UntroD Capital Japan株式会社が運営するリアルテックファンド*は、超電導技術スタートアップである日本超電導応用開発株式会社(以下:JSA)へ投資を実施したことを発表した。JSAは今回の調達資金をもとに、各種応用機器向け超電導モジュールコイルの量産化に向けた研究開発及び製造体制の強化を進めていくという。
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企業概要
電気抵抗ゼロを実現する「超電導」は、送電ロスの削減や超高効率なモーターなどを通じて、世界のエネルギー問題やカーボンニュートラル社会の実現に不可欠な技術として期待されている。しかし、従来の超電導材料の線材はセラミックのように硬く脆いため加工が難しいうえに 、交流電流を流すと大きな電力損失(交流損失)が発生する課題があった 。また、高価で希少な液体ヘリウムによる極低温冷却が必要なことも、社会実装を阻む大きな壁となっていた 。
これらの課題に対しJSAは、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)との共同開発により、髪の毛よりも細い世界最細級(直径15μm)の超電導線材の開発に成功した 。従来の常識を覆す圧倒的な柔軟性を実現したことで熱処理後にコイル状に巻く「React & Wind」という革新的な製造プロセスが可能となり 、製造コストの大幅な削減と品質向上が期待できる。さらに、線材を細くすることで交流損失を原理的に低減させ、これまで超電導技術の導入が困難だった分野への応用を可能とする。
JSAの技術は、MRI(磁気共鳴画像装置)の低コスト化・小型化 、次世代モビリティ(ドローン・電動航空機)用モーターの飛躍的な軽量・高出力化、核融合炉や量子コンピュータの性能向上など、巨大産業のゲームチェンジに繋がるものとして、国内外のトップ研究機関や企業から大きな注目を集めている。
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この革新的な超電導技術を有するJSAへの投資支援を通じて、同社は世界のサステナビリティに貢献していくという。
資金調達の目的と使途
JSAは今回調達した資金を活用し、極細超電導線材そのものの提供に留まらず、顧客が容易に製品へ組み込める「モジュールコイル」の開発と、その量産化に向けた製造・評価体制の構築を加速させる。具体的には、2027年末までにMRI用マグネット、ドローン向け小型モーター、量子コンピュータ用ケーブルなどのプロトタイプを完成させることを目指す 。またこれらの開発を支えるための研究開発・製造技術人材の採用も強化していく。
UntroD Capital Japan株式会社 グロースマネージャー 木下太郎氏コメント
超電導技術が秘める計り知れないポテンシャルは、長年「脆くて高価な材料」という物理的な制約によって、その社会実装が限定されてきました。JSA社の極細線材技術は、この根本課題を我が国が誇る「微細加工」というアプローチで解決する、まさに破壊的イノベーションです。
町工場の技術を宇宙開発に応用し事業を急成長させてきた大坪CEOの経営手腕 、大手メーカーにてMRI開発の第一人者である中山CTOの深い技術知見、そして世界レベルの極細線製造技術を持つ山本執行役員を始めとするチームが揃った今、超電導は夢の技術から「身近に使える技術」へと変わります。核融合、次世代モビリティ、量子コンピュータといった未来を創る巨大市場の中核を担うJSAの挑戦を、全力で支援してまいります。
UntroD Capital Japan株式会社 グロースマネージャー 室賀文治氏コメント
60年前から開発されてきた超電導は材料加工の難しさから、現状はMRIなど限られた装置にしか実装がされていませんでしたが、JSAの超極細加工により様々な産業分野に応用が進むことになると期待されます。
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特にモーターへの実装が進むことで、モビリティ分野に劇的な進化をもたらす夢の技術として世界のエネルギー問題を大きく解決できると考えており、リアルテックファンドでは全力でJSAの成長と社会実装を支援してまいります。
*正式名称:「リアルテックファンド4号投資事業有限責任組合)