ソフトバンク株式会社は、成層圏通信プラットフォーム(High Altitude Platform Station、以下:HAPS)向けの6セル対応大容量ペイロード(通信機器)を新たに開発し、上空からの5G(第5世代移動通信システム)通信の実証実験に成功したと発表した。新たに開発したペイロードは、HAPSとスマートフォンなどの携帯端末を結ぶ「サービスリンク」の装置と、HAPSとゲートウェイ(基地局と接続した地上局)を結ぶ「フィーダリンク」の装置を結合させたもの。
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2025年6月、東京都の八丈島で実施した実証実験では、高度3,000mに滞空する軽飛行機に開発したペイロードを搭載し通信を中継することで、基地局と携帯端末間のエンド・ツー・エンドの5G通信と、6セルのフットプリント固定技術※1の実証に成功。これにより、ペイロードが上空から広域かつ安定した通信サービスを提供できることを確認した。
今後ソフトバンクは、この実証実験の結果を踏まえてペイロードの改良を進め、さらなる大容量化とHAPSの商用サービスでの実装を目指すとしている。
実証実験の背景
ソフトバンクは、HAPSによる直径最大200kmの通信エリア化と大容量通信の実現に向け、複数セル対応ペイロードの研究開発を推進。これまでに、サービスリンクアンテナであるシリンダーアンテナを活用し、フットプリント固定、エリア最適化、周波数共用などの要素技術を実証してきた。
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HAPSのサービス運用には、サービスリンクとフィーダリンク両アンテナを結合して機体に搭載する必要がある。今回ソフトバンクは、6セル対応のサービスリンク/フィーダリンク結合構成ペイロードを新たに開発し、上空からの5G通信実証を行った。
なお、この実証実験の一部は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」に採択された研究課題「Beyond 5Gにおける超広域・大容量モバイルネットワークを実現するHAPS通信技術の研究開発」(JPJ012368C07701)の一環として実施された。
実証実験の概要
実証実験では、HAPSを想定した軽飛行機に今回開発した6セル対応ペイロードを搭載し、ゲートウェイと機体間のフィーダリンク(26GHz帯)、機体と携帯端末間のサービスリンク(1.7GHz帯)を中継させることで、基地局と携帯端末間のエンド・ツー・エンドの5G通信を実証。さらに、高度3,000mから地上に形成した6セルエリアでのフットプリント固定を検証した。
システム構成
今回の実証実験のシステム構成は、図1の通り。
- 軽飛行機は八丈島上空を旋回しながら高度3,000mに滞空し、基地局と携帯端末間の上り/下り信号を中継
- フィーダリンク装置は、ビームトラッキング、受信レベル補償※2、ドップラーシフト※3補正機能を搭載し、26GHz帯で6セル信号を無線中継
- サービスリンク装置は、デジタルビームフォーミング制御によりフットプリント固定を行い、1.7GHz帯を利用。機体下部のサービスリンクアンテナ(シリンダーアンテナ)から、方位角60°ごとに構成された6セル円形エリアを形成
実証実験の結果
広域のフットプリント固定性能と遠方でのスループットを評価。通信エリア内で受信レベルを測定したところ、軽飛行機の旋回に伴い位置や姿勢が変化しても、最も受信電力が高いセルが60°ごとに切り替わることを確認。これは、各セルのエリアが地上に固定されていることを示す。
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また、携帯端末でスループット測定を行った結果、旋回中心から15km地点で下り平均約33Mbpsを達成。通信エリア端においてもサービスリンク/フィーダリンク経由の5G通信が可能であることを確認した。この地点での機体仰角は約11°であり、HAPS高度20kmで半径100km地点の仰角と同等であるため、実運用時の周辺環境でも通信維持が可能との見通しを得た。
今後ソフトバンクは、今回の成果やノウハウを基にペイロード改良を進め、さらなる大容量化と商用サービス実装を目指す。



※1 フットプリント固定技術:HAPSの移動や姿勢の変化に応じて電波の向きを変え、地上セルの通信エリアを安定維持する技術
※2 受信レベル補償:飛行体の傾きや移動で変化する電波伝搬路に応じて受信レベルを一定に保つ制御
※3 ドップラーシフト:移動体の動きにより周波数がずれ、通信品質に影響を与える現象