鹿島建設株式会社は、着水が可能で水面下の生物環境や地形情報を迅速に調査できる、水面浮体型のドローン「SWANS」(スワンズ)を開発したことを発表した。鹿島は、生物多様性の維持に向け2013年にサンゴ群の再生技術として開発した「コーラルネット®」を活用し、沖縄県慶良間諸島海域においてサンゴ再生に向けた環境保全活動をしている。
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今回、同海域にてSWANSを適用しサンゴの分布状況やコーラルネットによる再生状況のモニタリングを効率的に行った。サンゴ礁域のモニタリングにドローンを活用するのは業界初の試みだ。
SWANSは、浅海域における水生生物や地形の調査を目的に開発した防水性能をもつドローン。機体のローター部4ヵ所と中央部に浮力を持たせることで、水面への安定した着水を可能にした。機体下部のドームポート内に搭載したカメラで上空からの俯瞰映像や水中の映像を撮影、GPSによる位置情報とともにリアルタイムで伝送・記録が可能。また、超音波式のセンサも搭載、サンゴの成育評価に必要な水深および海水温の計測を併せて行うことができる。
沿岸浅海域におけるサンゴの分布調査では、高水温などによる白化現象やオニヒトデの大量発生、赤土流出などによるサンゴの衰退を評価するため、広範囲に調査できる技術開発が求められている。従来の調査ではダイバーによる観察や写真撮影が一般的だったが、波などの気象状況に左右され、広範囲の調査には時間を要していた。ドローンを用いた観測は短時間で広域の撮影が可能であるものの、上空からの観測だけではサンゴの種類や健全性の判別までは難しい点が課題であった。
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そこで鹿島は、上空・水中両方の撮影によって迅速かつ正確なモニタリングを可能にし、着水が可能な水面浮体型のドローンSWANSの開発に至たった。SWANSはPRODRONE製の産業用ドローンがベースになっている。
慶良間諸島海域でのSWANS実証試験では、慶良間諸島海域のコーラルネットを用いたサンゴ再生エリアを含め、約5,000㎡のサンゴ礁で行った。上空からの俯瞰映像から暗礁部を確認し、操作者が定めたポイントまで飛行・着水後、水面上を移動させながら撮影を行い着水後の水中撮影により、サンゴの分布状況やその種類(属レベル)の判別までできることを確認した。
また、GPSによる位置情報の活用によって、事前にコドラート(方形枠)やラインなどの目印を人力で海底に設置する潜水作業が不要となるため、調査時間を大幅に短縮するとともに、安全性も向上。今後は、SWANSを用いた詳細な調査によりサンゴの海底マップを製作することでコーラルネットの効果的な配置計画を行い、サンゴ群集の再生に活かしていきたいと考えている。また、撮影映像と追加搭載する各種センサから得られるデータを用いた、海底地形の3次元化や水質や流速などの海洋観測技術への応用についても検討している。