小型UAVが「ドローン」として知名度が高まった2010年代の半ば、その用途として大きく期待されていたもののひとつが、小さな物品の配送だった。いわゆる「ラストワンマイル」の配送を担ったり、離島に医療品のような緊急度の高いものを届けたりといった用途が想定され、そのいくつかは実用化にまで至っている。だが、当時思い描かれていたような、私たちの頭上を無数のドローンが飛び回り、日常的に配送業務で活躍するという世界はまだ実現されていない。
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しかし世界各地で研究は続いており、その中で、さまざまな応用編が検討されるに至っている。そのひとつが、ドローンと地上を走るマシンを組み合わせるというアイデアだ。
このアイデア自体は新しいものではなく、2017年にも、物流会社のUPSが、配送トラックにドローンを搭載するという技術を発表している。
このコンセプト動画内で示されているように、これは通常の配送業務で使用しているトラックを改造して、ドローンの搭載と発着が可能な専用のマシンを用意。そしてドローンの自律飛行が可能なエリアでは、いくつかの配送をドローンに任せてしまい、その間にスタッフが別の配送先を回るというものだ。
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この方法により配送ルートを短縮して、配送にかかる時間とコストを削減できると期待されている。UPSの試算では、6万6000人のドライバーが毎日1マイル(約1.6キロメートル)のルートを削減することで、年間5000万ドルのコスト削減につながるそうだ。
残念ながらこの技術はまだ実用化に至っていないのだが、この「ドローン×トラック」が現実になった場合に、ドローンとトラックがどのようなルートで配送すればもっとも効率化されるのかという点については、いわゆる「車両経路問題(VRP)」(複数の車両が複数の顧客に効率的に荷物を配送するための最適な経路を求める問題)の派生形として、アルゴリズムの研究が進んでいる。
たとえば南アフリカにあるステレンボッシュ大学の研究者らが今年9月に発表した論文によれば、生物の進化を模倣して最適な解決策を導き出す「進化的アルゴリズム」を用いて、従来のトラックのみの配送と比較して、配送時間を約40%から60%短縮させることに成功したそうだ。配送距離の削減については条件によって開きがあり、7%から69%の間だったそうである。いずれにしても、前述の「1人1日1マイル」の削減は無理なく達成できるだろう。
ドローン×自走ロボットの可能性
さらに組み合わせるトラックの側についても、ロボットカーや歩道を走る自走ロボットを使ってはどうかというアイデアが登場している。
これは米シリコンバレーに拠点を置く企業Serve Robotics(Uber Eatsやセブンイレブンといった企業とパートナーシップを結んで配送ロボットの開発に取り組んでいる)と、ドローン配送企業のWing(Googleの親会社であるAlphabetの傘下にある一社)が共同で取り組んでいる研究で、次のようなコンセプト動画が発表されている。
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ショッピングモールにあるカートのような形状をした配送用自走ロボットが、必要に応じ、特定の荷渡し用ステーションに荷物を置く。するとドローンが接近、荷物を回収して、指定された配送先に向かうというものだ。
発表されたプレスリリースによれば、米テキサス州ダラスで、今後数カ月以内に実証実験が始まるとのこと。飲食店を対象に注文を受け付け、それを自走ロボットとドローンを活用することで、最大6マイル離れた顧客に届けるという計画になっている。
ドローンは広範囲を迅速にカバーでき、交通渋滞も回避することができる。しかし都市部のあらゆる場所で、安全に離着陸するというのは依然として難易度が高い。そのためラストワンマイルならぬ「ラストワンメートル」問題があり、すぐ近くまで短時間で移動できても、顧客に荷物を渡すという最後の最後で手間取る可能性がある。
一方で、地上を自走するロボットは、広範囲を高速で移動することはできないものの、目的の建物や店舗のごく近くまで接近し(場合によってはその中に入って)、安全に荷物のやり取りができる。また歩行者の多いエリアの移動についても、(人間から見た場合の)安全性という面では、自走ロボットに軍配が上がる。これらの長所を組み合わせることで、特に混雑した都市環境において、より信頼性の高い食品配送が可能になるとしている。
さまざまな手段や手法、技術を組み合わせ、それぞれの長所を活かしたり弱点を補ったりするという「マルチモーダル」の発想は、配送分野でも導入と実用化が進むことになるだろう。ドローンが空を飛び回って荷物を届けるという未来像は、ドローンとロボットが荷物をリレーしながら私たちの周囲で働くという未来像に変わっていくのかもしれない。