発売間もないZENMUSE L3の実用性を検証する貴重な講演となった同セミナーをレポートする。
長距離かつ高精度な計測を実現するZENMUSE L3

ZENMUSE L3は、2022年に発売の小型・高コストパフォーマンスを実現したLiDARソリューション「ZENMUSE L2」の後継機にあたる。LiDAR性能、可視光カメラ、運用効率の全てにおいて進化し、高度な現場DXを加速させるモデルとなっている。
主な進化のポイントは下記の4つだ。
- 最大16リターンによる高密度点群
最大毎秒200万パルスのレーザーパルス照射周波数と、最大16リターンへの対応により、極めて高精度な空間再構築を実現。点群密度と透過性能は調整可能で、高精度マッピングから複雑な環境まで、ニーズに応じた最適な設定が行える。 - 最大950mの長距離スキャン(反射率10%、100kHz)
地表の高低差に影響を受けにくい高高度から安全に広範囲を一気にスキャンできるので飛行回数と作業時間を大幅に短縮可能となっている。 - デュアル1億画素RGBマッピングカメラ
鮮やかな着色点群に加え、最大107°の水平視野角を備えており、1回のシャッターでより広い範囲をカバーできる。加えて、次世代技術「3Dガウシアンスプラッティング」の表現を可能にした。 - 小スポット径、高エネルギー
ビーム発散角はわずか0.25mrad(1/e²)で、同距離におけるスポット径はZenmuse L2の約5分の1。これにより、電線や枝などの小さな物体も検出可能になる。エネルギー密度の向上により、透過性能が強化され、植生下の地表点密度が大幅に増加。これにより、複雑な地形や構造物を高精度に再構築することが可能になる。
ちなみに、重量1.6kgとなったZENMUSE L3は、現時点ではDJI Matrice 400のペイロードとなっている。
ZENMUSE L3とZENMUSE L2の性能比較
セミナーは、KDDI スマートドローンの原田氏によってプレゼンテーションが進んだ。まず、鉱山におけるZENMUSE L3を活用した3次元計測事例の紹介として、ZENMUSE L3とZENMUSE L2の性能比較が示された。

下記の画像は、同じ飛行軌跡からデータを取得をした際に、検知範囲(レーザーの届いた距離)を比較したものだ。

L2は飛行軌跡から約460mの範囲で点群を取得(おおよそスペック通りの数値)しているが、L3は同じ飛行条件同じ位置からの計測にも関わらず約760mにわたってより高密度な点群を取得している。
また、下記は同じ飛行位置(送電線から約200m離れたところ)から鉄塔及び送電線を計測したものだが、L3では、これまでL2では捉えきれなかった直径約5cm(5センチメートル)の送電線をはっきりとデータ化することができているのがわかる。

次に、高さ方向の精度を表す"点群の厚み(ばらつき)"の比較についてもデータが示された。下記の画像は階段状の構造物を計測した結果をL2が赤い点、L3が水色で表現している。結果は見ての通り、L2は形状が曖昧になっているのに対し、L3は階段の形状がはっきりと分かるくらい高精細に捉えられている。このL3の点群のばらつきの少なさが高さ方向の精度の高さを表していると言える。

L3とL2の最後の比較は「樹冠透過率(木の葉や枝をすり抜けてどれだけ地面まで到達したかを示す割合)」だ。飛行高度100m、飛行速度10m/sで計測した結果だが、L3の点群密度は551点/㎡(551点/平方メートル)とL2の102点/㎡(102点/平方メートル)の5倍以上の密度。さらに地盤のみの点群密度だと40点/㎡(40点/平方メートル)となっており、樹冠透過率は7.29%にもなる。これはL2の樹冠透過率2.36%の約3倍の数値だ。L3は最大16リターンに対応しており、この圧倒的な樹冠透過率を実現している。点群画像を見てもらうと、L3がいかに高精細なグラウンドデータを計測できているかがよくわかるはずだ。

