東京は梅雨入り宣言。まもなく夏を迎えるが今年は違うに夏になりそうだ。仕事もプライベートもドローン漬けの日々を過ごしている。正直やや食傷気味の中、一服の清涼剤のように現れたのが言うまでもなくDJI Matrice 300 RTK(以下:M300)だ。そう恋に落ちたにちがいない。それは惚れた弱みで個人的にもっと知りたい、もっと飛ばしたいと思える機体は、ここ数年味わったことのない感覚だ。
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それからは来る日も来る日もM300のことばかりを考える日々となった。さて今回は、個人的に休日に飛行テストを行いM300をスミからスミまで検証。あくまでもひろし一個人的の見解として、M300の様々な機能を紹介したい。
FPVカメラとアプリがすごい!
M210RTKはInsire 2と同種のFPVカメラが実装されている。前方確認のみは十分な性能だがお世辞に高画質とは言えない。それに比べ、M300搭載のFPVカメラのベースは、「Osmo Action」がそのまま使用されているのだ。
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もちろん「Osmo Action」がそのまま実装されているわけではない。非常に高画質で細い電線や枝なども容易に確認可能だ。その解像度の高さは、やはり安全かつ安心感が格別に高いのだ。
アプリのFPVモードもスマート送信機裏側のC2ボタンを押すのみで、ジンバルカメラとFPVカメラを直観的に切り替え可能だ。表示に関してもホームポイントの位置を【H】マークで映像に映し出せる様になった。例えば長距離で自分の飛行位置からホームポイントを見失った場合は、以前は右下の地図で確認し、最悪RTHを使用し、自動帰還させるのが安全策だった。
M300においては、FPV画面上で表示されている【H】マークに向かって飛行すれば安全に帰還する事が可能だ。地図頼みではなく画像を見ながらホームポイントへ向かわせることは、パイロットであれば誰しもが安心感が違うと思うだろう。
また、中心に円形のコンパスにも【H】マークが表示されており、機体を動かすと中心からスピードと進行方向に合わせて棒状のグラフが表示され、【H】マークに棒状のグラフに向かわせれば、ホームポイントに向かうことが出来るのだ。
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今回の新機能で「風向きの方角と強さ」が表示される様になった。この機能は、風がドローンに当たり、位置を保持しようとするモーターの力を瞬時に演算して表示するという。
普段、地上で使用する風速計はあくまでも地上の風速結果である。強風時に飛行を試みた事がある方は、経験済みだと思うが、地表近くでは出なかった警告が、高度を上げた時に警告で「強風、慎重に操作してください」と表示されることが多々あるのだ。
一般的に地表より高度では、風が強い場合がほとんどだ。また業務では、山の谷間など乱気流や上空での予想出来ない強風の可能性が高いので、アプリ上で風方角や強さが数字で認識可能であることは非常に重宝する。
スマートトラック機能は空撮向き!Zenmuse H20シリーズ
これは動画を見て貰った方が理解が進むだろう。本際点検箇所をトラックする事で、機体が動いた際も追い続け携帯の基地局の様な鉄塔を回り込んで点検する事が出来る。また動きまわる動物の生態調査や、監視など様々な活用方法が可能だ。
このZenmuse H20シリーズは、空撮のみの使用はもったいない。対象物を追尾しながらオートズームなんて離れ技は、通常のPhantomやINSPIRE2などでは到底実現出来ない。M300とZenmuse H20シリーズの組み合わせであれば、アプリ上の被写体を選択しタップするだけで実現できる。動く被写体を機体を動かさずとも出来るが、機体を動かしても躍動感あふれる映像の撮影が出来る。試しにもう一台のM300を撮影してみたが1回の撮影で鳥肌が立つほどよく出来た映像になった。空撮初心者でも簡単に実現できるだろう。
