背景・目的
衛星による地球観測がビジネス・インフラ・学術等のあらゆる分野において重要なシステムとなり、技術やシステム構築に係る国際競争が一層激化している中、基本方針で定められている「革新的な衛星基盤技術の獲得により我が国の国際競争力を底上げ」するためには、我が国の強みを活かした独自性と革新性のある衛星観測技術の獲得に挑んでいくことが必要となる。
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なかでも、衛星LiDARは、自ら発した光で情報を収集する能動型センサとして、従来の受動型センサでは観測困難な高精度な鉛直方向の情報を観測することにより、気象や台風の予測精度向上、黄砂・火山灰等の分布の把握等へ活用されている最先端の観測技術だ。
とりわけ、世界でも例の少ない高度計LiDARは、都市管理等に必要とされる高精度な3次元地形情報や、カーボンニュートラルの実現に不可欠な森林物理量の計測等を可能とすることから、衛星観測の革新につながる技術ですが、高度計LiDARの実用化や発展に向けては、センサ寿命の短さや、観測範囲の狭さ(直下点のみ観測可能であること)等の、コア技術であるレーザにかかる技術的課題が存在する。
これらの課題を克服するためには、高出力・高安定なレーザ技術の開発を通じたレーザシステムの小型化・効率化が極めて重要だ。我が国では大学等を中心に、高輝度なレーザ光源をはじめとする世界最先端のレーザ技術を有しており、こうした技術の結集と宇宙適用により新たな宇宙用レーザシステムを構築することが出来れば、長寿命かつ広範囲観測可能な衛星LiDARの実現等を通じた新たな市場の獲得・創出や社会課題解決への貢献等、衛星観測分野における技術や市場のゲームチェンジをもたらすことが期待できる。
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そこで本テーマでは、衛星LiDARの機能向上に資する宇宙用レーザシステムの実現に向けて、日本が有する高出力なレーザ技術の宇宙適用に係る技術開発を推進する。
高度計LiDARによって、都市や森林等を含めた地表面形状に係る3次元的な理解が可能となることが期待され、2030 年までに1〜2兆円規模との予測もある航空機LiDARのニーズを部分的に衛星が担うことで、市場の獲得が期待される。
さらに、高分解能イメージング等と融合して都市デジタルツインを実現することで都市管理・インフラ管理・災害対策など社会のDX化が一気に加速される可能性がある。
高度計LiDARを活用した商業化の道筋を描きつつ、小型・高効率・高機能なレーザ技術といった、革新的な高度計LiDAR技術の獲得に向けた要素技術の開発に挑戦することも非常に重要である。
技術開発テーマの目標
基本方針で定められている「革新的な衛星基盤技術の獲得により我が国の国際競争力を底上げ」すること等に向けて、まずは6年間で、以下の成果を得る。
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- 衛星LiDARへの搭載を念頭に置いたレーザシステムの高出力化と小型化(例えば、既存の宇宙用レーザと比較して出力100倍、体積1/100)等につながり得る高輝度レーザ技術を獲得する(TRL4相当の完了)。
- 開発したレーザ技術の宇宙適用性の評価及び当該技術の幅広い宇宙システム(高度計計測に限らないLiDARによる地球観測、通信、SSA等)への転用可能性の検討を行う。
技術開発実施内容
- レーザの宇宙適用に向けた要素技術の基礎研究
衛星LiDARの実現に向けたレーザの宇宙適用にあたって必要な要素技術の研究をする。また、当該技術を用いた事業構想を有する民間事業者等との対話を進める。 - 宇宙用レーザの実現性検討
宇宙環境下で要求仕様を満たすレーザを実現するための高機能化に向けた研究開発を行うとともに、寿命・耐放射線特性等を確認する。また、将来的にレーザを用いた衛星LiDARの開発・運用等を構想する民間事業者等との連携体制を構築し、事業化等に向けた道筋を描く。
支援規模
1件あたり25億円を上限とする。