開催のねらい―"ザワつき"から"自分ごと"へ
2026年9月25日、第2回「SAMURAI防衛協議会」がSTATION Ai(名古屋市)で開催された。テーマは「ザワつくスタートアップ防衛界隈〜防衛を"自分ごと"として考える〜」。
7月の第1回では、防衛産業への参入にあたって懸念されるレピュテーションリスクや「供給控え/出資控え/ダンピング」といった課題を、作り手・出し手・買い手の立場から整理した。第2回は、防衛を一部の専門家や企業だけの話ではなく、地域や市民一人ひとりが向き合うテーマとして捉え直すことに主眼を置いた。
年末には安保三文書の改定が控え、ドローンをめぐる産業政策・調達制度も大きな転換点を迎えつつある。そうした中で、制度をつくる側、基地とともに暮らす自治体、そして経済・国際情勢を俯瞰する立場から、それぞれの"リアル"が持ち寄られた。
キーノート―年末の三文書に向け、ドローンの課題を整理
キーノートには、第1回に続き元防衛装備庁長官で朝日大学客員教授の土本英樹氏が登壇した。

土本氏はまず、年末に改定が見込まれる安保三文書の方向性を三つの柱で示した。第一は国内生産基盤の強化・安定化。ウクライナの教訓から、有事に対応できる「予備生産能力」を国内に持たせることが鍵になると指摘した。政府が資産を保有し民間が運営するGOCOの活用や、平時は輸出・民生需要で生産ラインを維持し、有事には自衛隊調達に振り向ける枠組みについて「ドローンはその典型」と述べた。
第二は防衛イノベーションの促進。デュアルユース技術の活用、スタートアップの研究開発支援、これまで防衛に関わってこなかった企業の参入促進を挙げ、アジャイル型調達や防衛省版SBIRといった調達制度の見直しの動きにも触れた。
第三は装備移転の促進。司令塔となる新法人の設置や、メンテナンス・教育訓練まで含めた相手国へのパッケージ支援を挙げた。
そのうえで、ドローンをめぐる課題を列挙した。レピュテーションリスクについては、防衛産業を「民主主義や自由、法の支配を支える産業」として政府文書で明確に打ち出すべきだと改めて提言。改良サイクルが数週間単位で進み、既存機がすぐに陳腐化する問題には、政府が窓口となって旧型機を海外へ移転する"日本版FMS"のような出口を設けることで、企業の予見可能性を高められると提案した。主要部品の国産化率を調達条件に組み込むことや、周波数・電波出力の制約を解消する"特区"の必要性にも言及した。
さらに、迎撃用ドローンも現行ルールでは「武器」に整理され、実証目的でもウクライナに持ち込めないおそれがあると指摘。武器を「殺傷用」と「防御用」に区分して後者の手続きを緩和することや、日本に持ち帰ることを前提とした実証目的の移転を認めるよう運用指針を見直すことを提起し、「制度上のブレイクスルーが必要」と訴えた。
"基地の街"と、経済から見た防衛
続いて、佐世保市基地政策局の松本慶太氏が登壇。約140年前の軍港設置を機に誕生した佐世保は、戦後も海上及び陸上自衛隊と米海軍が拠点を置く"基地の街"として歩んできた。艦艇修繕等の自衛隊や米軍からの発注が地域経済を支えており、市は基地を地域資源として生かす「基地経済ビジョン」を策定して企業誘致などに取り組んでいる。

経済・国際金融の立場からは真田幸光氏が登壇。水・食料・エネルギーと物流という「実体経済」、それを決済する「金融経済」、そして軍事力の三層で世界の動きを読み解いた。先進国が低成長に陥りやすい中、防衛経済が新たな成長分野になっているという。その例として、武器の国産化から品質を高め、ポーランドなどへの輸出で外貨を稼ぐ産業に育てた韓国を紹介しつつ、倫理面の議論にも触れた。
そのうえで「我々の安全保障は我々国民が考えなければならない」と、市民自身が議論することの重要性を訴えた。

座談会―"基地の街"の経験と、経済の現実から考える
座談会は総合危機管理士の嶋本学氏が進行し、松本氏、同市経済部企業立地推進室主幹の朝隈斉昭氏、真田氏が登壇した。冒頭、嶋本氏はキーノートを受け、航続距離の短いドローンは、海を隔てた日本の地理条件では本質的に防御の装備ではないかと問題提起した。

議論はまず、基地とともに暮らす佐世保の実情から始まった。基地の受け止め方は、関係する仕事をする人とそうでない人など、立場によって一様ではないという。ただ、佐世保には戦闘機の滑走路がなく、艦船の運用が中心のため、騒音などの影響は比較的小さい。原子力潜水艦や空母の寄港などに大きな反対運動が起きた時代を経て、米軍は"良き隣人"として街に根付いてきた。東日本大震災の「トモダチ作戦」も、市民の理解を深める契機になったという。
話は、「基地があると攻撃対象になるのでは」というよく聞かれる不安にも及んだ。真田氏は、アジア諸国では軍事が政治の中でも特別扱いされ、日本のような大きな反対運動は起きにくいと解説した。嶋本氏も、米軍基地を抱える湾岸諸国ではドローン攻撃を受けた際に「むしろしっかり守ってほしい」という声が上がっていると紹介。同じ基地でも、国や地域によって受け止め方が大きく異なることが浮かび上がった。
佐世保が基地と向き合ってきた背景には、経済の事情もある。朝隈氏は、旧海軍工廠を前身とする佐世保重工業の歩みに触れ、造船業の国際競争の厳しさを背景に、基地を地域資源として生かす方向へ舵を切った経緯を語った。
話題はそこから、防衛産業を支える"数"の問題へと移った。嶋本氏は、米陸軍の100万機、ロシア・ウクライナの年間50万機規模、台湾の月産10万機目標といった海外の数字を示し、経産省が掲げる国内8万機という目標をどう見るかを問うた。これに対し真田氏は「製造業として損益分岐点を超えるには少ない」と指摘。物流や災害対策など民生分野で需要を創出し、国や自治体が買い上げる形なら納税者の理解も得やすいとして、「デュアルユースでも、フロントはあくまで民需」と強調した。
一方で、共存共生には"影"もある。松本氏は、佐世保港の約8割が米軍の制限水域にあり、市街地に大規模な弾薬貯蔵施設を抱えるなど、港湾開発や漁業、市民生活への負担を示した。「基地があるメリットの最大化と負担の最小化を図っているが、最小化は本当に難しい」という率直な言葉が印象的だった。朝隈氏は、基地経済ビジョン策定に際し地元商工会議所や議員らの意見を踏まえながら策定した経緯を明かし、地域の側から"応援団"が生まれている実例を示した。
基地とともに歩んできた街の具体的な経験、経済・国際情勢から見た必然と慎重さ、そして制度をつくってきた立場からの提言。懸念や負担にも目を向けながら、それぞれの視点が一つの場で交わったことで、防衛を"自分ごと"として考えるための手がかりが示された回となった。

次回開催
第3回は、現場で悩みながら報じるメディア関係者を迎え、第2回の議論をさらに深める予定だ。