會澤高圧コンクリートはグループの無人航空機開発会社、アラセ・アイザワ・アエロスパシアル合同会社(以下、AAA)を通じてエンジン直動型の各種産業用ドローンのプロトタイピングに取り組んでいる。
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本契約(24年12月締結)に基づき、AAAが保有するドローン専用エンジン技術や航空制御などの知的財産を活用し、椿本チエインが量産タイプの「AZ-250」の製造・販売を担う。量産機としてのプロトタイピングや耐久性試験、型式認定の取得などを経て、2030年の商用販売開始を目指すとしている。
「AZ-250」は、AAAによって独自開発された軽量高性能エンジン技術により、カメラ等の軽量機材装備時で最大7時間、50kgのペイロード時でも1時間超の飛行を可能とした、優れた航続性能と高い積載能力を兼ね備えた産業用ドローンだ。
リチウムイオン電池の約50倍ともなるガソリン燃料の重量エネルギー密度の高さを活かしつつ、それ以前のエンジン方式ドローンにおいて課題であった動作振動の抑制と小型化設計を実現したことで、長時間飛行と高積載を両立し、従来のドローンでは不可能だったミッションを可能にする。
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AZ-250開発の背景
會澤高圧コンクリートは、最先端のドローン技術とコンクリート素材技術を融合し、機械施工を軸とする次世代のコンクリート産業を創出するため、2019年にドローンの研究開発を始めた。
当初は、米国の航空ベンチャーとバッテリーとエンジンのハイブリッド型ドローンを開発したが、出力とエネルギーロスに課題があった。そこで、高性能二輪エンジン技術を応用したエンジン駆動型ドローンの開発に舵を切り、2020年8月にAAAを設立。 2021年には500ccエンジン搭載の「AZ-500」を開発し、初飛行に成功。
さらに2022年には、最大積載重量150kg、最長6時間以上の飛行を可能とする1000ccエンジン搭載の超無人機「AZ-1000」を開発。そして、これらの開発経験を活かし、産業用量産機を視野に入れたコンパクトかつ高性能な「AZ-250」が誕生した。
AZ-250諸元
機体形式 | クワッド型マルチコプター |
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寸法(プロペラ折りたたみ時) | H848×L2,205×W1,990mm (H848×L1,174×W973mm) |
空虚重量(最大離陸重量) | 60Kg (115Kg) |
積載量+燃料重量 | 55kg以下 |
航続時間(積載時) | 7時間(無積載) 1時間(積載量50Kg時) |
燃料タンク容量 | 30L |
プロペラ | 可変ピッチ式 直径1,220mm × 4 |
なかでも、高性能二輪用エンジン技術を応用して無人機専用に開発した小型・軽量・低燃費のガソリンエンジンは、冷却システムに真油冷方式を採用しているため暖気性能に優れ、緊急発進時はエンジン始動直後に離陸が可能。
寒冷時の冷え過ぎを防止し、高温環境下でも高い冷却性能を備えているため、雪山や砂漠などあらゆる環境下でも活躍できる全天候型エンジンだ。世界一を目指すニッポン男児の気概を示すためエンジン開発者由来の「國男250」と命名した。
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無人機専用エンジン「國男250」諸元:
エンジン形式 | 油冷・4サイクル・単気筒・SOHC |
---|---|
最高出力 | 20kW (27PS) |
排気量 | 249cc |
燃料供給装置 | 電子制御フェルインジェクションシステム |
特徴 | 2軸1次バランサーによる低振動 |
エンジンドローンへの挑戦
アラセ・アイザワ・アエロスパシアル(AAA)共同代表の荒瀬 国男は、元スズキの二輪エンジン技術者であり、MotoGPのプロジェクトリーダー兼エンジン開発担当として、長年二輪エンジンの開発に携わってきた。
学生時代から空への憧れを抱き、ラジコン飛行機の設計・製作を行うなど航空機への関心も高く、二輪エンジン技術を航空機に応用したいという夢を抱いていたという。
2018年に発生した北海道胆振東部地震をきっかけに、エンジンドローン開発を決意。スズキで培った技術と経験を活かし、軽量・高出力エンジン技術と振動抑制技術を融合させ、AAAを設立後、わずか13ヶ月で無人航空機専用エンジン「國男」を完成。「日本のものづくりを世界一に!」という熱い想いを胸に、エンジンドローンの可能性を追求し続けている。
2030年の商用販売開始へ
本契約をベースに、會澤高圧コンクリート並びにAAAのエンジンドローン開発技術と椿本チエインの精密機械製造技術を融合させ、AZ-250の社会実装を加速させる。
會澤高圧コンクリートおよびAAAは、航空制御を含むより高性能・高信頼性の技術研究開発を継続し、椿本チエインは、高品質な製造ラインの構築や販売ネットワークの整備を行い、外部パートナーとの連携も活用することで、エンジンドローン市場の開拓を進めるという。
今後の展望
會澤高圧コンクリートと椿本チエインは、「AZ-250」を、防災・災害対応、建設・インフラ管理、測量、物流、警備など、幅広い産業分野で活用することを目指している。特に、「AZ-250」の長時間飛行、高積載、広範囲な運用能力を活かし、以下の分野での活用を想定している。
- 防災・災害対応: 被災地の監視、救援物資の運搬、一時的な通信基地局機能
- 建設・インフラ管理: 高所点検、資材運搬、安全管理強化
- 測量: 長時間・広域測量、遠隔地対応
- 物流: 離島・山間地への物資輸送、緊急配送
- 警備: 広域監視、施設警備、巡回監視
一方、會澤高圧コンクリートおよびAAAは、「AZ-250」の開発に加え、コンクリート産業の機械施工を目指す技術革新にも取り組んでおり、超無人機「AZ-1000」の高積載・長時間飛行技術を応用し、ドローンによるコンクリートの空中積層技術「フライング3Dプリンター(F3DP)」の開発を進めている。

F3DPは“空飛ぶコンクリートプリンター”として大型エンジンドローンを活用する構想であり、現行の定置式ロボットアームによるコンクリート積層に比べて大規模な構造物の建設に適用することが可能になる。

これらの開発プロジェクトから生まれる高度な航空制御技術なども応用し、両社は、量産機としての「AZ-250」の市場投入に向けて密に連携するとしている。