2026年のシンガポール航空ショーは多くの国々から大小のドローンが展示された。その数は前回2024年より多かったうえ、ドローンのみならずC-UAS(Counter-Unmanned Aerial Systems:対ドローン)も一気に増えた感があった。それはここ数回のショーで最も大きな変化と言ってよい。
そして、C-UASは大きく分けて警察用と軍用の他に、「大がかり」になるのと「簡素に手早く」仕立てる二つの流れも観測もできた。5年目に入ったロシアによるウクライナ侵攻や、2月に起きた米国とイスラエルによるイラン攻撃でドローンの脅威は印象付けられ、日本でも2015年に首相官邸へドローン落下事件が起きている。関心は当面高止まりを続けるだろうC-UASの中でも、小型ドローンを対象にしたこれら二つの流れを記したい。
金一色の車両模型は「撮影禁止」
航空ショーなだけに屋外にはこれまで通り多くの軍民の有人航空機が置かれ、公開された旅客機の客室で多くのマスコミ関係者が撮影にいそしんでいた。そのショーで、C-UASはどのくらい「勢力」を広げたのか。シンガポールに拠点を置くスタートアップ企業TRDシステムズは、前回は屋内展示場奥の比較的狭い場所に、トヨタ・ハイエースに機材を積み込んだ探知用車両や、電磁パルス(EMP)やハイパワーマイクロ波(HPM)を用いると見られる対ドローン銃といったユニット一式を展示していた。
しかし、今回は場所を移し、隅とはいえ屋外展示場への出入り口に近い、来場者が頻繁に通る通路近くにブースを設けていた。すぐ近くには防衛装備庁や米ボーイングのブースもある、注目されやすい場所だ。
展示もより増え大がかりになり、オリオン・カウンター・ドローン・システムと名付けた警戒から探知・捕捉、“撃墜”までの一連のシステムを大きな壁面パネルで紹介し、小さいながら金一色に塗った探知用車両の模型も置いていた。展示風景を撮影しようとすると、社員は「金色の模型は写さないでください」。聞けば、名前は明かせないものの販売契約が成立した得意先向けの車両模型と言う。ビジネスの成功を祝い金一色にしたのだろう。「儲かっていますね」と返すと、社員は否定することもなく顔をほころばせた。
“移転リニューアルオープン”ともいえる展示に、TRDシステムズの業績もC-UAS市場も好調と察することができた。2年前に取材した際、対ドローン銃はEMPにより対象機を軟着陸させて捉えるとしていた。これはドローンが抱く爆発物を衝撃などで作動させないためという。こうした視点は市街地で有効と思われ、展示されたハイエースも警察車両によく見る黒色一色だ。TRDシステムズの製品は主に警察向けなのだろう。
シンガポールの大企業も「一大変革」
国際航空シューでは、ホスト国の大どころのメーカーが屋内展示場の最も目につく場所にブースを構えるのが定石だ。各国からの来場者に自国の工業力を見せる絶好の機会になる。シンガポールでは防衛大手STエンジニアリングが毎回屋内の中心に大きなブースを構える。展示はもちろん毎回異なるが、今回は「対ドローン指令室」とでもいうような大がかりな展示が訪れる人々の目を惹きつけていた。

「指令室」は「有人、無人のチーミング」とテーマが大きく掲げられた横で「無人機と対無人機システムのシミュレーション」と、これも大きく記され、その下に半弧を描くように6~7枚の大型液晶ディスプレイが並んでいた。ディスプレイには「ブルー」と「レッド」と付けられた風景や俯瞰図、小型艦船が表示されている。青色は味方、赤色は敵なのだろう。
展示は警察用にも軍用に使うことができるように見受けられたが、ディスプレイの前にはそれぞれイヤホンとマイクを着けた操作員が座り、監視や対処を命じたり報告を受けたりする。操作員たちの背後には正副指揮者と思われる者が座る。
シミュレーションを実際に動かすところまでは見ることができなかったものの、脇には、監視装置として可視光カメラと赤外線センサー(EO/IR)や操縦用の電波送受信装置、そして妨害装置も置かれる。指令室然としたレイアウトは、日本で言えば、110番や119番の通信指令室に似てなくもない。ならば、こちらも警察向けか。そう思いつつ展示ブースのやや離れた場所へ目を向けると、そこには2月2日にSTエンジニアリングが発表した完全自律型徘徊ドローン「イーグルストライク」を含めた小型偵察攻撃型ドローンが展示されていた。まさに「攻守に備える」だが、そうなると、STエンジニアリングの「指令室」は軍向けと言えなくもない。

