今回の検証では、加賀市の上空を距離にして25km、高度約100m~200mを山間部の山中温泉から海岸の橋立漁港まで約1時間飛行。
空飛ぶクルマの地上設備の設置やルートの設置に向けた様々な課題を検証した。
今回のルート検証で得られた詳細な成果報告については、夏以降に加賀市で行われる空飛ぶモビリティシンポジウムにて公表する予定だという。
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加賀市では空飛ぶクルマの裾野産業の誘致とそのための準備を行っている。
今回はその第一段階として、空飛ぶクルマの離発着場の設置やルートを想定したパラモーターでの検証を行った。
パラモーターは非常に安全かつ静音性に優れており、場所を取らずに離着できるため空飛ぶクルマの模擬ルートを検証するのに最適だったという。航空法上の規制を受けずに飛行できるため、上空5mの低空での飛行や空中での静止も可能。また、市街地上空の飛行もできる。
パラモーターによる空飛ぶクルマのルート検証には以下の利点があり、ドローンやヘリコプターによる検証と組み合わせることで効率が増すという。
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ドローンと比較した場合
- 150m~450mの高度での飛行が可能(ドローンでは困難)
- 市街地上空の飛行が可能(ドローンでは飛行許可が必要)
- バッテリーの制約を受けず1時間以上の飛行が可能(ドローンは20分程度)
- 複数のカメラやレーザーセンサーなどを搭載可能
ヘリコプターや軽飛行機と比較した場合
- 滑走路や指定場所以外の開けた場所での離発着が可能
- 低い高度(300m以下)での飛行が可能(ヘリコプターには最低高度の制限あり)
- 機材が少なく騒音がなく、安価に検証が可能
今回の飛行では、1300年の歴史を持つ山中温泉の町の中にある野球グラウンドから離陸し、山代温泉、大聖寺周辺、加賀温泉駅周辺を飛行し、橋立漁港にある小学校のグラウンドに着陸。安全に最大限の配慮し、トラブルなく検証を完了した。
検証飛行に当たっては、加賀市、各観光協会、小松空港管制、自衛隊小松基地、石川県警察に事前連絡し、各所より支援してもらったという。中でも橋立エリアは小松基地に離発着する自衛隊機の侵入経路にあたることから、航空自衛隊とは特に緊密な連絡を取ったとしている。
また、離発着時の風速・風向きなどを検証し、飛行経路上を車両で伴走する事により、上空での挙動や市街地上空を飛行したときの地上からの見え方などを検証した。
さらに、今回の航行によって判明した課題の抽出が行われた。課題および結果については、夏以降に加賀市にて開催されるシンポジウムにて詳細を報告する予定だという。今回明らかになった発見と課題は以下の通り。
(以下、プレスリリースより引用)
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空飛ぶクルマの離発着地について
- 機体の大きさに応じた広いスペースが必要となります。その大きさは最低でも1万m2程度となると考えられます
- 風向きや侵入経路の安全確保も必須となります。気流が複雑な山岳部での離発着運用はコストが高くなり、離発着場の設置場所検討時に考慮が必要です。また、経路確保の観点から外周に木や電線があるところは不向きとなります
- 風が安定している場所であることが重要になります。空飛ぶクルマの特性上、機体と風向きの関係によって効率が変わりますので、風が安定していない場所での離発着は航続距離やコストに影響します
市街地の上空の飛行について
- 市街地を飛ぶ機体は、様々なトラブルを想定し、安全に退避場所に着陸するための機体特性を持たせる必要があります。航空機やヘリコプターの滑空性能は滑空比で示されますが、空飛ぶクルマにおいても一定以上の滑空性能を有することが必須となります
- 市街地の上空を飛ぶ際には滑空性能を考慮して一定区間ごとに安全退避場所を確保する必要およびそのルール整備を行う必要があります。また、退避場所には通信や充電設備等の基本的設備が必要になります。今回の検証では約1kmおきに緊急着陸場所をあらかじめ想定しておりました
- 今回の飛行は飛行スピードは原付二輪と同じくらい(平均30km/h)でしたが、道路を伴走する車両よりもだいぶ先行する状況がおきました。直線で拠点間を繋げることの有用性が証明されました。一方、過疎地等においては空飛ぶクルマ以前に地上の生活導線の再検討が行われるべきだと考えます
デジタルカレッジKAGAは、今回行ったパラモーターによる空飛ぶクルマのルート検証のノウハウや知見を国内の自治体や企業向けに提供していくとしている。
加賀市は2021年12月に兼松株式会社との間に「空飛ぶクルマ・ドローンを用いた地方創生に向けた包括連携協定」を結ぶなど、空飛ぶクルマの産業育成を積極的に行っている。デジタルカレッジKAGAでは引き続き加賀市と連携し、空飛ぶクルマ産業に向けた貢献を行っていくとともに関係する自治体・企業・有志との関係をより強固にしていくとしている。