一般社団法人日本ドローンビジネスサポート協会および同協会広島第1支部・株式会社MITINASは、2025年11月23日(日)、内閣府、広島県、福山市、中条学区自主防災組織と連携し、ドローンを活用した大規模防災訓練を実施した。本訓練には協会の全国ネットワークから東京、山形、茨城、兵庫、広島の6支部が参加。約3km離れた孤立想定地区への物資輸送(レベル3.5飛行)、ドローン搭載スピーカーによる避難者との双方向通信、1台のPCによる4機同時飛行制御など、災害時の実運用を見据えた高度な訓練を行い、すべてのミッションを成功裏に完了した。
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訓練実施の背景
近年、豪雨災害や地震による孤立集落の発生が全国で相次いでいる。2024年1月の能登半島地震では、道路寸断により多くの集落が孤立し、物資輸送や安否確認に困難を極めた。同協会は能登半島地震発災直後から現地に入り、ドローンによる被災状況調査や物資輸送支援を行った経験から、平時における実践的な訓練の重要性を感じ全国で訓練を行っている。
広島県福山市中条学区は、山間部に位置する三谷地区が地震・豪雨時に孤立するリスクを抱えている。この地理的条件を踏まえ、内閣府、広島県、福山市と連携し、実際の災害シナリオに基づいた訓練を企画・実施した。
訓練概要
| 実施日時 | 2025年11月23日(日)9:00〜11:00 |
|---|---|
| 実施場所 | 広島県福山市中条学区(中条小学校〜三谷分校間、飛行距離約3km) |
| 主催・連携機関 | 内閣府 広島県 福山市 中条学区自主防災組織 |
| ドローン運用担当 |
一般社団法人日本ドローンビジネスサポート協会 株式会社MITINAS(広島県福山市、代表取締役:藤井盛良)DBA広島第1支部 AKドローンコンサルタント株式会社(東京都、代表取締役:赤井廷充)DBA東京第5支部 doSORA(山形県、代表:横山寿一)DBA山形第1支部 SKY Agri(茨城県、代表:浅野治)DBA茨城第3支部 drmt(兵庫県、代表:三木隆光)DBA兵庫第5支部 合同会社LIS(東京都、代表社員:平野健介)DBA東京第15支部 |
| 参加者数 | 約500名(地域住民、行政関係者、消防団員等) |

全国ネットワークによる支援体制
本訓練には、同協会のネットワークを活かし、東京、山形、茨城、兵庫、広島、岡山の6支部・本部から10名のドローンパイロットが参集。大規模災害時に全国から迅速に人員・機材を集結させる体制を実証した。これは、単独の事業者では実現できない、全国130箇所のネットワークを持つ当協会ならではの強みである。
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訓練内容と成果
1. 人文字「SOS」の上空確認訓練
開始時、三谷分校グラウンドに避難した住民約70名が人文字で「SOS」を形成。広島県防災ヘリコプターおよびドローンが上空から確認し、孤立状況の把握から救援要請までの一連の流れを訓練した。ヘリテレ映像は中条小学校本部にリアルタイム配信され、自主防災組織が孤立情報を関係機関へ伝達する手順を確認した。
2. ドローン搭載スピーカーによる避難者との双方向通信
調査用ドローン(DJI Matrice 4T)に搭載したスピーカーを使用し、3km先の避難者への呼びかけと、カメラによる状況確認を実施した。
通信内容
- 本部から避難者への安否確認
- 指示伝達 避難者の状況(人数、負傷者の有無等)の映像確認
- 住民自身がモニターで「ドローンからどう見えているか」を確認
この訓練により、避難者側も「発見されやすい行動」「意思疎通しやすい合図」を体験的に学ぶことができた。災害時、救助を待つ側がどのように行動すべきかを知る貴重な機会となり、参加した住民からは「ドローンからの視点を初めて体験できた」「どう動けば見つけてもらいやすいかがわかった」との声が上がった。


3. レベル3.5による物資輸送飛行
大型物資輸送ドローン「FlyCart30(FC30)」を使用し、中条小学校から約3km離れた三谷分校(孤立想定地区)へ、水、食糧、衛星携帯電話など約20kgの支援物資を輸送した。
飛行の特徴
- 飛行形態:レベル3.5(補助者なし目視外飛行)
- 飛行距離:片道約3.5km(往復7.2km)
- 飛行時間:片道約7分
- 最高高度:395m(海抜)/ 対地高度100m以上を維持
- 自動航行による物資切り離し・帰還
物資を受け取った三谷分校の住民は、輸送された衛星携帯電話を使用して中条小学校(本部)と連絡を行い、孤立時の通信確保手順も確認した。
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4. 1台のPCによる4機同時飛行制御
本訓練の技術的ハイライトとして、DJI FlightHub 2およびDJI DeliveryHubを活用した複数機体の統合管理を実施した。
同時運用機体
- FlyCart30(FC30):物資輸送
- Matrice 4E:空撮・追尾撮影
- Matrice 4T:調査・スピーカー搭載
- Matrice 4TD + Dock3:遠隔自動離着陸
1名のオペレーターが1台のPCから4機の位置情報、バッテリー残量、カメラ映像をリアルタイムで監視・制御し、大規模災害時の効率的なドローン運用体制を実証した。


5. Dock3による遠隔自動運用
DJI Dock3(ドローンポート)を使用した完全遠隔・自動運用のデモンストレーションを実施。オペレーターが現場にいなくても、遠隔地からドローンを自動離陸させ、搭載スピーカーで避難者への呼びかけを行えることを実証した。

