DJIがまたユニークな小型のFPVドローンを発表した。
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Vol.82 DJI NEO登場!軽量コンパクト+本格撮影+いろいろな方法で操縦可能な”本気で遊べる”ドローン[Reviews]
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DJIの状況をウォッチすることから少し離れていたので、現在の状況をまとめてみたい。
DJIの現在のドローンラインナップ
DJIのドローンはカメラドローンと産業用で分かれている。
カメラドローン
[DJI Mavicシリーズ]
- DJI Mavic 3 Pro
4/3型CMOS Hasselbladカメラ、デュアル望遠カメラ、48MP、最大飛行時間43分、958g
277,200円~ - DJI Mavic 3 Classic
4/3型CMOS Hasselbladカメラ、高解像5.1K動画、20MP、最大飛行時間46分、895g
151,800円~
[DJI Airシリーズ]
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- DJI Air 3
中望遠&広角のメインカメラ、4K/60fps HDR動画、48MP、最大飛行時間46分、720g
129,800円~
[DJI Miniシリーズ]
- DJI Mini 4 Pro
1/1.3インチ CMOS、4K/60fps HDR 縦向き撮影、48MP、最大飛行時間45分、249g
128,700円~ - DJI Mini 2 SE
1/2.3インチ CMOS、2.7K/30fps、12MP、最大飛行時間31分、246g
44,000円~
[DJI Avataシリーズ]
- DJI Avata 2
1/1.3インチCMOS、モーションコントローラーで直感操作、超広角4K、12MP、最大飛行時間23分、377g
174,900円~
[DJI Neoシリーズ]
- DJI Neo
1/2インチCMOS、4K/30fps、12MP、 AIトラッキング、最大飛行時間18分、135g
33,000円~
[DJI Inspireシリーズ]
- DJI Inspire3
フルサイズ8K ProRes RAW/CDNG、1/1.8インチ 超広角ナイトビジョンFPVカメラ、 デュアル機体フレーム形態:チルトブースト & 360° パン、RTKによるcmレベルの測位、最大飛行時間28分、約3995g
1,769,900円~
産業用
[Matriceシリーズ]
- Matrice 350 RTK
最大飛行時間55分、保護等級IP55、最大積載量2.7 kg、最大風圧抵抗12 m/s
1,163,700円~ - Matrice 30
最大飛行時間41分、保護等級IP55、最大積載量2.8 kg、最大風圧抵抗12 m/s
975,800円~
[DJI Mavic Enterpriseシリーズ]
- DJI Mavic 3E
広角カメラ:4/3型CMOS、20 MP、メカニカルシャッター
望遠カメラ:焦点距離(35 mm判換算)162 mm、12 MP、56倍ハイブリッドズーム
最大飛行時間45分、915g
672,100円~ - DJI Mavic 3T
広角カメラ:焦点距離(35 mm判換算)24 mm、48 MP
望遠カメラ:焦点距離(35 mm判換算)162 mm、12 MP、56倍ハイブリッドズーム、
サーマルカメラ :焦点距離(35 mm判換算)40 mm、解像度 640 × 512
最大飛行時間45分、920g
779,900円~ - DJI Mavic 3M
広角カメラ:4/3型CMOS、20 MP、メカニカルシャッター
マルチスペクトル :1/2.8インチCMOS、有効画素数:5 MP、G、R、RE、NIR
最大飛行時間43分、951g
682,000円~
[DJI AGRASシリーズ]
- DJI AGRAS T50
40kgの噴霧ペイロードまたは50kgの散布ペイロード積載、最大離陸重量103kg
1,698,000円~
[DJI FlyCartシリーズ]
- DJI FlyCart 30
最大積載量 30kg、飛行距離(無積載時) 28km、飛行距離(最大積載時)16km、最大速度 20m/s
動作環境温度-20℃~45℃、保護等級IP55、最大風圧抵抗12m/s
最大離陸重量95kg、最大飛行時間18分(重量負荷30kg)
DJI FlyCart 30もラインナップされたことで、ドローン(マルチコプター)としては世界唯一の壮観のフルラインナップとなっている。
また、それはラインナップだけでなく、スペックや機能、価格等すべての要素でその他のすべての機体メーカーに比べて圧倒している。
(DJI FlyCart 30に関して、30-40kgの重量物を運ぶ機体としては、非常に安定性もあり、隅々まで考えられているものとなっているが、30kgの最大飛行時間が18分というのは日本で考えられている物流という範疇よりも、現在世界で動き出している工事現場などでの資材用簡易エレベーターといった向きが強いように思う。また、恐らくDJIとしてもその市場性の方が大きいと睨んでいると推測される。確かに工事現場にDJI FlyCart 30があったら相当に便利であろう。日本でも今後流行るのではないかと思う。)
DJIのドローン周辺のラインナップ
