ジャパンモビリティショーが11月9日(日)まで東京ビッグサイトで開催中。自動車が主役の「モーターショー」から、陸をはじめ空や海などで活躍する様々な「モビリティ」が大集合する「モビリティショー」に衣替えしてから2度目の開催となる。大阪・関西万博で話題を集めた空飛ぶクルマやドローンといったエアモビリティが見られる現地の模様をレポートする。
SkyDrive
国産の空飛ぶクルマの開発に邁進するSkyDriveは、大阪・関西万博で約1か月にわたり、型式証明取得を目指す「SKYDRIVE」を投入してデモフライトを実施、成功させた。日本のエアモビリティ業界におけるけん引役といえる同社は、モビリティショーではメインプログラムのひとつである「Tokyo Future Tour 2035」に出展。「鉄道×空飛ぶクルマ」をコンセプトに、まるで電車に乗るように気軽に空飛ぶクルマに乗れる社会をイメージしたブースを設けた。

ブースの中心に鎮座するのは、SKYDRIVEのフルスケールモデル。そしてその背後にあるのは、駅に設置されている自動改札機の模型だ。来場者は自動改札機を通り、プラットホームからSKYDRIVEに“乗車”。眼前のLCDディスプレイを通じて、東京ビッグサイトからレインボーブリッジを往復する空の移動を味わえる。

記者も体験。改札機にICカードをかざして……ではなく自動で開けてもらう仕組みだが、雰囲気は抜群だ。プラットホームの階段を登り、SKYDRIVEの客室内のコックピットに案内された。やがてテイクオフすると、東京湾景と多数の空飛ぶクルマが行き交うシーンが現れた。3分ほどのクルーズはとても快適だった。途中、機体正面にドローンが出現したため航路を変更したり、緊急“空飛ぶクルマ”が飛来するため航路を譲ったりといったシーンもあり、安全に配慮した飛行方法に対応していることもアピールされた。

やや交通が不便な東京ビッグサイト⇔都心間の移動も、空飛ぶクルマがデビューすれば劇的に改善されるだろう。
このほかブース内にはSkyDriveが資本業務提携を結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)など鉄道4事業者との取り組みについて紹介するパネルが展示された。
10月29日のプレスデーでは、福澤知浩CEOが囲み取材に応じた。鉄道会社との連携や、今後の導入の見通しについて、以下の通り説明した。
駅からラストワンマイルの交通に空飛ぶクルマの活用を検討しています。既存のモビリティでは渋滞や乗り換えが不便といった課題がありますが、空飛ぶクルマであれば一直線で目的まで行けます。今後は空の移動が日常になると考えています。大阪では東西南北の各エリアを斜めに結ぶようなルートで、2028年以降にサービス開始を目指しています。東京でも湾岸エリアや多摩川上空での導入を考えています。
LEXUS

大阪・関西万博で飛行した複数人が搭乗できるタイプの空飛ぶクルマは、SKYDRIVEのほかにもう1機ある。それが米Jobyの開発する「Joby S4」だ。同社にはトヨタ自動車が累計8.94億ドル出資しており、2024年秋には日本初飛行をトヨタ 東富士研究所(静岡県裾野市)で行った。
モビリティショーではJobyの空飛ぶクルマのモックアップが、トヨタの高級車ブランド・LEXUSのブースで展示された。今回、LEXUSは移動をラグジュアリーな体験に変えていくというコンセプトで、6輪自動車の「LEXUS LS CONCEPT」などを発表。その一環であり、空の移動を担う存在として、Jobyをピックアップした。ちなみに、機体には「LEXUS」ではなく「TOYOTA」のロゴが入っているが、トヨタ自動車全体でJobyと取り組みをしているためとのこと。

ブース内の高台に設置されたモックアップの白いボディは来場者の目を引き、多くの人々がカメラを向けていた。見上げて機体を観察してみると、客室はコックピット1席+4席の5人乗りであることがわかる。間接照明に照らされて、質の良さそうなシートが設置されているようだ。

