プロダクトデザインとしてのドローン
数年前までは「それって新しい食べものの名前?」と言われるぐらい知名度のなかったドローンも今や誰もが知る存在になり、そのバリエーションもいろいろ増え続けています。中でも注目しておきたいのが特徴的なデザインをしたドローンたちで、見た目だけでなく機能や性能まで面白いドローンが日々開発されています。このコラムでは「こんなアイデアがあったのか!」と思わせてくれるユニークなデザインをしたドローンたちを紹介いたします。
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プロダクトデザインで難しいのは、機能性とデザインのどちらも両立させること。それを実現したいなら必要とされる機能を徹底的に追求せよ。
とダイソン社の創設者であり世界的なプロダクトデザイナーとしても知られるジェームズ・ダイソン氏は語っています。製品に必要とされる機能は何であるかを考え、こだわり抜く過程でデザインも自ずと良いものになると言い、世界中で売れているあのサイクロン掃除機のデザインも、最初の製品から20年近い歳月をかけてたどり着いたもので、今でもまだ進化させ続けています。
つまり、プロダクトを開発する時は何が一番大事かを考えることが大事であり、ずっと追い求め続けられるテーマであるかが大事だと言えます。ドローンのデザインにおいてそのように今後ずっと取り組み続ける価値のあるテーマの一つだと考えられているものの一つが、ローターを使わない羽根無しドローンというアイデアです。
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うなるような羽音を響かせ高速で回転するローターはドローンの名称の元であり、ローターがあるからこそドローンと呼べるのだという意見もあるかもしれません。ですがそのローターによるケガや事故は後を絶たず、耐久性や飛行性能においても問題があるというのは以前から指摘されていて、ローターに代わる機能で空を飛ぶアイデアもすでにいろいろ登場しています。
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羽根無しドローンのアイデアは、2017年にEdgar Herrera氏が発表した「Bladeless Drone」というコンセプトアイデアが国際的プロダクトデザインコンテストであるレッド・ドット・デザイン賞でコンセプトデザイン部門を受賞したことから注目を集めました。SF映画に登場しそうな斬新なデザインで、ぱっと見ただけではとても空を飛べなさそうに思えるのですが、ダイソンが羽根無し扇風機を発売していたおかげで、羽根が無くてもちゃんと風力を生み出せることが審査員にすんなり理解してもらえたようで、そこに最先端の航空力学的デザインを組み合わせたことが受賞の理由になっています。
そして今年、イギリスの名門デザイン学校「Royal of College of Art」(以下:カレッジ)で毎年行われる卒業作品展で、「The Impeller Drone」というクワッド式の羽根無しドローンのプロトタイプを発表され、注目を集めています。
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Impellerとは高速で回転する羽根車という意味で、その名の通りローターの代わりにターボ式ヘアドライヤーのような強力な送風機で空を飛ぶという仕組みになっています。デザインを手掛けたMarcus Kung氏によると、こだわったのはローターでケガをする心配がない安全なドローンで、展示されたプロトタイプがどれくらいの推進力を持っているかまでは説明されていませんが、数年以内には普通のドローンと同じく空を飛べるようになり、気になる騒音や電力も既存のドローンより抑えられと説明しています。
カレッジは副理事長を務めるダイソン氏をはじめ、ジョナサン・アイヴ氏など世界で活躍するブロダクトデザイナーを数多く輩出しています。Kung氏がこれからも羽根無しドローンにこだわり続け、ドローンの常識を変える画期的なアイデアを持った美しいドローンを創り出してくれることに期待したいところです。