上に見たように、DJIはドローンのラインナップも充実しているが、それと同等に充実しているのが、ドローン周辺のラインナップである。
搭載ツール
- Zenmuse H30
ズームカメラ(40MP)最大34倍の光学ズーム、最大400倍のデジタルズーム。最大3000 mのレーザー距離測定範囲。
ズームカメラと広角カメラは夜間撮影モードに対応。ズームカメラは赤外線ライトと近赤外線照明に対応。
484,286円~ - Zenmuse H20
12MP 広角カメラ、20MP ズームカメラ、放射分析サーマルカメラ、レーザー距離計
425,700円~ - Zenmuse X5S
M4/3 F1.7-F16カメラ、5.2K動画、CinemaDNG、Apple ProResフォーマットに対応。
154,000円~ - Zenmuse L2
LiDAR(測距精度 2cm @ 150m)、RGBカメラ(4/3型CMOS、20MP)、IMU
DJI Terra用
[DJI Dockシリーズ]
- DJI Dock 2
軽量で簡単設置、保護等級 IP55、有効動作半径 最大10km、統合型環境モニタリングシステム、クラウドベース モデリング、FlyToタスク、プライベートサーバでの運用、サードパーティ製ペイロードに対応
[ソフトウェア]
- FlightHub 2
ドローンオペレーションをクラウドベースで管理するオールインワン型プラットフォーム。リアルタイムで包括的に状況把握(ドローンミッション計画、フリート管理や作成データの運用など)データの安全なクラウド環境での保存。DJI Dockとの連携。 - DJI Terra
写真測量をコア技術とする3Dモデル再構築ソフトウェア。
可視光の2D/3Dモデルの正確で効率的な再構築、およびDJI LiDARによるデータ処理をサポート。 - DJI Modify
インテリジェント3Dモデル編集ソフトウェア。
DJI Terraと組み合わせ、航空測量、モデル構築、モデル編集、モデル共有といった包括的なソリューションを形成。 - DJI Delivery Hub
ワンストップ型ドローン物流管理プラットフォーム。
効率的なタスク計画、包括的なオペレーション状態モニタリング、チームリソースの一元管理、データの収集・分析など。
そして、これも他の機体メーカーにはないソリューションはSDK、APIの提供だ。これにより、DJIのプラットフォームを使って開発者はソリューションの開発が可能になっている。
現在、重要なSDK、APIは以下となっている。
- Mobile SDK(アプリケーションの開発)
Androidが中心
対応製品:Matrice 350 RTK、DJI Mini 3 Pro、DJI Mini 3、DJI Mavic 3M、DJI Mavic 3 Enterprise シリーズ、Matrice 30 シリーズ、Matrice 300 RTK - Payload SDK(搭載ペイロードのコントロール)
対応製品:Matrice 3D/3TD、DJI FlyCart 30、Matrice 350 RTK、Mavic 3E/3T、Matrice 30/30T、Matrice 300 RTK - Clould API(クラウド連携製品の開発)
対応製品:DJI Pilot 2 のクラウド サーバーへのアクセス: Matrice 350 RTK、Matrice 300 RTK、Matrice 30 シリーズ、DJI Mavic 3 Enterprise シリーズ、DJI Mavic 3M
DJI Dock のクラウド サーバーへのアクセス: Matrice 30 シリーズ、Matrice 3D/3TD - Edge SDK(DJI Dockシリーズとの連携)
対応製品:DJI Dock、DJI Dock2
https://developer.dji.com/
※価格は参考価格となる
DJIソリューションを使っての日本での運用の注意ポイント
DJIが米国企業で(もっといえば、日本企業で)、250g未満のドローンが航空法の対象外で(もっといえば1kg未満)、ついでに、5.8GHz帯が使い放題であったなら、このDJIの完璧なラインナップの中で、空撮は元より、点検であれ、監視であれ、測量であれ、工事進捗であれ、もしかしたら、物流であれ、ドローンの本格運用をDJIのソリューションで計画を立てていくのが最善手であるし、唯一であるかもしれない。(固定翼やVTOLが優位な広域測量や広域監視、また、室内点検や計測などのニーズに関しては、DJIよりもいいソリューションはあるだろうけれど。)
実際に、現在、実運用されている点検、測量、工事進捗などは、調査によると、ほとんどDJIのソリューションであるのが現実だ。
しかし、日本の航空法や電波法はともあれ、残念ながら、DJIは中国企業であり、また、様々な現在の地政学的なポイントにおいて、米中が著しく対立しており、その中で日本は圧倒的に米国寄りの状況にある中で、様々なトラップがそこに存在している。
その多くは、前回と前々回のコラムで書いた通りだ。
DJIを本格運用で使う際の1番の注意ポイントは、チャイナリスクにある。このチャイナリスクに関して、その内容がUpdateされた。
9月1日から新たに中国当局が輸出規制の強化・調整したものは以下になる。
ドローン及びドローン関連部品の輸出規制の強化・調整
