるいはそれに準ずるスタイルが散見された。偵察型や実験機も含めジェットエンジンを動力とするこれらは、X-45C(米ボーイング)やタラニス(英BAEシステムズ)が挙げられ、ロシアのS-70オホートニクが続き、現在も仏がUCASで参入しようとし中国も開発にピッチを上げている。ただし、最近は、恐らく2010年代の後半くらいからだろうか。無尾翼全翼機ではないUCAVも登場してきている。

尾翼がV字形で"復活"
これらUCAVの代表的な機種を挙げれば、米空軍のCCA(協調戦闘航空機:Collaborative Combat Aircraft)に指定されたゼネラル・アトミクスのYFQ-42AやアンドゥリルYFQ-44Aのほか、ボーイング・オーストラリアのMQ-28やクラトスのXQ-58Aであり、ほかに三菱重工業などが公表しているコンセプトモデルもあり、2025年9月に独の新興防衛企業ヘルシングが公表したエウロパも同じだ。韓国にもUAE(アラブ首長国連邦)にもある。

これらの多くは、空気取り入れ口の位置や主翼の平面形に有人機と異なる形を見せ、脚収納扉や胴体の断面形状などを見ればステルス性も一定程度は確保しているようだ。とはいえ、見ようによってはオーソドックスなスタイルにも思える。垂直尾翼を1枚しか持たないYFQ-44Aに至ってはコックピットを設ければ、1960~1970年代のテレビアニメに出てきそうな非常にシンプルに描いたジェット戦闘機を連想させなくもない。
YFQ-44Aを除くこれらUCAVの特徴は、多くが胴体と主翼の境がはっきり分かれた従来の航空機と同じ形状にV字形に開いた2枚の尾翼を持つことだ。UCAVはなぜ、わずか20年ほどの間に無尾翼全翼機やそれに準じたスタイルから、さほど変化のない姿へ"回帰"したのか。各国が軍用機として開発にいそしむ中、理由は性能に結び付く「秘密のベール」に包まれるだけに想像するしかないが、技術的な「退化」を許す定見が生まれたため、と想像できる。
動力、材料革命と同じではない?
航空機の技術革新で真っ先に思い浮かぶのは動力と材料だ。プロペラからジェットへ。材料では木材から金属、そして複合材が使われ、航空機は飛躍的に性能を高めた。無人機の隆盛も革新の一つとして航空史に刻まれるだろう。ただし、UCAVのスタイルでは"退化"が起こった。言い過ぎなら「そこまでしなくてもいいのではないか」という見極めを開発側が得たためだろう。無尾翼全翼機、あるいはそれに準じるスタイルが出始めた頃、UCAVは「攻撃機」として敵の防空網を如何に潜り抜けて攻撃を完遂するかが課されていた。それ故に高いステルス性を発揮できる "突起物"のないスタイルを身にまとった。
ただし、YFQ-42AやYFQ-44Aに見る昨今のUCAVの役目は「協調」であり、有人機をサポートし守る役目が与えられている。密接の度合いが高くなり、生存率を上げるのは有人機だ。ならば、高度なステルス機能は有人機に持たせ、UCAVは敵の目を自身へ向けさせるようにしなければならない。ステルス性は低すぎてもいけないが、高すぎても不都合が生じる。加えて、無尾翼全翼機は機体の制御が難しく、そもそも有人機に無尾翼全翼機は少ない。YB-35、YB-49など試作機や実験機はあるが、実戦配備に就いたのは米空軍のB-2爆撃機くらいだ。
多少のステルス性を犠牲にしても制御しやすくするなら、垂直尾翼を付けてもやぶさかでなくなってくる。ただし突起物=空気抵抗は増やしたくはない。そこで注目されたのが、水平と垂直各々尾翼の役目を担わせたV字翼だろう。V字尾翼自体も古くから機体のカテゴリーを問わずあり、知られたところではプロペラ式小型飛行機のビーチクラフト・ボナンザ(通称Vボナンザ)や仏空軍の練習機だったフーガCM.170マジステールがある。米空軍の主力戦闘機の座をF-22と争ったYF-23もV字尾翼だった。とはいえ、こちらも操縦の安定性確保に難があり広まりはしなかった。しかし、無人機なら安定性がそれほどでなくても乗り心地をとやかく言う機上の人はいない。こうして、昨今のUCAVのスタイルはV字尾翼が付き、スタイルは"回帰"した。

進化で見るべきはAI、中身で勝負?
ならば、UCAVは技術の進化上で見るべきものはないのか。この問いには即座に「ノー」と答えることができる。外見上のスタイルでは、既に2022年に初飛行したトルコのバイカル、バイラクタル クズルエルマや2024年6月のベルリン国際航空宇宙ショーでエアバスが披露したウィングマン・コンセプトは、平面形のシルエットだけなら最早有人戦闘機とほとんど変わらない。主翼前方に有人機も顔負けのカナード翼を備えている。これが他国他機種を上回る運動性を持たせようと言う表れなら、アグレッシブなその開発姿勢はさらなる進化を生む。エアバスのウィングマン・コンセプトモデルにいたっては垂直尾翼がない。いつかは「突起物」はなくしたい。今も虎視眈々と狙う設計者の意気込みが見えるようである。

そして、何よりも昨今のUCAVが技術注力する、そのトップに挙げられるのはAI(人工知能:Artificial Intelligence)だろう。特にCCAは自律した飛行と攻撃の判断が将来はより求められるだろう。これは有人機の操縦士や地上から管制がすべてを司ることができず、それだけにAIは欠かせない。独ヘルシングはスウェーデンのサーブと提携し、AIを搭載したグリペン戦闘機を飛ばして知見を蓄積している。UCAVに限らずAI開発の行方がその国の隆盛を握るだけに、どのようにAIの性能を高めて搭載するか、「外見より中身で勝負」が求められているといっても過言ではない。
UCAVが本格配備される前からスタイルの変遷が繰り広げられているのは、それだけ役割が増え続け、兵器として今後使われ続けるであろうことを示している。戦場は新しい技術の実験場と古くから言われてきたが、他の兵器と同様、無人機も平時に活発な実験が行われていることを示している。敵を凌駕するUCAVを各国が求めていく限り、暫くはUCAVのスタイルは変遷を続けていくだろう。