先日、筆者が経営するドローン・ジャパンは、パナソニック システムデザインおよびGMOグローバルサイン・HDとともに、ドローンの安定的・安全性の高い運用管理を行うために、機体ログを収集し、機体の状況をより詳細に把握することを可能にするクラウドサービスであるDOP SUITEのリリースを行った。
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GMOグローバルサイン・HDら3社、ドローンの状態を可視化する機体ログ活用クラウドサービス「DOP SUITE」リリース
DOP SUITEの個別の説明に入る前に、ドローンシステム全体での立ち位置やその狙いを見ていきたい。
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ドローンシステムのソフトウェア
ドローンシステムのソフトウェアは上記の図のように、大きく分けると、そのソフトウェアの実行場所は、ドローン本体、地上側、クラウドの3つに分かれている。
ドローン本体
FC(Flight Controller):基本的な機体制御
FCに載っている機体制御を実行するソフトウェアはFlight Codeと呼ばれるもので、これがDJIのようにプロプライエタリ(独自)のものとArdupilotやPX4のようにオープンのものに大別される。
詳しくは以下を参照。
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CC(Companion Computer):高度な機体制御やペイロード管理、通信制御など
FCと有線にて接続されたシングルボードコンピューター(ラズベリーパイやJetson NANO、DOP HUBなど)上でソフトウェアが実行される。
ドローンの機体と連携する場合には、DJIではOnboard SDKやCloud APIが使われ、ArdupilotではDroneKit-Python、pymavlink, MAVProxyなどが使われる。
室内空間(非GPS空間)の機体制御などの制御は主にこのCC上で実行される。
そのほか、ペイロード管理や制御(カメラや搬送物などの管理や制御)や通信制御などのソフトウェアが実行される。
地上側とクラウド
アプリケーションの開発や提供において、地上側かクラウド側かということは、そのデバイスや環境でのインターネット接続性がどうかといった点や、また、共有性、CPUリソースなどが考慮される。
アプリケーションソフトウェアにとって、重要なのは、どういった目的で、いつそのアプリケーションを使うのかというといった観点である。
2021年にこのコラムで書いた内容は、ほぼ現在も変わっていない。
再掲する形で説明したい。
まずは、一般的なアプリケーションのシチュエーションだが、内容として機体制御と機体管理、情報処理の3つに分かれる。そして、その各内容をどこで(現場か会社内か)どんなデバイスで処理をするのか(タブレット・スマートフォン、PC)という目線が重要だ。
そして、一般的なドローンソリューションの流れとなるが、飛行前・飛行直前・飛行中・飛行後での、機体制御・機体管理・情報処理で見ていく必要がある。
「面データ取得」の場合であるが、DJIの機体の場合、機体制御はDJI GO 4で機体設定など、機体管理はDJI GS Proで自動航行データの作成など、その後の情報処理では、DJI Terra、DroneDeploy、Pix4Dmapper、Meta Shapeといったアプリケーションでオルソ画像作成や画像解析を行っていく。情報処理と連動する形で自動航行データ作成と機能連動している場合も多い。
Parrot社の機体の場合、機体制御および機体管理は、Pix4Dcaptureで行い、情報処理のPix4Dmapperに連携していくやり方だ。その他は、Mission PlannerのようなGround Control Station(GCS)を使って、機体制御や機体管理を行い、情報処理のアプリケーションにデータをアップロードしていくという流れになる。
現在では、DJI Go4やDJI GS Proは産業用に関して、DJI Pilot2に集約されてきているが流れは大きくは変わらない。
実運用局面において、安全性や安定性を高めるために、この飛行前、飛行直前、飛行中、飛行後といった各シチュエーションでどんな確認や作業を行い、確実にその目的を実行していくことが、より重要になっている。
そういった点を考えると、ドローンの飛行現場においては、人口が少ない地域の利用が多く、まだまだそういった地域でのインターネットへの接続環境は不安定であり、ドローンとの2.4Gを中心として無線や、何らかのソフトウェア処理が必要な場合にはPCやタブレット内でのローカル処理が中心になるのが現実的だ。クラウドソリューションに関しては、会社などの事業所内での実行という形になるだろう。(この辺はまだ一般のスマートフォンアプリでの処理や実行とは距離感がある)
NTTドコモのdocomo skyセルラードローンやKDDIのスマートドローンソリューションなどや各種UTMもなかなか立ち上がっていかないのも、このクラウドへの接続性の難しさといった部分があるだろう。この辺は再度ローカルの処理とクラウドの処理の連携をどうとっていくかという目線で再構築していく必要があるだろう。
今回のDOP SUITEは、クラウドソリューションであるが、これまで機体の安定的な運用という点で相応しいソリューションが少なかった分野を、機体ログを活用した管理ソリューションとなっており、その活用の中心は、飛行後に、基本的には会社などの事業所内で行う作業となっている。
DOP SUITEの狙い
ドローンは広義の意味で自律移動ロボットということであり、そこでの実運用における大きな課題の一つは運用安定性の責任の問題である。
これまでの操縦するヴィークルという観点では基本的には操縦者・運転者が主責任者であった。そのため、安全性の確保という点で、操縦免許や操縦資格といったものが重要であった。(また、人が各航行局面において、ルール順守[例えば、信号や標識など]を行う必要があり、そういったルールの理解も免許や資格には含まれている)
自律移動ロボットの場合は、以下の3つのブロックに責任分散する形になっている。
