将来宇宙輸送システム株式会社(以下、ISC)は、「毎日、人や貨物が届けられる世界。そんな当たり前を、宇宙でも。」というビジョンを掲げ、宇宙往還を可能とする輸送システムの実現を目指すスタートアップ企業だ。
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このたび、ISCは製造業のエンジニアリングチェーン※を最適化するDXプラットフォーム「WALL」を展開する株式会社SUPWAT(以下、SUPWAT(スプワット))と、ロケットの燃料タンクの軽量化および高強度化を目的に協業を進め、ロケット用燃料タンクの設計最適化システムおよび新構造の燃料タンクの開発に着手していることをお知らせした。
背景
ロケットにおけるタンクは、重要なコンポーネントであり、特に液体燃料を用いるロケットにおいては、燃料およびタンクがロケット全体の重量の大半を占めるため、安全性のほかタンクの軽量化や貯蔵効率、耐圧、強度など厳しい条件が求められる。ロケットの液体燃料には、液体水素(-253℃)、液体酸素(-183℃)、液体メタン(-160℃)という極低温の燃料を用いることから、過酷な極低温環境に耐えうる性能が求められるが、極低温環境下では、タンクに使用される材料が複雑に挙動するため、従来のタンクの開発手法では挙動予測が困難であるという課題がある。また、タンクの重量軽量化を試みる場合、軽量化と強度・剛性がトレードオフの関係にあり開発過程で安全性が損なわれるケースが多いというのも課題だった。
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そこで、宇宙輸送コストの削減に向け、燃料タンクの主材料に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用いて、燃料タンクの重量軽量化・高強度化・低コスト化を実現する新構造の次世代ロケット向け極低温対応燃料タンクの開発を行うことを目的に、両社協業のもと、サロゲートモデルを活用した設計最適化システムの開発に着手する運びとなった。
協業概要
この度の協業では、第1フェーズとして、タンク設計における力学応答等(剥離・壊れ方など)を予測するAIモデルの開発および本モデルを活用した設計最適化システムの開発に取り組み、2024年12月に完成している。同モデルは、AI技術と構造解析を組み合わせたサロゲートモデルであり、極低温環境下での設計の力学応答を予測するAIモデルです。同モデルを搭載した設計最適化システムを用いることで、複数の設計要件(軽量化と安全性等)を同時に最適化することが可能であり、最新のタンク内壁の自動積層製造(AFP)技術に対応した実用的な設計手法として確立した。
また、第2フェーズでは、第1フェーズで開発した設計最適化システムを用いて、タンクの構造の最適化、特にタンクの口金からのリークを防ぐ構造解析についての検討を進めている。今後は、第2フェーズの分析結果を踏まえ、ロケットへの実用化に向け技術拡張を図り、軽量化と安全性を両立する新構造の燃料タンクの開発に両社で取り組んでいる。

将来宇宙輸送システム株式会社 代表取締役社長 畑田 康二郎 コメント
ロケットタンクの構造設計の最適化に向けたパートナーを探している中で、まさか同じコワーキング施設に入居するSUPWATさんとの連携が実現するとは、ビックリでした。ロケット開発のアジャイル化を進めていく上でAIの活用は最重要テーマの一つだと考えています。スタートアップ同士でスピード感のある開発を進めていけることにワクワクしています!
株式会社SUPWAT 代表取締役CEO:横山 卓矢氏 コメント
ロケットという、ものづくりにとって極めて難解で過酷な領域に弊社技術が活かされることを大変嬉しく思います。
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たまたま同じ場所に拠点を構えていたご縁から始まった今回の協業が、こうして実を結んだことに大きな意義を感じています。
宇宙輸送の未来に貢献するとともに、弊社のビジョンである「知的製造業の時代」の実現に向けて、これからも挑戦を続けてまいります。