サーブは短期間に既存の兵器を組み合わせた
対して、明らかに軍用のうえ、もう一つの流れである「簡素に手早く」を示したのがスウェーデンのサーブが出展した「LOKE」だ。スウェーデン語で「ルキェ」と呼ぶこのC-UASは、既存のシステムを組み合わせた簡素さが際立っている。新たなシステムの採用を抑えたルキェの開発が持ち上がったのはスウェーデン空軍の要請からという。恐らく基地防護が目的なのだろう。
サーブのマーケティング&セールスディレクター、ジョナス・リグネゴード氏によると、「開発への議論は 2023 年に始まった。2024年に空軍と共同でプロジェクトを始め、実始動のデモンストレーションを公開したのはそれからわずか84日後だった」という。
ブースに置かれたルキェの公式パンフレットを見ると、ルキェは2台の車両に載せたレーダーと攻撃兵器で構成される。ピックアップトラックほどの大きさの車両に軽量多目的監視レーダーのジラフ1Xを積み、もう一台は「トラックファイア」と称して7.62mm口径の機関銃と20㎜あるいは30㎜口径の機関砲を搭載する。機関銃は直接ドローンを狙い撃ちするため。機関砲は多数で一斉攻撃をかけてくる対スウォーム用という。銃砲の射程は約1.5km。それより遠い場合はC-UASミサイルのニンブリックスや射程約9kmのRBS70NG防空ミサイルが迎え撃つ構えだ。

ジョナス氏は、ルキェは日本の防衛にとって優れた装備と考えられるかとの問いに「移動式のモジュラー化されたシステムであり、カスタマイズにより性能向上を目指したシステムの構築も可能。既存の防空システムと完璧に連携し、小型ドローンへの防空態勢をさらに強化する」とした。さらに、「既に実績のある製品であり、現在市場で入手が可能」とし、短期間でシステム構築できるのが最も高いメリットとアピールしていた。
手法は一つでないが「速度」は欠かせない
会場にはこのほかにも、日本から出展した防衛装備庁のブースも含めてC-UAS関連の展示はあったが、前回に比べて今回C-UAS関連の展示が多かったのはなぜか。ドローンの兵器としての有用性と恐ろしさが知れ渡り、有事の際に真っ先に防がなければならない対象と世界が肌身を持って知ったのは2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻であり、米国とイスラエルによるイラン攻撃もそれを裏付けていた。
2022年2月のウクライナ侵攻直前に開かれたシンガポール航空ショーでも、ドローンは展示されていた。ただ、正確な数は不明なものの、「以前より増えたな」くらいの印象だった。ショーは隔年開催のため、前回の2024年も爆発的にドローンの展示が増えた記憶はない。しかし、世界各国はドローンをどう活用すればよいかと同時にどう防ぐかも考え続けた。それはビジネスチャンスにもなる。それが今回のショーで反映されたのかもしれない。
今後はどうか。大がかりと簡素に手早く。二つの流れは続だろう。小型ドローンは安価に、短期間で、大量生産ができる。対抗にどんな手段が最も有効か。攻める側が知恵を絞れば、守る側はさらに頭をひねる。これからも攻守様々な手法が試されるのは間違いなく、そこに開発スピードも資金も、アイデアも投入される。
2年後に同じ会場でドローンもC-UASもどんな変化を見せているか。そして、そこからどんなノウハウを吸収できるのか。次回のショーの開催は2028年。ドローンとC-UASの展示はどう変わるのか。未来永劫表裏一体の関係依然として関心事なのだけは間違いない。