小笠原父島西方130kmにある「西之島」の隣に「西之島新島」が火山として2013年に噴火を始め、2015年にはもともとあった「西之島」を飲み込みながら、成長していった。噴火が落ち着いたため、上陸調査は2019年に実施されたが、2020年にさらに大噴火。島を拡大してきた。それ以来、実施されていなかった上陸調査を今年3年ぶりに2025年の7月に実施した。

環境省事業としては2019年から2024年までは限定的な上陸条件のため、ドローンを使った、サンプリングや採水などのリモート調査方法を試行してきたが、今年は直接上陸しての調査となった。
上陸にあたって、従来のドローンでの遠隔調査では困難であった直接的な生物、昆虫、植物や地質学のサンプル調査はもちろんだが、今回は無人探査機や衛星通信装置等を試行的に上陸して設置することとなった。
通常、無人島の上陸調査は、荒れる海から岩礁や海岸などに上陸、荷揚げをするのだが、波の状況によってはかなりの危険が伴う。そして、今回は、無人探査機や衛星通信装置等といった海からの荷揚げに向いていない資機材が大半を占める。
そこで、毎年西之島のドローン運用を任されている株式会社JDRONEが、昨年度導入したFlycart30での空輸を提案。揺れる船舶からの離発着しての物資輸送は未経験ながらも、それ以前の船舶からのドローン運用経験から実行可能と判断して船出した。
観測予定期間の後半に台風9号が近づく影響で、通常の5日ほどの観測期間が2日程度に短縮される予報の中、波の強さと風の影響を考慮しながら、観測隊は上陸調査、資機材の設置を決断。また、波が高いために海からの荷揚げは不可能という判断で、Flycartによる機材の空輸が実施された。
西之島での上陸調査は、生物や種子などを人間が持ち込まないために、新品の服、靴、ヘルメットや観測道具を持ち込むのだが、それらの人間用のギアを上陸地点に上陸するタイミングに合わせて空輸。さらに、前述の衛星通信装置、カメラ、パイプなどの機材を船から600mほど離れた島の台地の上に空輸。また、上陸調査時の物資や回収したサンプルを島から船に戻す帰り便など、10~30kg程度のパッケージにして、フライト数8フライト、トータル40往復、のべ輸送量500kg程度の空輸を行い、波がある中、海上輸送が厳しい上陸調査に貢献した。

担当したJDRONEの野口氏は、西之島訪問は15回以上の西之島エキスパート。そんな野口氏にとっても、チャレンジングな内容であったらしい。
野口氏は次のようにコメントしている。
野口氏:まず、FLYCART30が離発着できる物理的なスペースのある船舶のスペースが必須でした。それにプラスして、輸送の効率化から考えて、吊り下げでの輸送となると、その吊り荷の分、さらに立体的なスペースが必要です。今回チャーターした船が、それが可能になる大きさだったので、運用することができました。

一般的に船舶からのドローンの離発着は、操縦の精度、コンパスエラーへの対応、長距離目視外での電波的知識など、ハードルが低いとは言えない。さらに今回は、大型の物資輸送ドローンを離発着させながら、多量の物資の吊り下げ運搬対応である。そのあたりの難易度についてはこう語った。
野口氏:最近のDJI製ドローンの多くは、GPSアンテナを複数搭載して、その位置の違いから機体の機首方位を割り出していて、磁気コンパスをあまり使っていません。磁気的に難しい場所からの離発着は船に限らず、安定感のある運用が可能になっています。
フライトあたりの輸送効率を上げるために、今回はウインチを使っていません。ウインチのフック部分から延長テザーを2本足して、10mでの吊り下げのまま、船からのフック、島上での荷物のアンフックを行いました。安定した電波伝送があるので、島上の作業員のハンドサインなどもよく見えて、作業がしやすかったです。
台風の遠い影響で、波が1.5mほど、風速が7~8mある中でも、安定したフライト、離発着ができました。信頼感のある、慣れているDJIのドローンなので、コンディションの悪い状態でもフライトに不安になることはありませんでした。大きいドローンで、機体の大きさに比較すると小さい着陸台に着陸させるのはそれなりに操縦の精度が必要ですが、特に問題なく運用することができました。
DJI FLYCART30は今後もさまざまな環境、使用方法で、さまざまな物資を運び、今までの作業効率や作業方法の常識を破ってゆく存在になってゆくことだろう。

「実証実験の様子は下記Youtubeにアップされている。
今回使用した DJI FlyCart 30 は、環境省による西之島総合学術調査に活用された。調査の詳細については、こちらの環境省公式発表を参照されたし。