このように、ZENMUSE L3は、2年前に発売されたばかりのZENMUSE L2と比較しても圧倒的な長距離・高精度な計測性能を持っている。この性能を活かせば、現場の安全を担保しつつ、効率的に高精細なデータを取得できることになる。
鉱山における3次元計測事例
セミナーにおいては、実際に鉱山を3次元計測した活用事例も紹介された。この事例を見れば、ZENMUSE L3の高い性能がどのような成果をもたらすか明確にわかるはずだ。
計測は石灰石鉱山約100ha(100ヘクタール)を使って行われた。計測範囲内の高低差は約350mもある過酷な計測現場だ。広範囲で急峻な地形のため、従来の計測では危険を伴うだけでなく時間がかかってしまう。また、植生が密で写真測量では正確な地表面の把握が難しい現場でもある。
本活用事例では、上記現場にてMatrice 400+ZENMUSE L3で計測したデータを解析(点群生成、3次元モデル化)したのち、製品置場の在庫管理、採掘現場の測量および進捗管理を行っている。
具体的に得られた成果は下記のとおりだ。
(1)発破後のリアルタイム地形フォロー
鉱山においては爆発を用いて掘削を行うことがよくあるが、今回の鉱山では年間約70万t(70万トン)を掘削するため、"発破"によって10〜20m(10〜20メートル)の規模の劇的な地形変化が日常的に起こっている。従来の事前の標高データに基づく飛行ではこの変化に対応できず、安全な飛行が困難だった。
しかし、Matrice 400+ZENMUSE L3の組み合わせによるリアルタイム地形フォローの機能は、機体のセンサーが現在の地形を直接把握し高度を自動調整することができる。下記画像の緑の軌跡がMatrice 400の飛行経路となるが、高低差の激しい地形を一定対地高度で追従・飛行しており、事前のデータ準備が不要になった。実際に今回の計測では、飛行計画高度300mに対し、平均飛行高度約302mという極めて高い地形追従精度を確認している。

(2)常識を覆す広域スキャン
従来は100ha(100ヘクタール)もの広域を計測するには精度を保つために低空で何度も往復飛行をする必要があり非効率だった。しかし、ZENMUSE L3の高性能レーザーと高精度GNSS・IMUを用いることで、高高度から1フライトでの計測が可能になった。その結果、約100ha(100ヘクタール)のエリアをわずか15分で計測することができている。
計測データの精度についても、最も重要となる高さ方向の誤差が約8.3cm(8.3センチメートル)と、目標としていた±10cm(±10センチメートル)をクリアする高品質なデータを得ることができた。通常は時間を優先すれば計測データ精度はある程度妥協しなくてはならないものだが、L3はその常識を見事に覆すことになった。
(3)発破直後の無人スキャンによるタイムラグの解消
これまで鉱山では、発破直後は有毒ガスや崩落リスクがあるため、安全確認ができるまで現場に入ることができず作業がストップするタイムラグが発生していた。
しかし、発破直後のMatrice 400+ZENMUSE L3による確認計測飛行によって、作業員の方々は安全な場所から動くことなく、即座に地形を把握することが可能になった。危険エリアに立ち入ることなく、計画通りに掘削できたかを手元で確認できるため、これまで半日以上かかっていた安全管理の待ち時間がゼロになり、作業の効率化と安全性の向上を同時に実現することができた。
(4)難所である立坑の上空からの非接触3D計測
垂直に掘られた立坑内部の計測は、墜落や酸欠のリスクを伴う極めて危険な作業であり、足場を組むのにも膨大なコストと時間がかかっていた。Matrice 400+L3を導入したことにより、作業員の方々が深さ30m(30メートル)ある立坑に一切近づくことなく上空から安全に形状を把握することができた。人命のリスクを完全にゼロにしながら短時間で点群のデータの取得に成功している。

このように、Matrice 400+ZENMUSE L3の組み合わせは、現場作業員の安全を担保しつつ作業を効率的化することに大きく寄与した結果となった。
次世代技術「3Dガウシアンスプラッティング」による疑似現場確認の可能性
従来のレーザー点群データではあくまでも点の集まりにすぎず、専門知識のない人にとっては直感的にわかりにくい場面があるのも事実だ。ZENMUSE L3は1億画素のカメラを2つ内蔵しているため、正確なレーザー点群と同時に高精細な写真データを取得可能となっている。取得したデータをDJI Terraで処理させることで地形の正確な形状の把握だけではなく土の質感や草木の色合いまでリアルに再現する「3Dガウシアンスプラッティング」の作成が可能になった。


