2025年7月、DJIはフラッグシップ地図作成ソフトウェア「DJI Terra」の最新バージョン5.0を正式リリースした。今回の大型アップデートは、従来の写実的3D再構築を根本から刷新する「3D Gaussian Splatting」をネイティブ対応した点で、ソフトウェア史上最大の飛躍と位置づけられる。さらに、ユーザーインターフェース(UI)の全面改修、新たなエクスポート機能、最新GPUへの対応、柔軟なライセンス体系も導入され、測量、映像制作、土木工学、公共安全分野における利便性が大きく向上した。
Gaussian Splattingとは何か
Gaussian Splattingは、各ピクセルを3D空間上のガウス分布「スプラット」として表現し、それらを最適配置することで、物体の形状と色彩を同時に再現する技術である。この手法は、ガラス、金属反射、細密な植生といった従来技術が苦手としてきた対象を、破綻なく、自然に再現する。Terraではこの処理をローカルPC上で完結させ、3Dモデルだけでなく歪みのない2Dオルソ画像も同時生成する。
出力形式は以下の3種を標準搭載する:
- Cesium向けの3DTiles(レベル・オブ・ディテール対応)
- 3Dデータ交換用のPLY形式
- GIS対応のGeoTIFFオルソモザイク
ユーザーインターフェースとライセンス体系を刷新
Terra 5.0ではUIを一新し、再構築設定のテンプレート化を実装した。初心者はセットアップ時間を短縮でき、上級者は細部まで調整可能な柔軟性を維持している。製品エディションは以下の2層構成へ簡素化された:
- Standard:従来のSurvey/Proライセンス保有者に無償アップグレード提供
- Flagship:Gaussian Splatting対応。Electricity版ユーザーに無償提供、Clusterユーザーも同等機能を継承
また、永久ライセンス保有者は追加費用なしで最新版へ移行可能となっている。
入出力ソースとハードウェアサポートを拡充
入力面では、Matrice 4Tによる可視光静止画からの2Dマッピングを正式サポートし、詳細点検用プロジェクトにおいてMatrice 4T/4D/4TD/4Eからの画像投入が可能となった。出力面では以下のフォーマットに対応する:
- FBXメッシュ:建築・VFX・ゲーム開発ソフトウェアへ直接取り込み可能
- LAZ点群:高圧縮形式で保存容量を大幅削減、精度劣化なし
- JPGEO2024(日本の新高標高系):対応座標系に新規追加
これらの改善により、Terraの成果物をBIM、Cesium、Unityなど様々な後処理環境に容易に統合できる。
パフォーマンスと互換性の向上
内部エンジンも大幅に最適化され、LiDARベースの2D再構築は最大50%高速化された。2025年最新のNVIDIA RTX 50シリーズ「Blackwell」GPUを正式サポートし、AI処理と帯域に優れるGPU性能をフルに活用可能である。
出力座標系の変更もより柔軟になり、タスクフッターから直接切替可能となった(ただし可視光エアロトリアンギュレーションを除く)。
Gaussian Splattingの利用には、Windows 10/11(64bit)、32GB以上のRAM、GPUはCompute Capability 6.1以上(VRAM 4GB以上、8GB推奨)が必要である。
精密農業への適用とAI強化
分析面でも、Terraの機械学習モデルは再学習され、果樹・建物・電柱・水域・裸地などの分類精度が向上した。これにより、農作物の収量予測や土地利用分析の信頼性が高まり、農業コンサルティングにおける活用が広がる。
今後の展望と迅速なアップデート方針
リリース翌日には早くも不具合修正バージョン5.0.1が公開され、オフライン環境でのライセンス認証不具合が解消された。DJIは今後もGaussian Splattingエンジンを迅速に改良する方針を明言しており、注釈機能やクラスタ再構築、測量ツールの再実装も予定されている。
DJI Terra 5.0は単なるバージョンアップではなく、空間再構築と解析の常識を塗り替える「再起動」といえる。測量士や都市設計者、農業アナリスト、映像制作者にとって、本ソフトは次世代ワークフローの中核となる。