今回のコラムは前回に引き続き、国際デザインコンペティション「iF DESIGN AWARD 2024」の受賞作品をご紹介いたします。
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本コンペティションでは10年近く前からドローンが受賞しているのですが、当初はプロダクトというよりコンセプトデザインとして、かなり奇抜なアイデアで評価されているというような印象でした。その後はドローンの普及にあわせて、実機やコントローラー、システムなども受賞するようになりましたが、この数年は実用化を前提にしたコンセプトデザインも含めて、いろいろなドローンが受賞しています。
個人的にデザインで最も評価されたと見ているのが、Phoenix-Wingsのカーゴドローン「PW.Orca」です。名前からもわかるようにデザインはオルカ(シャチ)の姿をイメージさせるもので、下から見ると翼があるオルカが空を飛んでいるように見えます。
翼の幅は約3m、本体重量は52kgとコンパクトながら、96Lの容積を15kgまで運べるペイロードを備えていて、最高時速110kgで130kmの距離を飛ぶことができます。医療品などの緊急品からサンプルなどを安全かつ素早くに配送することを目的にしていて、雨や最大45kmの強風にも耐えられるうえに、不安定な天候でも荷物を確実に運ぶために低空飛行ができるよう設計されています。
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活躍する場所は都心部というよりは、主に沖合にあるプラントなどの施設での利用を想定していることから、オルカのようなデザインになったと思われます。
荷物は頭の部分を開いて格納するようになっていますが、それ以外にもおなかの部分を開いて荷物をテザーで吊り下げるなど、用途にあわせて変更ができます。運用もメンテナンスも最少人数でできるようになっていて、すでに実用化されています。ただし、本体を紹介するビデオを見ると受賞したデザインとはテイル部分の形などが少し変わっていて、そこはやはり機能重視で調整されているようです。
空飛ぶ海のいきものはドローンのデザイントレンドになっているのか、プロフェッショナルコンセプト部門で受賞したVolkswagen Group Chinaの空飛ぶクルマ「Sky Garden」も、真横から見るとオルカかシャチのようなデザインになっています。その点については開発側はあまり意識していないかもしれませんが、足もとも流線型でペインティングもそれらしく、こんな機体が空を飛んでいるのを見るだけでも楽しそうです。
もちろん実用化を目指していて、電動で自律飛行ができるeVTOLは、4人の乗客と荷物を載せて最大200kmの距離を時速200kmの速度で60分間飛ぶことができます。富裕層をターゲットにしているため機内のデザインもラグジュアリー感満載で、いくつかのパターンがあります。一つは大きな窓に天井はシースルーで観光にも利用できるようになっていて、もう一つはテーブルがあってゆったり移動することができそうです。
最初のプロトタイプが発表されたのは2022年の夏ごろで、当時は「Flying Tiger」と名付けられていました。今回受賞したのは2023年3月に発表されたフルスケールのモックアップで、名前も変更していることから当初よりもゆったりと空を飛ぶことをイメージしてデザインの方向性が変わったことがわかります。さらに実用化する時には、見た目にあわせて名前を変えているかもしれません。
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もう一つ、空飛ぶクルマでは中国のスタートアップ ZEROG SHENZHEN AIRCRAFT INDUSTRYの「ZG-ONE」が受賞しています。こちらは丸いボールのような形をしたeVTOLで、都市部で短距離を効率良く移動するエアタクシーとしてデザインされています。6つのローターを備えたマルチコプターは最高時速250km、巡航速度は時速75kmで300kmの距離を90分間飛行でき、650kgの積載量でパイロットと乗客の二人乗りを想定していますが、将来的には自律飛行にする予定です。
コンセプトデザインとはいえ実用化を前提としていて、そのための資金調達も順調に進められているので、「Sky Garden」とあわせて中国市場でテスト飛行がお披露目されるのもそう遠くはないかもしれません。
2025年には大阪・関西万博で空飛ぶクルマが実用化され、世界でも運用が本格化していますが、できればデザインも楽しいものが登場してほしいものです。