- 機体メーカー:自律制御のエラーなど
- 機体所有者(リースやレンタルなど):整備不良、経年変化など
- 機体運用者:実運行のミスやエラー(航路設定、環境判断ミスなど)
具体的に、自動航行していたドローンが何かに衝突し、その対象物を破損してしまった場合を考えてみよう。
その衝突原因としては、衝突回避システムの不作動(機体メーカーの責任)、衝突回避システムのためのセンサ故障(整備不良などによる機体所有者の責任)、衝突回避システムの値の設定ミスやスペックを超えた使用(機体運用者の責任)などが考えられる。
一義的には、機体運用者が事故対応は行うが、その損害賠償などに関しては、その責任の所在においては、様々なケースが考えられるだろう。
こういった状況において、問題なのは、責任の分散ということもあるが、今まではその原因を追究する方法が少なく、また、そういった安全性を高めることに関してのソリューションがないというところにあった。
また、ドローンは基本的にその多くが産業活用されており、そんな中では損害保険会社やリース会社のポジションも重要となっている。しかし、そういった損害保険会社やリース会社も課題を抱えている。
損害保険会社に関しては、先の例にもあった通り、何か事故が生じた際の以下のような事故原因が不明というところにある。
事故原因:機体メーカーのエラー、環境要因(通信、GPS、天候など)、整備不良(振動、バッテリー、モーターなど)、操縦ミス。あるいは故意。
現状のままでは、保険料率の算定がしにくく、どんどんその保険料率を高くしていかないと成り立たなくなってしまう。
リース会社に関しては、リースやレンタルの場合には、リース会社が機体所有者となっており、機体登録の義務がある。そこでは機体登録者としての責任が生じてくる。そんなこともあり、機体登録制度以降、リース会社のドローンへの取り組みが消極的であったといった背景もあった。
こういった環境に加え、機体の安全性・安定性を認証する型式認証の制度が始まったが、これは単にその機体の機能安全性を担保するということだけでなく、製造に関する一定性や経年変化による安定性なども、ある一定の形で担保している。Level3やLevel4などの環境において、その型式認証取得機を活用するユーザーは重ねて機体認証の取得が必要であるが(型式認証取得機であれば、この機体認証はすぐに取得できる)、この機体認証の運用に関しては、一定の飛行時間ごとに定期点検を実施する義務が、ユーザーにはある(これをきちんと実施しないと機体認証がはく奪される)。
そのためにきちんとした飛行記録を取る必要が生じてきている。
DOP SUITE
DOP SUITEは、上記のような課題の解決を目的としたドローンの安定運用支援のクラウドアプリケーションとなっている。
DOP SUITEは、ドローン・ジャパン、パナソニック システムデザインおよびGMOグローバルサイン・ホールディングスが各社の強みを生かして提供するソリューションだ。
各社の役割
- ドローン・ジャパン:総合企画、販売元、サービス運営
- パナソニック システムデザイン:クラウドアプリケーション開発
- GMOグローバルサイン・ホールディングス:クラウド管理
主な機能
- ドローン機体管理
- 機体管理(ドローン情報)
- 飛行レポート
- 機体アラート
- 機体ログデータの管理
- ファームウェア管理(バージョン管理)
- ドローンの飛行記録との連動
- オペレーター管理
- サポート連携
- 機体運用者の安定運用
- 各種機体ログデータをレポート機能などを通じて視覚的に分かりやすく表示
- ドローンのユーザーやドローンでのサービス提供者は、機体の状況をより詳しく把握
- 機体所有者の安定的な機体管理
- 機体利用状況の確認(累計飛行回数や時間の表示)
- 機体ログによる振動などの経年変化などの機体アラートの表示
- 機体メーカーのサポート対応の向上および機体自律安定性の確認および改善
- 機体メーカーがユーザーからの問い合わせに対応する際、当該機体の詳細データを確認可能となり、的確な状況分析とサポート対応が可能
- ログデータを活用して機体の性能改善にも貢献
対応可能機種
フライトコントローラーのファームウェアにArduPilotを採用している機種。
提供方法
機体メーカーを通じて、以下の形態にて提供。
機体本体 + 機体オプション + 年間機体サポート + DOP SUITE + 機体保険
機体本体とともに提供される年間機体サポートサービスと連携し提供され、割安で「ドローン動産総合保険+賠償責任保険」が付帯されている。
また、DOP SUITE付帯ドローン動産総合保険+賠償保険料は、DOP SUITEによるドローンの安全・管理性能の向上を踏まえ、東京海上日動保険の協力により同一補償内容の一般的なドローンに適用される保険料水準よりも約20%程度割安な保険料が適用されており、ドローン購入者の皆様にそのメリットが享受可能。※2024年3月時点、ドローン・ジャパン社調べ
フライト後のレポートサンプルの一部
DOP SUITEは、最初のArdupilot機体として、イームズロボティクスの第2種型式認証取得機体であるE6150TCに採用された(型式認証機のユーザー運用において、評価されたといった点もあるだろう)。
今後、DOP SUITEに関しては、先に示した飛行前・飛行直前・飛行中・飛行後の各社ソリューションとの連携や、機体ログに関してはより詳細な解析を行い安全性を高めていくようなソリューションサービス企業との連携もDOP(ドローンオープンプラットフォームプロジェクト)の中で生まれてくるだろう。
また、今後、機体メーカーの機体の安全性・安定性を担保するために型式認証の動きは広まっていくだろうし、ドローンを含む自律移動ロボットに関しては、こういった機体ログの管理が安全で安定な運用のためには重要になってくるだろう。
また、現在では、無人航空機を特定飛行させる者が、飛行・整備・改造などの情報を遅滞なく飛行日誌に記載しなければならない制度があるが、今後、こういった人手頼りではなく、自動的に取得される機体ログの記録・管理を義務化していく方が、より合理的であろう。また、その中で、管理するログの共通化といったことも図られていくだろう。