3Dガウシアンスプラッティングは、従来の3Dモデルと異なり、半透明の細かい楕円体の"スプラット"と呼ばれるものの集まりで3次元を表現する技術だ。これによりガラスの質感であったり水面の反射など、これまで3Dメッシュモデルでは表現が困難だったものもリアルに表現することが可能となっている。
可視光の写真画像のみからでも3Dガウシアンスプラッティングは作成可能となっているが、画像からのみだと特徴点のない白い壁であったりアスファルトなどは形状をうまく表現することができない。L3(LiDAR)を組み合わせれば、物理的に直接レーザーを照射しているので表面の特徴点に関係なく正確な形状を取得し表現することが可能になる。
上記の画像は実際には動画として見ることが可能になっており、"データ"というよりもはや"高精細映像"だ。落石の危険がありそうな浮き石のひとつひとつの形状や地面への引っ掛かり具合まで詳細に表現されている。3Dガウシアンスプラッティングを用いることにより現地に足を運ばなくても、オフィスのモニター上で極めて精度の高い安全点検やリスク評価が実現する。
生産性、精度、安全性の全てを向上させるZENMUSE L3
鉱山における3次元計測事例では、Matrice 400+ZENMUSE L3の組み合わせの導入により、従来3日間かかっていた測量・進捗管理が地形追従機能によりわずか半日で実現したそうだ。もちろん、効率を高めつつも業務に必要な精度を満たすデータを取得している。
加えて、さきほどご紹介した通り、発破直後のエリアや立坑のようなリスクの高い場所への人の立ち入りが不要となることで作業員の安全性も向上させており、労働災害の低減につなげることもできるだろう。
※本飛行は、航空法に基づく国土交通省の許可・承認(対地高度150m以上の飛行)を得て、安全を最優先に確保した上で撮影・検証を行っている
セミナー講師を担当したKDDI スマートドローンの原田氏は、ZENMUSE L3導入の効果について、次のようにコメントしている。
原田氏:ZENMUSE L2でもできなくはない現場だったとは思いますが、今回の現場が広い範囲、かつ、高低差が大きいところだったためZENMUSE L3を導入しました。L2では3時間くらいかかる現場だと思いますが、L3だとだいたい1時間くらいでもろもろの作業が完了しているので、かなり効率化できたと思っています。レーザー照射角の広さや、高高度や離れたところからのレーザー照射であっても高精度な点群が取れる L3 の強みを活かすことができたと思っています。
また、DJI JAPAN 木田氏は現場DX化の可能性と建築分野での広がりについて、次のようにコメントしている。

木田氏:CSPI EXPO 2026のブースでは、どのようにドローンから点群を取れるかというところに興味を持って来場されているお客様が多く見受けられました。実際にLiDARで計測したデータを見たことがないというお客様も多くいらっしゃいましたので、事例や実際のデータをご覧いただいています。
現場のデジタル化は必須になってくると考えています。日本で考えると少子化や人手不足という課題はもちろんありますが、速いスピードで成長していくデジタル化にどう人がついていくか、という課題も重要です。
DJIでは、今まで使っていた機材も無駄にならない、今まで培ってきたノウハウも無駄にならないような機材選定・提供を行っています。ドローンを使った測量に馴染みがないお客様はまだ数多くいらっしゃいます。そういった方が少しでも測量に対するドローンのハードルを低く感じてもらいながら導入に前向きになってもらえたらと思います。
鉱山での3次元計測を事例に、ZENMUSE L3による航空LiDARソリューションの効果、可能性の高さが示された。高効率、高精度、安全性、さらにMatrice 400+ZENMUSE L3というパッケージのこれまでの航空LiDAR測量にない“手軽さ”も見逃せないポイントだろう。本記事がドローン航空LiDAR測量による現場DX化のヒントになればと思う。