毎年恒例、米国ラスベガスで年初に開催される国際テックイベント「CES」を今年も取材してまいりました。
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CESでは10年以上前と早くからドローン展示エリアが設けられ、DJIをはじめParrot、3D Robotics、Yuneecなど、大手メーカーが競うようにブースを並べていた時期もありました。その後しばらく市場に大きな変化が無く、トイドローンが中心のコンシューマ向け製品が目立つようになりました。しかし、2018年にドローンショーもできるコンピュータ制御の高性能機や業務用大型機が登場すると、再び注目が集まりました。中でも、人を乗せる空飛ぶクルマの登場が大きな話題になりました。
それ以降、CESでは毎年空飛ぶクルマが目玉の一つになり、今年もいろいろなデザインの空飛ぶクルマが出展されておりました。
会場で最も目立っていたのはXEPEG AEROHTで、電気自動車メーカーとしても成長している親会社XPENG MOTORSの勢いをそのまま感じさせる、自信にあふれた展示が印象的でした。
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展示されていたのは、2人乗りのヘリコプター型eVTOLと、その機体を搭載して移動する専用の6輪EVカーがセットになった「Land Aircraft Carrier」です。モックアップではなく、2024年11月に有人飛行を成功させた実機が公開され、ブースでは試験飛行の映像が繰り返し流されていました。
昨年は小型模型で公開していた機体を、1年足らずで実用化に近づけたというあたりは、同社の技術力の高さを伺わせます。また、全体的にデザインの仕上がりが良くなっていて、ターゲットとする高所得者層に向けてラグジュアリー度を高めているのがわかります。
前回メイン展示されていた、いかにも空飛ぶクルマというデザインの機体も開発は継続中とのことで、こちらも年内にいきなりどこかでデモ飛行なんてこともあるやもしれません。
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空飛ぶクルマ系の実物大展示では、SimTech Labsのホバーバイク「Manta M4」がデザイン的にもなかなかのインパクトで注目を集めておりました。
2018年に立ち上げられたSimTech Labsは、3DプリンタやAIを駆使してイノベーティブなドローンを開発するスタートアップで、メイドイン・アメリカを強調しているのがポイントです。今回公開された「Manta M4」は3つの大きなローターを備えた一人乗りeVTOLで、基本的に水上で離発着&航行する仕様になっています。重さはかなり軽く、ジョイスティックを使って時速65マイル(約104km)の速度で航行できるのだとか。
展示されていた機体は手作り感満載ですが、来月には実機を発表する予定で、現在支援者を募集中です。300ドルのメンバーパッケージ以外に、テスト飛行参加権が期間限定750ドルで販売されています。同社は他にも、さらに小型化軽量でスケートボードのように立って乗る、イカロスプロジェクトなるアイデアも計画しています。新しい水上スポーツを目指し、テスト飛行も始めているようなので、気になる方はあわせてチェックしてみてください。
会場ではもう一社、2機のドローンを展示していた韓国の「SAMBO MOTORs GROUP」が、電力と水素のハイブリッドで飛行する空飛ぶクルマ「HAM III-2」を公開しておりました。
2人乗りのエアタクシーとしてデザインされた機体はハイレベルな仕上がりで、飛行中の見晴らしも良いようにコクピット回りの視界は広く、後部には荷物を載せるスペースも用意されています。飛行速度は時速180kmで100kmの距離を飛ぶことができるなど、スペックも公開されています。
すでに試験飛行も終えて、機体登録を申請中という記事もあるのですが、現場のスタッフに話を聞いたところ、本機を自社で発売する予定はなく、OEMでの提供を前提にしているということでした。出展はパートナー探しのためだと言い、この辺りはもう少し情報収集が必要かもしれません。
情報収集が必要といえば、とにかく謎だらけだったのが、米Invo Stationが発表したUFO型の3人乗りドローン「V0 Invo Moon」です。昨年UAVイベントで初公開されたのですが、イラストを見る限り見た目はほとんど照明器具にしか見えないデザインで、本当にこれで空を飛ぶの? という疑問が浮かぶばかり。
メディアデイに登壇した元Tesla社員でCEOのLeo Kayali氏によると、レオナルド・ダ・ヴィンチのデザインをヒントに設計された機体は、空飛ぶクルマというよりも都市部を空中移動する新しいモビリティというアイデアで、サンフランシスコにある本社では、NVIDIAの技術などを活用して3種類の機体を開発中だとか。(秘密の)独自設計により垂直離陸で空中に浮かび上がり、そのあとは無線レールに沿って航行する仕組みだという説明でした。
最初に販売を予定している「V0 Invo Moon」は、個人向けの移動モビリティとしてプロトタイプが完成しており、3,500万ドルのところを割引価格の2,500万ドルで販売も開始。将来的には都市部の公共交通としての実用化を目指すという大胆な計画を発表しています。
(10名ぐらいしか集まらなかった)記者会見では「どうやって乗るのか?」「動力はどうなっているのか?」といった質問が次々に浴びせられていたのですが(著者も質問した)、「会場でプロトタイプを見てもらえばわかる」とだけで詳細は不明のまま。しかもCESで初お披露目となるはずが、搬送を準備していたロサンゼルスのアナハイムで大規模な山火事が発生したため、という理由でとうとう期間中に姿を見せることはありませんでした。
そんなわけで本当にプロトタイプがあるのかもあやしい感じではあるのですが、実現すればこれほどユニークで夢のあるモビリティは他にはないので、今後もしばらく開発情報をチェックしたいところです。
CESで展示が始まった当初はあやしいと言われていた空飛ぶクルマも、今や複数の機体が実用化に向けて動いており、ラスベガスのランドマークにもなっているThe Sphereで初めて基調講演を行ったデルタ航空は、トヨタも出資するJoby Aviationとエアタクシーのサービスを年内に開始すると発表しています。
都市部のエアポートからLAX(ロサンゼルス空港)とJFK(N.Y. ジョン・F・ケネディ空港)を10分以内に移動するというもので、今年は大阪・関西万博での試験飛行も含めてこうした本格的な運用が開始される話がいくつかあります。これまで規制だらけで停滞気味の市場全体を後押しするのか、要注目です。
さて、CESの会場ではその他にもたくさんのドローンが展示されていたのですが、そちらについてはまた次回にご紹介いたします。