- 中国商務部と関係部門は、2024年7月31日付で軍事利用の可能性があるドローンとドローン部品の輸出規制の強化(調整)を発表した(公告31号)。昨年の同日付での規制を拡大するもの。2024年9月1日施行。商務部はドローンの輸出規制を「適切に」拡大することを決定したと表明した。
- 昨年2023年7月の規制は、次のようなもので、2つの公告(27号、28号)に基づいて9月1日から実施されていた(新華網日本語2023.8.1付)。
- 一部のドローン用エンジンや重要ペイロード、無線通信設備、民間用反ドローンシステムなどの輸出を規制する。
- 一部の消費者向けドローンについても2年間の臨時輸出規制を実施する。
- 規制リストに含まれないその他のすべての民間用ドローンの軍事目的での輸出を禁止する。
- 今回これら2つの公告は廃止され、新たな公告31号に引き継がれる形となる。
昨年の規制との比較
- 昨年規制との比較(1)―ドローン本体はリスト規制からキャッチオール規制対象に(禁止)
- 上記の昨年のドローン本体の臨時的規制は、閾値が「操縦者の目視外を超えて飛行を制御でき、最大耐久時間は30分以上、最大離陸重量7kg超、空虚重量が4kg超」というものであり、実質的には一般的な民間ドローンのレベルではなく、事業用のかなり大きいドローンが対象だった(公告28号に基づく)。
- これは2年間の臨時規制だったが、公告28号の廃止に伴い規制は撤廃されたことになる。昨2023年末の「両用品リスト」改正では、「十二.臨時管理無人航空機」というカテゴリーが新設されて対象となっていたが、今回の公告廃止に伴い。今年末の「両用品リスト」からは外れる可能性がある。
- なお、リスト規制対象以外のドローンは、キャッチオール規制の要件に該当する場合は、輸出禁止とされた。
- 昨年規制との比較(2)―ドローン関連品目対象の一部調整(一部追加等)
- 昨年の公告27号掲載のドローン関連品目(エンジン、搭載赤外線カメラ、レーザー・レーダー装置、無線通信装置)は、昨年末の「両用品リスト」改正において、全て「九.一部両用品及び技術」カテゴリーに織り込まれた。
- 今回の公告で新たに「目標指示を行う慣性計測装置」が追加されたが、これも本年末のリスト改正にて織り込まれると予想される。
- また、昨年、赤外線イメージング設備等一部品目について、該当要件が、「いずれかの」(OR条件)から「すべての」(AND条件)に変更された(緩和)。
- 昨年規制との比較(3)―キャッチオール規制条項の基本的継続
- 昨年の規制では、臨時管理のリスト規制対象外のすべてのドローン本体は、大量破壊兵器の拡散、テロ活動あるいは軍事目的に使用されることが明確な場合は、輸出禁止とされていた(公告28号)。
- 今年の規制では、公告28号のうちキャッチオール規制部分は引き継いだ上で、輸出管理リスト又は臨時管理リスト対象以外のすべてのドローン本体が禁止対象とされている。したがって、公告28号の廃止に伴って、その対象だったドローン本体は臨時管理のリスト規制からは外れることになるが、上記キャッチオール規制の禁止対象にはなる。
- なお、昨年及び今年の公告によるキャッチオール規制は、輸出管理法第12条後段でのキャッチオール規制より強化されている。同法での要件は、次の3つのいずれかとなっている。
(一)国の安全と利益に危害を及ぼす
(二)大量破壊兵器及びその運搬手段の設計・開発・生産あるいは使用に用いられる
(三)テロリズムの目的
- 昨年と今回の公告では、次の点で規制強化となっている。
- (1)用途要件に、輸出管理法にはない「軍事目的」が加えられていること。
- (2)用途要件に該当した場合に「禁止」となっていること(輸出管理法では許可対象となるに留まる)。
上記、解説によると、そのリスクは以下になる。
- 「操縦者の目視外を超えて飛行を制御でき、最大耐久時間は30分以上、最大離陸重量7kg超、空虚重量が4kg超」のドローンはリスト規制からキャッチオール規制対象になることで、今年いっぱいで輸出禁止になる恐れがある。(今までは「両用品リスト」に含まれる形で輸出が許可されていた)
→将来、輸出禁止になる恐れ。 - ドローン関連品目(エンジン、搭載赤外線カメラ、レーザー・レーダー装置、無線通信装置)が輸出規制対象に。
→この影響は既に出ており、単体での赤外線カメラやレーザー・レーダー関連の製品に関して、中国メーカーからは出荷できないとの通達が来ているケースが出てきた(今のところ、DJIの赤外線カメラ搭載のドローンに関しては、出荷できないといった通達が来たとは聞いていないが今後どうなっていくかは不透明だ)。 - 今回の公告で新たに「目標指示を行う慣性計測装置」が追加されたが、これも本年末のリスト改正にて織り込まれると予想される。
→これはフライトコントローラーを意味するものと思われるが、中国製のフライトコントローラーに関しては来年より輸出規制の対象になる恐れがある。
こういったチャイナリスクに関しては、今後も厳しくなることはあっても、緩和される可能性は残念ながら薄いと思われ、ドローンの活用ユーザーであれ、ドローンのサービス事業者であれ、こういったリスクを念頭に踏まえながら、今後のドローンの運用・活用計画を立てていく必要がある。
けれど、あまりにDJIのソリューションのパフォーマンスは高く、バリエーションも豊富で、日本はそこに対しての対応に完全に後手を踏んでおり、また、未だ本気の対策(DJI対抗のドローン施策)をしていない。
「嗚呼、DJI」である。