ドローンの技術分類
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ドローンの技術は日々進んできているが、その現状を整理したい。ドローンの技術は大きく分けて、3つに分類される。
一つめが、機体制御であり、自律を支える基本機体制御でなく、衝突回避や室内環境での自律飛行を行うなどの高度な機体制御、また、搭載したカメラなどの制御や搬送物の制御などを行うペイロード制御も機体制御に含まれる。
これは二つめが機体管理であり、この分野は主にPCやタブレット・スマートフォンでのアプリケーションで実行されるケースが多いだろう。三つめが情報処理であり、この分野はPCでのアプリケーションの実行も多いがクラウドで処理というケースも多い。
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機体制御
従前より機体に関する課題は以下が挙げられてきた。
航行時間に関しては、以前はマルチコプターで15~20分程度であったが、現状では50分程度のものも現れてきている。また、航行時間という観点でいけば、固定翼式のものであれば、1時間以上は当たり前になってきている。
その改善要因は、電池の改良や複数搭載といった内容が大きいし、ガソリンエンジンで発電するといったハイブリッドも現れてきている。機体素材もプラスティックからマグネシウム合金、そして、グラスファイバーという形で、より軽量で硬度を増した素材が使われるなかでの軽量化が航行時間を延ばすことに貢献している。
その中での課題は、機体の小型化に伴う電池の小型化やリチウム硫黄電池や水素電池などのコストの低下や安全性確保、また、ハイブリッドは航行時間を延ばすことには貢献しているが、エンジンの振動が及ぼす各種センサへの影響などで自律飛行がまだ安定していない。また、電池のインテリジェント化などが進んでいない機体もあり、電池の寿命や温度管理などによるトラブルもまだ多く、そういった変化を踏まえたフェールセーフ対策を整えることも実利用が進むにつれて重要となってきている。
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衝突・落下防止に関しては、前方だけでなく前後左右や上下方向へのセンサにより衝突防止の技術は進んできている。これは、各種センサ(ビジョンベース、超音波、赤外線、LiDAR、レーダー)などの高度化と低コスト化がその要因だ。また、落下に関しても6枚や8枚のプロペラによるフォールトトレラントが装備されている機体も多く、落下の発生に対応したパラシュート搭載したものも現れてきている。課題としては、衝突に関して、電線などの細いものの検知がまだ難しいケースがあり、そういったケースの改善が挙げられる。落下に関しては、パラシュートが開いて効果を発するまでに時間がかかり、低高度に関しては、他の手段も含めて改善が必要だ。
そして、有人機との接触や無人機同士の接触も課題となっているが、UTMなどの技術やシステムの向上により、その回避に向けて整いつつあるが、これは技術課題に加えて、ルール整備と併せて安全性を向上していく必要があるだろう。
改善要因
- センサ(ビジョンベース、超音波、赤外線、LiDAR、レーダー)
- フォールトトレラント(6枚羽、8枚羽)
- UTMシステム
- パラシュートなど
現状
- 衝突防止-8方向のものも登場
- UTMシステムが社会実装局面へ
- 80m程度を超える場合でのパラシュートなどの器具
課題
- 電線などの細いものなどの検知
- UTMへの登録
- 低高度での落下対策
電波の長距離伝達と安定性に関しては、電波行政のルールとともに技術改善がされてきている。平成28年8月に無線設備規則等の省令が改正され、以下の技術的条件の緩和がされた。
- 5GHz帯(5.7GHz帯)を、新たにドローン等による高品質な映像伝送等に使用可能とする
- この他、高品質な映像伝送等に利用可能な周波数(2.4GHz帯)や、ドローン操作に利用可能な周波数(73MHz帯等)を拡大
- 最大空中線電力を増力(既存の2.4GHz帯の無線LAN機器と比較すると約10倍)することにより、5km程度の長距離通信を可能とする
前回のコラムで記した携帯電話の上空利用制度緩和も、電波の観点から大きな前進となるだろう。また、合わせて5G、特にローカル5Gの活用は電波状況を大きく改善させるものとなるだろう。
携帯電話などの通信インフラの整備が整っていない地域に向けて、中継し制御するための多数接続技術・周波数共用技術が令和3年度を目標に現在開発されている。
非GPS環境下での測位と安定に関しては、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を中心に技術の向上がなされている。SLAMはGPSなどのセンサを使用せずに、自己位置推定と環境地図作成する技術だ。SLAM技術は、ここ数年のレーザーレンジスキャナー(測域センサ、LIDAR)、カメラのデバイス技術の向上および低コスト化、そして、処理エンジン(GPU)技術とアルゴリズムの向上が寄与し性能が向上している。
