ソニーグループ株式会社(以下、ソニー)は、グループ横断の技術交換会である「Sony Technology Exchange Fair 2022(以下:STEF 2022)」の開幕にあわせ、研究開発方針説明会を2022年12月6日に開催した。
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ソニーは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」ことをPurpose(存在意義)として掲げおり、研究開発方針説明会では、このPurposeを長期にわたり実現し、ソニーの事業を支えていくテクノロジーを生み出すための研究開発に関する基本方針を打ち出した。
また、STEF 2022では「感動を生む、テクノロジー」をテーマに、ソニーグループの多様な事業や研究開発組織のテクノロジーや取り組みを紹介。「STEF」は、各事業や研究開発組織で開発される多様なテクノロジーを互いに共有し、意見を交わすことで、新たな価値創造につなげることを目的として、1973年よりソニーグループ内で毎年開催されている社内技術交換会だ。今年、開催50回目の節目を記念し、技術展示の一部が社外に初公開された。
研究開発方針説明会
研究開発方針説明会では、執行役専務兼CTOの北野宏明氏が登壇し、「我々の文明を進歩させ、惑星を持続可能にする」というソニーグループのR&D(研究開発)ミッションを紹介し、これに込めた思いや、ソニーの事業を将来に向け大きく展開させていく中核を担う重要な技術領域を、センシング、AI、デジタル仮想空間と定義し、その技術の連携により、ソニーをAIおよびデータドリブンカンパニーとして変革していくことを説明した。
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また、その実現に向けた研究開発体制の強化を通じて、ソニーグループの研究開発メンバーが能力を最大限に発揮する環境を作ると同時に、研究開発体制自体を、持続的に企業を革新する「イノベーションのエンジン」としたいと述べた。研究開発方針説明会の発表資料はIRサイトにて公開している。
重要な技術領域
ソニーグループのPurposeを実現し、さらに大きく展開させていくためには、ソニーの戦略目標にあわせ、多様な人々の感動を生み、様々なクリエイターのポテンシャルを最大限に引き出す技術を作り続けていく必要があるとしている。その中核となるのものとして、センシング、AI、仮想空間の3領域を挙げる。ソニーの独自技術による現実空間のセンシング、仮想空間の構築、そしてその2つから学習し、それぞれにフィードバックするAIの3領域の連携を目指という。また、この3領域の進化と連携を加速させるため、大規模AIモデルの開発にも着手し、ソニーをAIおよびデータドリブンカンパニーとして変革させていくとしている。
研究開発体制の強化
同社によると、上記の技術領域に注力するため、研究開発体制を強化する。2020年に設立した株式会社ソニーAIを母体とし、革新的な研究を実施するとともに、大規模AIモデルの開発を主導する研究開発組織としてSony Researchを設立するという。
また、ソニーグループ全体の基盤技術の研究開発等を行い、迅速に各事業部門と連携して技術展開等を行うTechnology Infrastructure Centerを設立する。これに加え、既存の事業では活用しにくい研究開発の成果やさまざまなアイデアを、ソニーグループ内外と連携し社会実装・事業化することを目指す研究営業部門を設けるとした。
また、ソニーのR&Dセンターの中で、各事業会社に特化した研究開発のテーマや、各事業会社が今後戦略的に強化したい領域の研究テーマを各事業会社へと移管し、その研究開発を加速させていくという。
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「Sony Technology Exchange Fair(STEF)」について
感動が生まれる場所がバーチャルへと拡張していることから、「STEF 2022」では、「フィジカルとバーチャルがシームレスにつながる」をテーマに技術展示を実施。「フィジカルの世界をとらえる」「デジタルプロセッシング」「フィジカルに還元する」という3つの軸で、17点の技術や取り組みをソニーグループ本社での展示、および特設ウェブサイトにて紹介した。
STEF 2022で公開した技術
フィジカルの世界をとらえる
現実空間で起きていることをとらえ、データ活用や新たなエンターテインメント、サステナビリティに貢献する技術。
- VTuber等で手や指の滑らかな動きを実現する「深度情報を活用したソフトウェア開発キット『ToF AR』」
- 撮影・配信技術で新たなエンターテインメントを実現する「自動撮影システム、カメラロボット、Virtual Recording System」
- 災害や環境破壊を防ぎ、美しい地球を守る「ソニーの地球みまもりプラットフォーム」
- データを活用してアーティストを支援する「GROOVEFORCEとArtist Portal」
- 情動分析によりオーディエンスが求めるコンテンツ制作を支援する「映画コンテンツ評価システム VX -Viewing eXperience」
デジタルプロセッシング
現実空間やバーチャル空間から得られる大量のデータを学習、コンピューター処理することで、リアルとバーチャルを繋ぐAIやシミュレーションに関する技術。
- デジタル空間でリアルな体験を再現する「サージカルシミュレーター」
- 現実世界を美しく再現する「Maprayデジタルツインプラットフォーム」
- AIで映像や音楽に命を吹き込む「ソニーの深層生成モデル」
- Gran Turismo Soph
- AIにおけるブレイクスルー AIによる新しいゲームとエンターテインメント体験の実現に向けて
- 人とロボットたちのコミュニケーションを拡張する「自律型エンターテインメントロボット(aiboとpoiq)の協調」
フィジカルに還元する
データを活用し、現実空間とバーチャル空間の両方でリアリティのある体験を再現可能にする、映像や音響、インタラクションに関する技術。
- PlayStation VR2の圧倒的没入感を支える「3Dセンシング技術」および「新しい描画技術」
- 臨場感のあるスポーツ観戦体験を実現する「プレーを可視化するホークアイの技術とソニーの空間再現ディスプレイ」
- 嗅覚にアプローチした新たな価値を創出する「嗅素を手軽に制御するTensor Valve テクノロジー」
- 遠隔空間を目の前にリアルに再現する「3次元高画質化と低遅延伝送技術」
この他、トリポーラスや大学・企業連携に関する展示も公開した。