また、2020年よりリアクションホイールを共同開発してきたASPINAシナノケンシ株式会社と新たな覚書を締結し、AL Labサービス適用第一号として当該ホイールを2026年中に打ち上げ、軌道上実証を実施することに合意した。
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高まる軌道上実証へのニーズに応えるサービス
同社は2022年にAxelLiner事業を開始し、本格的なサービス開始に向け汎用小型衛星バスの開発、量産に向けた宇宙機製造アライアンスの組成、顧客体験革新のためのソフトウェアであるAxelLiner Terminalの構築を進めてきた。
AxelLiner事業に関する発表以来、「顧客の独自ミッションを短期間のうちに実現する小型衛星ワンストップサービス」への期待が多く寄せられ、本事業のニーズの高さを改めて認識しているという。
また、さまざまな宇宙業界関係者とコミュニケーションをする中で、本来はAxelLiner事業の顧客層として想定していなかった、宇宙用コンポーネントを開発している企業、ミッション機器を開発している企業からも本事業への強い関心が寄せられた。これをきっかけに、軌道上実証に特化した新しいサービスの検討を開始した。
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日本では、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が軌道上実証ニーズに応えるための「革新的衛星技術実証プログラム」を2016年から実施しており、定期的に軌道上実証機会を提供し、一定の成果を上げている。
同社は同プログラムの小型衛星1号機(RAPIS-1、2019年打ち上げ)の開発を担当した。また、同社自身も小型衛星用膜面展開型デオービット機構(D-SAIL)を共同開発し、同4号機に搭載を予定している。
現状の課題としては、こうした軌道上実証ミッションは実施頻度が低く、また、採択から打ち上げまでに数年かかってしまうことから、タイムリーな実証が難しいことが挙げられる。
そのような中、10年間で1兆円規模の支援を目指し、本年からスタートする宇宙戦略基金においても、経済産業省計上分の実施テーマに「衛星サプライチェーン構築のための衛星部品・コンポーネントの開発・実証」が含まれており、早期の軌道上実証サービスに対する需要は今後ますます増大していくと考えられている。
軌道上実証ミッションの実施頻度の低さや、実施決定から打ち上げまでにかかる時間の長さという課題をクリアするため、同社はAxelLiner事業で実現する短期開発及び量産可能な特徴を活かし、軌道上実証の特殊なニーズに合わせたサービスを開発した。
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本サービスは、宇宙用コンポーネント、ミッション機器の実証のみならず、企業や商品のPR・エンターテインメント分野等での活用も視野に入れている。なお、従来のコンセプトに基づくサービスは改めてAxelLiner Professional (AL Pro)と定義し、引き続き本格サービス開始に向けて準備を進めていくとしている。
AxelLiner Laboratory(AL Lab)の特徴
- 1. 同社が開発する100kg級小型衛星の顧客機器搭載スペースを分割し、実証機器に割り当て
- 2. AxelLiner Terminalと衛星バスの機能を模擬するエミュレータを提供し、基本的に顧客のみで実証機器の各種試験(含 同社衛星バスとの接続テスト)を実施可能
- 3. 同社の衛星自動運用システムを応用し、実証計画設定や結果取得を容易にする機能をAxelLiner Terminal上で提供予定
- 4. 軌道上実証期間は1年間を予定
- 5. 以下のオプションサービス提供を計画中
- ・TRL*認証:同社の衛星オペレータとしての知見を生かし、実証コンポーネントごとにTRL7またはTRL9の軌道上テスト項目を用意。クリアした場合、実際の動作結果とともに証明書を発行
- ・TRL9の証明書を取得したコンポーネントについては、将来の同社小型衛星での活用を検討
- ・実証機器の動画・静止画撮影や温度計測など
- ・打ち上げ機会の増加に合わせ、開発遅れ等が発生した際に打ち上げ時期を変更
*TRL:Technology Readiness Level(技術成熟度)。特定の技術の成熟度の評価を行い、異なった タイプの技術の成熟度の比較をすることができるシステマティックな定量尺度のこと。
TRLの基準決定のイメージ
- ・TRL7:開発フェーズの製品(プロトタイプ)に対して、軌道上での機器実証を行い、累積稼働時間、経時変化の有無をふまえTRL7の認証を実施
- ・TRL9:実際の製品に対して、実際の運用条件に近い環境化で機器実証を行い、累積稼働時間、経時変化をふまえTRL9の認証を実施
AL Labサービスの想定顧客
- 宇宙用コンポーネントを開発しており、早期に軌道上実証して販売に繋げたい企業
- 将来的に自社事業向けに活用を想定したミッション機器のプロトタイプを開発しており、次のフェーズに進む前に軌道上での動作試験を行いたい企業
- 新商品や企業のPRとして、宇宙に何らかの物を持っていきたい企業
- 宇宙空間の特徴を生かしたエンターテインメント関連サービスを提供したい企業