ロールスロイスは、ファーンボロー国際航空ショー2018にてコンセプト段階のEVTOL(電動垂直離着陸機)プロジェクトを初公開した。この機体は、個人用移動手段としてはもちろん、公共交通、輸送や軍事目的での使用も想定されており、既存の技術及びに現在開発中の技術を元に構想されている。早ければ2020年代前半には空を飛ぶ見込みだ。
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本プロジェクトは、ロールスロイスの「電化を統べる」企業戦略の一環だ。世界有数の産業テクノロジー企業になるという野望を実現する足掛かりとなる。これまでに列車、艦艇など多彩な分野にハイブリッド電気推進テクノロジーを提供して培った経験と、ロールスロイスが持つガスタービン、垂直離着陸テクノロジー、システム解析、航空宇宙関連の規定や認可についての様々な専門知識が基盤となっている。EVTOLの商用化には、エアフレーム製造業者とのコラボレーションが不可欠で、それ以外にも電気システムの分野に精通した戦略的パートナー探しも進めなければならない。
構想としては初期段階のこの機体は、ガスタービンテクノロジーを使用して発電し、それによってなるべく音を立てないように特別にデザインされた6つの電気プロペラが回るようになっている。また、蓄電用のバッテリーも搭載されている。機体性能としては、最大で4人もしくは5人乗り、約250mph(約400km/h)の速さでおよそ500マイル(約800km)飛行することができる。ガスタービンによってバッテリー蓄電が行われるため、再充電の必要がなく、ヘリポートや空港などの既存インフラも利用可能だ。
ロールスロイスは現在、ハイブリッド電気推進テクノロジーの開発に全力を注いでおり、2020年代初期から半ば頃には本機体の実用化が実現する予定で、商用モデルの開発を検討しているという。翼は90度回転し、垂直離着陸が可能だということ。翼のプロペラは、本機が一定の高さに達すると自動で折りたたまれ、空気抵抗やキャビン内の騒音を軽減する。この状態では、機体後部の2つのプロペラで推進する。
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EVTOL市場、空飛ぶパーソナルモビリティ市場、パッセンジャードローン市場は、テクノロジーの発展の結果、そして以前に比べて渋滞まみれの大都会に住む人が多くなり、従来の交通システムに代わるものが必要となった結果、徐々に拡大しつつある。EVTOLには排気ガスの軽減という利点もあり、より効率的な移動手段を求める声に応える航空機体となっている。
ロールスロイス電気部門トップ、ロブ・ワトソン氏は次のように語る。
ワトソン氏:電化というのは、エキサイティングでなおかつ産業テクノロジー市場では避けては通れないトレンドです。電気推進への移行を実現しようとする動きは、徐々に広がっていますが、最終的には革命が起きるでしょう。
電気テクノロジーや航空関連のノウハウを武器に、弊社は電気フライト、ハイブリッド電気フライトを活かすことのできる新たな市場可能性、アプリケーションを模索しています。我々は、新たに誕生しようとしている空飛ぶパーソナルモビリティの世界において主導的役割を果たすとともに、多方面のパートナーと提携してプロジェクトに取り組んでいきます。
ロールスロイスには、航空産業においてパイオニアとして活躍してきた歴史があります。初のターボプロップ機やジェットエンジンの開発から、世界でもトップクラスの大型民間航空機用飛行エンジンと垂直離着陸ソリューションの提供など、目を見張るような経歴があります。第三世代航空機産業の夜明けが始まった今、再びパイオニアとして業界をリードしていくことを目指します。
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EVTOLの後部にはM250のガスタービンが積まれており、このタービンはハイブリッド電気推進システムの一部として改造が施されている。M250はロールスロイス製の優秀なエンジンだ。半世紀以上前の提供開始以降、およそ31000台が出荷されており、その内16000台が現在でも現役エンジンとして使用されている。今まで170以上のヘリコプター、民間・軍事固定翼機に使用され、全機体の合計飛行時間は2億5000万時間を超える。
ロールスロイスEVTOLのコンセプト
- 個人用、商用旅客機用、輸送用、軍事用として使用可能な、柔軟性のある航空機体プラットフォーム
- 垂直離着陸(VTOL)用の傾斜翼
- 巡航飛行時にはプロペラが折りたたまれ、空気抵抗やキャビン内の騒音を軽減、この状態では機体後部の2つのプロペラで飛行
- 4人/5人乗り多目的キャビン
- 飛行可能距離500マイル(約800km)、飛行速度250mph(約400km/h)
- M250ベースのハイブリッド推進システム
- M250ハイブリッド電気エンジンはおよそ500kWを発電可能
- さらなる上昇を可能にする高エネルギー密度バッテリー・6基の推進/リフト・モーター、それぞれパワーエレクトロニクス搭載
- 機体、システム、そしてコンポーネントレベルで新たな性能を顧客に提供