本物のデブリの周囲を飛行する運用に成功したのは世界初だという。
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運用を終了した衛星等のデブリは非協力物体と呼ばれ、外形や寸法などの情報が限られるほか、位置データの提供や姿勢制御などの協力が得られない。そのため、その劣化状況や回転レートなど、軌道上での状態を把握しつつ当該デブリに安全・確実にRPO(ランデブ・近傍運用)を実施することは、デブリ除去を含む軌道上サービスを提供するために不可欠な技術だ。
ADRAS-Jは実際のデブリへの安全な接近を行い、近距離でデブリの状況を調査する世界初の試みだという。具体的には、大型デブリ(H2Aロケット上段:全長約11m、直径約4m、重量約3トン)への接近・近傍運用を実証し、長期間軌道上に存在するデブリの運動や損傷・劣化状況の撮像を行っている。
今回、実施した周回観測では、一定の距離を保ちながら物体の周りを飛行するという、RPOの中でも非常に高度な技術を実証した。6月に実施した一度目の周回観測では、デブリの周囲を1/3程度(約120度)周回したところでデブリとの相対姿勢制御の異常を検知し、自律的にアボートした。
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これにより、ADRAS-Jが観測実施中、すなわち非協力物体の周囲を飛行しながらでも、安全を確保できることが実証された。そしてこの度、アボートによりデブリから一旦待避していたADRAS-Jを再度観測対象のデブリに接近させた後、デブリの周囲を約50mの距離を維持しつつ姿勢を制御しながら360度周回飛行する運用を行い、太陽や地球からの照明条件がダイナミックに変化する中、デブリの極めて鮮明な連続撮影に成功した。これは宇宙ミッションにおいて前例のない運用だという。
通信衛星や地球観測衛星などのRPOを目的としない衛星は、自身の姿勢制御や軌道維持、デブリとの衝突回避、そして大気圏再突入や墓場軌道への軌道離脱以外は基本的には地球の周りを周回するのみで、特定の物体に接近したりその周囲で近傍作業を行うことはなく、そのような機能も有していない。
しかし、軌道上サービスにおいては対象となるデブリや衛星などの特定の物体に接近し必要に応じて捕獲することが必要になり、対象物体への安全な接近や近傍作業といった難易度の高い運用が不可欠だ。今回、非協力物体に対する周回観測の実証に成功したことで、軌道上サービスの提供に向けてさらにRPOの実績を積むことができたという。
また、本ADRAS-Jミッションは宇宙航空研究開発機構(JAXA)が大型デブリ除去等の技術実証を目指し実施する商業デブリ除去実証(CRD2)のフェーズIとして実施している。
アストロスケールはデブリの除去としてその捕獲や軌道離脱も行うフェーズIIにも契約相手方として選定されており、そのミッションで運用するADRAS-J2(Active Debris Removal by Astroscale-Japan2 の略)の開発を進めているが、これまで実施した3回の周回観測で、ADRAS-J2のミッションで捕獲箇所として想定している衛星分離部(PAF)に大きな損傷が見られないことが明らかになった。ADRAS-J運用の実績やこの他の得られたデータも、ADRAS-J2のミッションに向けて活かしていくとしている。