レーザー距離計で用途が大幅に増えた
点検業務の中で緯度経度が把握できる事は非常に重要だ。機体GPSの情報は今までも記録されていたが、あくまで機体の位置情報であり、被写体の位置情報ではない。M300では、被写体と緯度経度が一つの画像として記録されるので、何十、何百、何千の点検箇所を行っても確実に点検箇所を把握できる。
また遠方の鉄塔などドローンを遠くに飛行させる場合、距離の感覚は、非常にズレが多くなる。人間の感覚はあてにならないものだ。障害物にもう少し近くまで接近しても大丈夫だと思っても、事故はよくある事だ。また高圧送電線などは、近くに寄りすぎるとドローンに電気が落ち、いわゆる「スパーク」してしまう事故も起こりうる。レーザー距離計を使う事で、ドローンと被写体や障害物までの距離をリアルタイムで確認する事が出来るので、安全に運用する事が出来る。また目標としたい所などにも、ポイントとして設定できる点もありがたい。
高圧鉄塔と送電線を点検してみた、と売り言葉はあっても実際に実験してみないとわからない。今回自分なりにどこまで出来るか試してみた。
- ワイドカメラで高圧鉄塔の近くまで飛行させ、レーザー距離計を鉄塔に当て点検する鉄塔の全容と緯度経度を記録
- その時点でドローンと鉄塔までの距離が表示で、十分安全な距離か確認する
- 高解像度グリッド」機能を呼び出し、鉄塔を選択しズームの倍率を設定
- 撮影ボタンを押す。自動でズームカメラで各部分を撮影が開始される約60秒
- 裏側は映らないので、同様に裏側に飛行させ同様に撮影する
これにより移動まで含めて約3~4分ほどで1つの鉄塔場所の把握と、鉄塔の表、裏面の両方の全容と高解像度の各部分の写真が撮影可能だ。撮影した「高解像度グリッド」ファイルは自動で全容と高解像度の各写真が保存され、パソコン上で全容の見たい箇所をクリックすると、高解像度の写真が選ばれ、点検箇所をより高精細に確認が出来る。
※画像をクリックすると拡大します
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送電線に関しては、2つの鉄塔の間の送電線を画面から外さずに、数十メートル置きにあるクランプを綿密に撮影しながら行ってみた。
重要なのは送電線に対して機体を並行に合わせる事だ。曲がっているとカメラ操作と機体のエルロン(水平移動)方向だけの操作だけでなくラダー(ヨー軸)の操作も必要になって非常に複雑な操作になるためだ。
また送電線は決して直線で存在するわけではなく、必ずたるんでいる。たるみに関しては、カメラのチルト操作を行う事で合わせる事が出来る。
機体の移動に関しては、ゆっくりと移動させる必要があり、「トライポット」モードを使用する事で、ゆっくりとした飛行が可能だ。約40mほど送電線から離れ、ズームカメラを使い20倍ズームで線に異常が無いか水平移動しながら点検すると、ブレが少なく非常によく見える。
M210とZ30の組み合わせの場合は、同様の事をすると、カメラ中心から少し送電線からはずれでしまうと、後ろ側の山などの風景にフォーカスがあってしまい、送電線がピンボケしてしまう事があったがAF-Sを使う事で、フォーカスがずれることなく、点検する事が出来た。
所々に線同士が接触しない様に、クランプが取り付けてあり、クランプ部分は40倍まで倍率上げてしっかりと点検すると、錆やボルトが浮いていないか、はっきり見る事が出来た、ずっと同じ作業を繰り返し、2つの鉄塔の間のまとまっている送電線4本を同時に約10分で点検する事が出来た。これをいくつもある線に同じ作業をすれば点検する事が可能だ。実際行ってみて、本来2パイロットで行うのが基本だと思うが、一人でも十分作業が出来た。
夏が来る前に
実機のヘリコプターで検査する費用を考えれば、飛ばす回数は多いが非常に安価に出来る事が予想され、これは業務として本当に成り立つと感じた。今まで困難だった送電線がいとも簡単に出来た達成感から、新事業として成立するのでは?と起業を心に誓った次第だ(うそです)。この夏もきっと暑くなる。そうM300と感じた瞬間であった。