今回の実証実験は、世界初の試みとなる。
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固体酸化物形燃料電池ドローンの研究開発は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「ロボット・ドローンが活躍する省エネ社会の実現プロジェクト」の助成を受けて行ったもの。液化石油ガス(LPG)が利用できるSOFCスタックの高出力化と軽量化(出力あたりの重量を従来より60%低減)によって、上空でも発電できるSOFCシステムを開発した。ドローンや二次電池へSOFCで発電した電力を供給することによって飛行・作業時間を長くできる。
また、ドローンの電力負荷変動が大きい場合でも、電極内部でLPGを水素や一酸化炭素に安定的に改質できる内部改質SOFC技術を開発した。汎用的で持ち運びが容易なLPGで駆動することから、水素インフラ整備前の地域でも、物流、インフラ点検、災害対応などの分野で貢献することが期待される。
■開発の内容
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ドローン搭載用SOFCスタック外観
アツミテックが開発したドローン搭載用SOFCスタックは、単位体積あたりの出力密度を向上させるため、平板型セルを採用した。発電した電気を集電するための部材を改良し、電極面積あたりの出力密度を従来の約2倍まで飛躍的に改善した。また、複数の平板型セルを直列接続するためには、セル間で燃料と空気を分離し、電気的な接続を担うセパレーターが必要になる。
アツミテックが保有する金属加工技術を応用し、セパレーターの形状などを工夫して軽量化を図り、2017年に発表した「コンパクトハイパワー燃料電池システム」と比べて、出力あたりの重量を60%低減できた。このSOFCスタックをドローンに搭載することによって数kgオーダーの軽量化とそれに伴う省電力化の効果が得られ、長時間飛行・作業の実現に寄与している。
LPG駆動SOFCシステムの外観
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今回開発したLPG駆動SOFCシステムには、産総研が開発した内部改質SOFC技術が用いられている。電極内部でLPGを水素や一酸化炭素に改質することで、市販のLPGカセットボンベを燃料として用いることができ、水素インフラ整備前の地域でも使用が可能。一般的に、LPG燃料を既存のSOFCに直接供給すると、LPGの主成分であるブタンなどの熱分解によって燃料側の電極(燃料極、負極)上で炭素析出が起こり、電極性能が急激に低下する。
2017年に発表した「コンパクトハイパワー燃料電池システム」では、発電量・作動温度が一定で電力負荷変動がない条件で炭素析出による電極性能の劣化を抑制できるナノ構造電極材料や運転制御技術を開発した。今回、産総研はドローンの電力負荷変動によってcの発電量や作動温度が急激に変化しても電極性能が劣化しない内部改質SOFC技術を新たに開発し、アツミテックが設計したSOFC自動起動・発電・停止制御システムに組み込んだ。これにより、電力負荷変動が大きいドローンに対しても家庭用燃料電池システム「エネファーム」などで搭載されている外部改質器が不要になり、システムの簡略化・軽量化に寄与している。
PRODRONEは、LPG駆動SOFCシステムが搭載でき、30kgまでのペイロードに対応したドローンを開発した。SOFCシステム搭載による重量増に対応するため、重量あたりの消費電力量をできるだけ低減させる工夫が施されている。また、プロペラの振動や気流、離着陸の衝撃などがSOFCシステムの作動に影響を与えない設計になっている。
従来のドローンとSOFCドローンの電力供給の模式図
従来のドローンはLiPo二次電池からの給電のみであるのに対して、SOFCドローンではドローンの電力負荷が大きい時にはSOFCとLiPo二次電池からドローンへ、電力負荷が小さい時にはSOFCからLiPo二次電池へ充電のために電力供給される。SOFC-LiPo二次電池ハイブリッド電源システムの出力制御の最適化などによって、1時間を超える長時間飛行・作業が実現できる見通しを得た。上空を飛行するドローンの電源としてSOFCが適用できることを世界で初めて実証したことにより、今後さまざまな移動体やロボットなどへのSOFCの応用展開が期待される。