その中で、相対位置推定のレベルは向上し、室内などのGPSが届かない空間において、一度手動操縦で航行させたルートをたどるといった精度は飛躍的に向上した。ただSLAMにもまだ課題がある。
- 位置推定の誤差が蓄積し、真値から大きく外れる。誤差の蓄積により、地図データが崩れたり、歪んだりするため、それ以降の探索が困難に
- 位置推定が失敗し、地図上の位置を見失う。画像や点群によるマッチングでは、運動は考慮されておらず、非連続的な姿勢推定結果を出力する場合がある
- 画像処理・点群処理・最適化の計算コストが高く、エネルギーを多く消費する。長時間での動作が難しい
こういった課題の解決にむけて、SLAM単独の処理ではなく、マーカーなどの補正信号や外部処理などを組み合わせて、ドローンバリアフリーの空間を構築していくような動きが重要だ。セキュリティに関しては、今までは実証実験が多く、それほどまでに大きな課題になってはいなかったが、実用段階になるにつれてその重要性は高まってきている。
また、先にも記した携帯電話ネットワークの上空利用が進む中で、ドローンが今まではインターネットオフラインであったものが、インターネットオンラインになっていくため、そのリスクが高まっていく。セキュリティに関しては今までほとんど対策が取られておらず、この対策は急務である。内閣官房もこの9月に令和3年度以降のドローン新規調達にむけてのガイドラインを示している。
直接的には機体制御ではないが、機体制御分類に含まれるペイロード制御に関しても、技術的な進捗が見られる。特に顕著なものは、スマート点検分野でのDJI Matrice 300 RTK+Zenmuse H20によるものだろう。
これはDJIの機体制御の技術の高さだけでなく、カメラ技術の高さを示すものだ。広角&望遠レンズ、距離計、サーマルカメラを合わせて、以下のような機能を実現している。
- ライブミッション記録
リアルタイムで自動ミッションのデモ飛行を記録 - AIスポット確認
毎回正確に同じ位置からデータを収集できる機能で、自動ミッションの精度を大幅に改善する。デモ飛行中に撮影したウェイポイント点検ミッションの写真を記録後、操縦者や点検者は特定の対象物にマークをつけることができる。次回の自動飛行ミッション中に、AIアルゴリズムがマークされた被写体と現在のライブビューを比較することでカメラの方向を補正し、正確で矛盾のないデータの取得が可能になる - Waypoint 2.0
最大65,535個のウェイポイント(通過点)を設定できるよう改良された飛行計画システムで、連続した一連のアクションやサードパーティー製ペイロードなどに対応している
こういった形で機体制御だけでなく、その目的に応じた形でのペイロード制御を実行できるということが、今後の機体技術・機体性能という観点では重要になってきている。そういった意味ではドローンの機体技術も一段上に上がってきていることを示している。
機体管理
実運用が拡がる中で重要度を増してきているのは、この機体管理の技術だ。機体管理に関しては、現場で使うものとバックエンドで使うものと二つに分かれる。以前、ここでのコラム、Vol.33 実用化局面において「DJI」から学ぶことで記したが、この機体管理というエリアでもDJIが抜きん出ている。特に現場で使うものでの機体性能と連動した機体管理のユーザービリティは高いものがある。
残念ながら、国産機体メーカーに関しては、この部分の技術向上がなかなか進んでいっていない。それはやはり国産機体メーカーにこういった機体管理ソフトウェアを開発する人材が不足していることにあるだろう。今後、実運用が進むにつれてこの機体管理は非常に重要な分野となってきており、こういったものを開発可能な技術リソースがある会社は大きなビジネスチャンスがある。特に、飛行ログ管理や解析といった分野はまだほとんど手つかずであり、早く使いやすいものを提供した会社にはチャンスがある。
情報処理
情報処理の領域に関しては、画像合成や画像解析を中心にドローンで取得したデータ処理の技術が進んできている。ドローン活用ユーザーとしては、現在ある技術を適切に選択していくことが必要となっており、今後は自社が目的とするソリューションにきちんと連携していくことが重要だ。
特に今までDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいなかった業種において、ドローンはデジタル情報を効果的に取得する端末としてのポジションを高めており、そういった視点からきちんとソリューション構築していくことが重要だ。
ここに挙げたようにドローン技術はハードウェア・ソフトウェア・システムが統合されたものとなっており、自社のプロジェクト内に技術専任を配置し、その技術動向や制度動向を注視していくことが必要であるし、自社の目的実現のためにはドローン専業の技術コンサルティングと契約することも効果があることだろう。