世界初の8K 360°全景ドローン「ANTIGRAVITY A1」がついに日本でも発売となり、12月19日に都内でローンチイベントが開催された。当日はメディア関係者のほか、映像クリエイターやSNSインフルエンサーの姿も多く見られ、ANTIGRAVITY A1が一部のドローンユーザーのためではなく、多くの一般ユーザーに向けた製品であることがよくわかる会場の雰囲気だった。
- Advertisement -
「ANTIGRAVITY(アンチグラビティ)」は、360°カメラを主力製品とするInsta360とそのサードパーティが共同で立ち上げたドローンブランドだ。ドローンによる"飛行体験"をゼロから再定義し、飛行すること自体を楽しむことができる製品となっている。
「誰もが自然に、空間を記録し、共有できる時代へ」をコンセプトに、一部のドローン愛好家に向けたものでなく、これまでドローンメーカーがアプローチしきれなかった広い一般ユーザーにもドローンの大空を飛行する魅力を楽しんでもらうことを目的にリリースされた。
![ドローンの飛行体験を再定義する360°全景撮影ドローンAntiGravity A1 ローンチイベントレポート[Reviews]Vol.98](https://drone.jp/wp-content/uploads/20251224_reviews98_YJej15wm.jpg)
ANTIGRAVITY A1 は機体の前方上部と前方下面にレンズが搭載され、飛行した際に360°すべての画角を撮影することができる。機体重量は249g(標準バッテリー搭載時)と、同じ1/1.28インチセンサーを搭載した360°カメラ「Insta360 X5」(重量200g)と比較しても49gしか変わらない。ドローンユーザーにわかりやすい比較イメージとしては、DJIのMiniシリーズと同じサイズ感・重量だ。
- Advertisement -
また、360°カメラのInsta360シリーズ同様、専用編集モバイルアプリやデスクトップアプリ、Adobe Premier用プラグインが揃っているため、撮影した360°映像は自分の思うがままの画角で編集や書き出しが可能となっている。
極端な話、これまで画角にこだわってドローンを操縦・撮影し、何度もやり直したりいろいろな画角で同じ場所を撮ったりしていたドローンの撮影シーンが、一回の飛行で(ひとつの映像ファイルから)さまざまなカットを書き出すことができるのがANTIGRAVITY A1の特長だ。カットは後から編集で決めることができるのでドローンの飛行を攻める必要もなく、安全に楽しく飛ばした後に求めたカットを作り出せばいい。
![ドローンの飛行体験を再定義する360°全景撮影ドローンAntiGravity A1 ローンチイベントレポート[Reviews]Vol.98](https://drone.jp/wp-content/uploads/20251224_reviews98_t2VBK1xa.jpg)
ANTIGRAVITY A1のドローン本体はとても興味深いデザインになっている。正面に搭載されている光学レンズは撮影用ではなく障害物検知センサー。障害物検知センサーに挟まれた中央の白いブロックはLEDランプとなっており、機体の位置を示したり、機体の状態を色で知らせたりできる。
![ドローンの飛行体験を再定義する360°全景撮影ドローンAntiGravity A1 ローンチイベントレポート[Reviews]Vol.98](https://drone.jp/wp-content/uploads/20251224_reviews98_Ps1HnLjK.jpg)
上下にレンズが搭載されたカメラユニットはゴムで支えられており、これまでの空撮用ドローンに必ずあったカメラ水平維持機構の「ジンバル」はない。360°全景撮影を行うドローンは揺れや傾きは編集でどうにでもなってしまうため、ジンバルの機能が必要ないというのもおもしろいところだ。カメラユニットを支えるゴムは微細な振動をカメラに伝えないための仕組みと推測される。
![ドローンの飛行体験を再定義する360°全景撮影ドローンAntiGravity A1 ローンチイベントレポート[Reviews]Vol.98](https://drone.jp/wp-content/uploads/20251224_reviews98_u3CTcFDz.jpg)
ANTGRAVITY A1の飛行は、専用ゴーグル「VISIONゴーグル」でドローンからの映像を確認しながらスティック型のコントローラー「グリップモーションコントローラー」で行う。VISIONゴーグルは近未来感のあるデザインでバッテリーは外部式となっており、ゴーグル本体の重量はわずか340gで装着した感じでは重さに対する負担はほとんどない。
- Advertisement -
ゴーグルを装着すると目の前に正方形の大きなスクリーン(200インチ相当)が現れ、近未来的なインターフェイスで飛行を楽しむことができる。ちなみに、ゴーグルの左目部分の外装はモニターになっており、操縦者が見えている映像をミラーリングすることができる。これまでのゴーグルは映像を外部出力しない限りは操縦者のみの世界だったが、VISIONゴーグルでは操縦者に付き添っている人(友人や家族)も大空の飛行をいっしょに楽しむようなシーンをつくりだすことができるようだ。