事前調査による徹底した安全管理
同協会では、訓練に先立ち2025年11月10日に飛行ルートの事前調査を実施。他のドローン事業者にはない、独自の安全管理体制で訓練に臨んだ。
3D測量技術を活用した地形・障害物把握
DJI Matrice 300 RTK + LiDARセンサーを使用し、飛行ルート全域の3次元地形データを取得。山間部の複雑な地形、送電線の位置、緊急着陸候補地を事前に把握し、27地点のウェイポイントを最適配置した。



上空電波環境調査(RSSI測定)
飛行ルート上1,451地点で電波強度(RSSI)を測定し、通信品質を事前検証した。
測定結果
- 測定点数:1,451地点
- RSSI平均値:-58.9dBm
- 良好電波エリア(-60dBm以上):90.7%
山間部の一部で電波減衰が確認されたが、飛行高度の調整により全ルートで安定した通信を確保できることを確認した。この電波調査データは、3Dマップ上に可視化し、飛行計画の最適化に活用している。


リスク評価と緊急時対応計画
識別リスクと対策
- 山間部での電波減衰:高度調整、中継点設定
- 送電線横断:50m以上の高度確保
- 風の影響:上空風速10m/s以下、地上風速5m/s以下で実施
- 通信途絶:RTH(自動帰還)高度150mに設定
- 補助者配置:飛行ルート上6箇所に監視員を配置し、目視外飛行中も安全監視体制を維持
使用機材一覧
飛行機体
- FlyCart30(FC30):大型物資輸送ドローン(最大積載30kg)2台
- DJI Matrice 4E:高性能空撮機
- DJI Matrice 4T:サーマルカメラ搭載調査機
- DJI Matrice 4TD + Dock3:遠隔自動運用システム
- DJI Matrice 300 RTK + H20T + スピーカー:調査・広報機
通信・映像機材
- Starlink:衛星インターネット(2台)
- FlightHub 2:複数機体統合管理システム
- DeliveryHub:ドローン輸送管理システム
- デジタル簡易無線:現場通信用
- Zoom:リアルタイム映像配信

訓練総括
本訓練は、内閣府、広島県、福山市、地域自主防災組織、そして同協会の全国ネットワークが一体となって実施した大規模防災訓練として、以下の成果を達成した。
- 技術面での成果:今回の訓練では、すべてのミッションを計画通りに完遂した。1台のPCによる4機同時制御では、複数機体の位置・状態をリアルタイムで把握しながら、それぞれ異なるミッション(物資輸送、空撮追尾、調査・通信、遠隔自動運用)を並行して遂行。大規模災害時に限られた人員で効率的にドローンを運用できることを実証した。
- 住民参加型訓練としての成果:本訓練の特筆すべき点は、約70名の地域住民が「救助される側」として積極的に参加したことである。人文字「SOS」の形成、ドローン搭載スピーカーを通じた本部との双方向通信、物資の受け取りと衛星携帯電話による連絡など、住民自身が災害時の一連の流れを体験した。特に、モニターを通じて「ドローンから自分たちがどう見えているか」を確認できた体験は、参加者に大きな気づきを与えた。明るい色の服装、開けた場所への集合、大きな動作による意思表示など、「発見されやすい行動」を実感として理解できたことは、今後の地域防災力向上に直結する成果である。
- 全国ネットワークの実効性検証:東京、山形、茨城、兵庫、広島の6支部から参集したパイロット・スタッフが連携し、大規模訓練を円滑に運営できたことは、災害時の広域支援体制の実効性を証明するものである。各支部が日常的に同じ機材・手順・安全基準で訓練を行っているからこそ即座にチームとして機能することができた。
今後の展望
本訓練で得られた知見と実績を基盤として、同協会は以下の取り組みを推進していく。
- 全国自治体への展開:今回の福山市での訓練モデルを、全国130箇所の支部ネットワークを通じて各地の自治体へ提案・展開する。地域の地形・災害リスクに応じたカスタマイズを行い、それぞれの地域に最適化された防災訓練を提供する。

同協会では、今回の福山市訓練で実証した高度なドローン運用技術を、全国の自治体・消防・警察機関および防災団体の防災訓練に提供する。
提供可能な訓練メニュー
- 物資輸送訓練:レベル3.5(補助者なし目視外飛行)による孤立集落への物資輸送、自動航行による効率的な輸送オペレーション
- 状況確認・情報収集訓練:被災状況の空撮・サーマル撮影、リアルタイム映像配信による情報共有
- 避難者との通信訓練:スピーカー搭載ドローンによる呼びかけ、カメラを活用した双方向コミュニケーション
- 事前調査・飛行ルート策定:3D測量による地形把握、電波環境調査(RSSI測定)、リスクアセスメントと緊急時対応計画の策定
- ドローン運用体制構築支援:自治体職員向け操縦訓練、災害時運用マニュアルの策定、ドローンポート(Dock)導入による24時間運用体制の構築
同協会の防災訓練実績
一般社団法人日本ドローンビジネスサポート協会は、全国43都道府県130名超のパイロットネットワークを活用し全国でドローン事業を展開している。
また、全国で国家資格講習を実施する登録講習機関として、ドローンパイロットの育成に取り組むとともに、災害対応能力の向上に注力している。
主な防災関連実績
- 2024年1月 能登半島地震:発災直後から現地入り、被災状況調査・物資輸送支援
- 2017年〜2025年 各行政をはじめとする連携訓練:複数回実施
- 全国の自治体との防災協定締結
- 災害時ドローン運用マニュアルの策定支援
[受講者募集]能登半島震災の教訓から学ぶ「防災・減災コース」開講中
同協会では、2024年能登半島地震・水害で大きな被害を受けた石川県奥能登地方の経験を活かした「防災・減災コース」を開講している。実際の災害現場のノウハウから、真に実践的なドローン訓練プログラムである。全国各地での開催も可能。
