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コラム小林啓倫

Vol.58 エコな配送手段としてのドローン[小林啓倫のドローン最前線]

2022年8月22日
小林啓倫のドローン最前線

大きなCO2排出源となっている運輸

近年注目されている概念「SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)」。これは「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す」という国際目標で、2015年9月の国連サミットにおいて、全会一致で採択されている。
最近はコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻の方が取り上げられがちだが、こうした一時的な問題(だからといって軽視して良いという意味ではないが)とは異なり、地球環境や社会の維持・発展は継続的に取り組まなければならない課題だ。

Contents
大きなCO2排出源となっている運輸エネルギー消費量の9割削減を実現可能なドローン配送

SDGsは17の分野別の目標と、169項目の達成基準が定義されているのだが、その中の13番目として設定されているのが「気候変動に具体的な対策を(Climate Action)」である。
これは「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」ことを求めるというもので、ご存知のように各国で気候変動対策が進められている。そして実はドローンも、この気候変動対策の枠組みにおいて活躍が期待されている。

その背景にあるのが、運輸部門におけるCO2(二酸化炭素)排出だ。CO2は地球温暖化をもたらす要因のひとつであり、その排出量の増加が、近年の気候変動に関係していると多くの研究で明らかになっている。そこでCO2排出の削減が進められているわけだが、運輸部門はその主要ターゲットとなっている。たとえば国土交通省のホームページによると、我が国においても、運輸部門のCO2排出は全体の17.7パーセント(およそ1億8500万トン)となっている。そのおよそ半分が自家用乗用車から排出されるものだが、営業用貨物車、すなわち配送を行う車両から排出されるCO2も、21.9パーセントを占めている。つまりここを改善する施策は、SDGs対策の観点からも望ましいというわけだ。

Vol.58 エコな配送手段としてのドローン[小林啓倫のドローン最前線]
出典:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」

現時点では荷物の配送を行う車両の大半が、ガソリン自動車となっている。これをバッテリーで飛行するドローンに置き換えられれば、排気ガスの形で排出されるCO2を削減することができる。バッテリーで使用する電力が、水力や風力といった再生可能エネルギーで発電されたものであればなおさらだ。またドローン配送は渋滞とは無縁であり、配送が効率化されることで、よりトータルで使用されるエネルギーの量が抑制される。その意味でもドローンは、持続可能な社会の実現を目指すSDGsの概念から望ましい存在になる可能性があるわけだ。

エネルギー消費量の9割削減を実現可能なドローン配送

Vol.58 エコな配送手段としてのドローン[小林啓倫のドローン最前線]

こうした推察は、どこまで正しいと言えるのだろうか。それを検討する上で興味深い研究結果が、最近カーネギーメロン大学から発表されている。

これは"Drone flight data reveal energy and greenhouse gas emissions savings for very small package delivery"(ドローンの飛行データから超小型宅配便のエネルギーと温室効果ガス排出の削減量が判明)と題された論文で、各種の宅配手段(トラックや小型のバンなど)とドローンを比較し、エネルギー消費量とCO2排出量がどれほど違うかを調べている。

それによると、研究では小型のクアッドコプター(DJI Matrice 100)188機に0.5キログラムの荷物をつけ、それを様々な速度で飛ばして実際の飛行データを収集。そのデータと関連情報(火力や風力など発電方式によるエネルギー消費量の差等)を使って、エネルギー消費量を算出する機械学習アルゴリズムを開発した。その結果、ドローンを使って宅配を行った場合、他の手段よりも荷物1個あたりのエネルギー消費量を最大94パーセント削減することができるという結論に達したそうだ。

Vol.58 エコな配送手段としてのドローン[小林啓倫のドローン最前線]

実験結果をまとめているのが、上掲の図だ。上から中型のディーゼルトラック、中型の電気トラック、小型のバン(ディーゼルエンジン)、小型の電気バン、クアッドコプター、電動自転車となっており、それぞれの乗り物を使用した場合の、荷物1個あたりのエネルギー消費量(グラフ左)とCO2排出量(グラフ右)が表示されている。

ここでもっともエネルギー消費量、さらにCO2排出量が少ないという結果になったのが電動自転車で、その次に少なかったのがドローンある。具体的には、ディーゼルエンジンのトラックを使った場合と比べて、ドローン配送はエネルギー消費量が94パーセント、CO2排出量が84パーセント少ないことが分かった。さらにエネルギーを大きく消費する垂直離着陸を減らすなど、飛び方を工夫することで、より多くの省エネが可能になるそうである。

もちろん今回の研究は、一定の条件下でのドローンのエネルギー消費量を比較したものであり、また搭載した荷物も500グラムと非常に小さい。大型のドローンで重量のある荷物を運ばせた場合や、悪天候時の消費エネルギーの変化など、さまざまなケースを比較しないと現実の結果には近づかないだろう。とはいえドローンが他の輸送手段よりもエコな選択肢になり得ることを示すものであり、今後は配送の効率化やスピードアップといった観点からだけでなく、SDGsの観点からもドローン配送が議論されることが期待される。

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TAGGED: ドローン, 小林啓倫, 小林啓倫のドローン最前線
kumagai 2022年8月22日
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