![ドローンの飛行体験を再定義する360°全景撮影ドローンAntiGravity A1 ローンチイベントレポート[Reviews]Vol.98](https://drone.jp/wp-content/uploads/20251224_reviews98_kNvmEM6W.jpg)
コントローラーはスティック型となっており、直感的に飛行を楽しむことができる。ドローンユーザーからするとDJI AVATA 2のモーションコントローラーと同じように見えるが操作方法は異なっている。
ANTIGRAVITY A1のグリップモーションコントローラーは、裏側にあるトリガーを引くと前進、手に持ったコントローラーを左右に水平に動かすとその方向へ機体が向かって行く(フリーモーションモードの場合)。ゴーグル画面には機体が向かう方向を示す"《 》"の表示が出るため、機体が向かっている方向もわかりやすいものとなっている。それ以外にも前進中にコントローラーをひねるとその方向に機体が旋回する「FPV」モードもあり、ユーザーが直感的な操縦方法を選ぶことができる。
![ドローンの飛行体験を再定義する360°全景撮影ドローンAntiGravity A1 ローンチイベントレポート[Reviews]Vol.98](https://drone.jp/wp-content/uploads/20251224_reviews98_EXQXPd8H.jpg)
ANTIGRAVITY A1の操縦で注意点は、ドローンでこれまで普通にできた後進や真横移動ができないことだ(機体をその場で回転させる動きは上面中央にあるダイヤルで行う)。これは後ろや横は飛行中見づらいことや安全性を考慮したということもあるが、360°全景撮影と後編集ができることを考えると後進したり真横に飛行したりするメリットもなさそうだ。ドローン飛行経験が長いユーザーからすると違和感を覚えそうだが、飛行(移動)イメージとしては固定翼の飛行機の感覚に近いのですぐに慣れるだろう。どうしてもスティック型コントローラーが気に入らないユーザーは、現在通常のスティック型コントローラーも開発中とのことなので、そちらを待って購入してもよいかもしれない。
![ドローンの飛行体験を再定義する360°全景撮影ドローンAntiGravity A1 ローンチイベントレポート[Reviews]Vol.98](https://drone.jp/wp-content/uploads/20251224_reviews98_yc9Y7l1X.jpg)
![ドローンの飛行体験を再定義する360°全景撮影ドローンAntiGravity A1 ローンチイベントレポート[Reviews]Vol.98](https://drone.jp/wp-content/uploads/20251224_reviews98_U18wG7JC.jpg)
また、ローンチイベントではANTIGRAVITY A1 を実際に飛行させたデモンストレーションや編集アプリによる編集方法も紹介された。ANTIGRAVITY A1の飛行はとても安定しており、プロペラ音がとても静かで白い機体デザインも威圧感がない。サイズも小さいので人物が主役の映像撮影にも使えそうだ。デモンストレーションで飛行した機体は別売りのプロペラガードも装着しており、これならば被写体に近づいた撮影も楽しく安全にできるだろう。
![ドローンの飛行体験を再定義する360°全景撮影ドローンAntiGravity A1 ローンチイベントレポート[Reviews]Vol.98](https://drone.jp/wp-content/uploads/20251224_reviews98_I95LSDfF.jpg)
"ANTIGRAVITY"という名称には「これまでの常識や枠を限定せず、新しい体験を生み出したい」という思いが込められているという。そしてANTIGRAVITY A1は、難しかったハイクオリティなドローン空撮の技術的ハードルを劇的に下げる可能性を秘めた機体パッケージ(編集アプリやAI編集も含めて)として完成している。
実際に会場に訪れた人からは「ANTIGRAVITY A1ならば自分でも空撮ができそう(ドローン未経験の方)」や「飛行時間も長いので360°撮影案件で手軽にじっくりと撮影ができそう(FPVレーサーの方)」、「動いている被写体でも画角を外さずにいろいろなアングルや動きの撮影ができそう(空撮愛好家の方)」といったさまざまな層からいろいろな声を聞くことができた。
![ドローンの飛行体験を再定義する360°全景撮影ドローンAntiGravity A1 ローンチイベントレポート[Reviews]Vol.98](https://drone.jp/wp-content/uploads/20251224_reviews98_xPMuu7vM.jpg)
一方、249gという機体重量は多くの海外におけるルールでは申請等が必要ない重量となっているが、日本においては「無人航空機」という飛行ルールがさまざま存在する位置づけとなる。特にゴーグルを用いて飛行させるのは目視外飛行にあたり、国土交通省に飛行許可承認申請も必要となるため、これまでドローンに親しんでこなかった層にとっては少しハードルが高いのも事実だ。
ANTIGRAVITY A1がこれまでの空撮ドローンの存在や体験を再定義していけるのか、今後の展開がとても楽しみなプロダクトだ。