担当者は今後のJobyとトヨタの取り組みについて、以下のように説明した。
社会実装に向けて、まずは型式証明を取得しなければ飛ばせません。トヨタ自動車が培ってきた生産技術などを採り入れながら、Jobyと一緒に型式証明を取りたいと考えています。2024年の東富士研究所、2025年の万博と多くのお客様に飛行シーンを見ていただきました。2026年以降も機会を設けられたら。
ソフトバンク

地球から200km以上離れた低軌道上に打ち上げた通信衛星を用いて通信を行うスターリンク。auブランドの携帯電話ではスターリンクとの直接通信が始まり、楽天モバイルやNTTドコモといった他社も低軌道衛星通信の活用について、追従する姿勢を示している。
ソフトバンクでもスマートフォンと通信衛星が直接通信するサービスを2026年から始めると表明している。一方で、モビリティショーでは通信衛星よりもさらに低高度にあたる成層圏を活用した通信サービス「HAPS」について展示した。
ブースで目を引いたのは銀色の飛行船「Sceye(スカイ)」の模型だ。LTA(Lighter Than Air)型と呼ばれ、空気より軽いヘリウムガスを詰める気嚢(きのう)はとても大きく、全長は65m。数か月は滞空できるという。
HAPSが低軌道衛星通信と比べて優れているのは、通信の遅延が短いことだ。低軌道衛星通信では20~40ミリ秒の遅延が発生するが、HAPSでは約1ミリ秒と、地上の通信ネットワークと遜色がない。そのうえ、地球から20km程度の成層圏から、Sceyeによって電波が「降り注ぐ」ようなスタイルになる。地上から電波を発信するよりも見通しがよくなるため、空中のドローンや空飛ぶクルマとの通信もしやすくなるのだ。
Sceyeは災害時における安定した通信サービスの提供対策として、2026年から日本でプレ商用が開始する予定だ。
KDDI

能登半島地震は2024年1月に発生したが、復興に向けてドローンの活用が進んでいる。KDDIは2024年12月、能登半島内のコンビニ・ローソン七尾小島町店に設置したドローンポートから、自律飛行可能なドローン「Skydio X10」を飛行させ、行方不明者の捜索などに使うような取り組みについて実証を行っている。
KDDIはブースにSkydio X10と、同機用のドローンポート、さらには自動運転技術の研究を行うティアフォーが開発する自動運転車両を展示した。担当者によれば、これにはコンビニを空・陸のモビリティのハブとして活用するコンセプトを示すねらいがあるという。
ドローンに関しては自動航行に関する実証を進めています。自動運転についても検証し、将来的には、NICT(情報通信研究機構)が開発するプラットフォームで、ドローン・自動運転車両いずれも運行状況を確認できるような態勢を取れるようにしたいと考えていいます。また、今後は自動運転車両からドローンが飛び立ち、ミッションをこなすようなユースケースも生まれるのではと考えています。そういった取り組みのハブとして、広い駐車場を持つコンビニを活用できると検討しています。
今後はこのような取り組みが有効なユースケースについて検証を進めていきたい考えだ。
ジェイテクト

愛知県の自動車部品メーカー・ジェイテクトは、自動車の操舵系の技術を得意としている。すなわちドライバーがハンドルを操作した力をセンシングし、適切なトルクを発揮させるようなステアリングシステムなどだ。この技術をドローンの姿勢制御に活かすことをねらい、フライトコントローラーを開発している。担当者は取り組みについて説明する。
ドローンがホバリング時に傾きが生じた場合、各部を調整して適切な姿勢に戻すという動きが必要です。これはステアリングの考え方に非常に近しく、自動車で培っているハード関係の作り込みだったり、センサーのノイズ除去の使い方だったりといった点で、我々が価値を提供できると考えています。
愛知県ではエアモビリティ産業を振興するプロジェクト「空と道がつながる愛知モデル2030」を実施しており、ジェイテクトも参画する。ドローンの使い方やそれを実現するための生産方法といった議論を行っており、スタートアップや地元企業と連携・補完しあいながら、今後もドローン事業に取り組む考えだ。


徳島大学発のベンチャーであるTSUNAGIが開発する「飛べる自動車 D-2」が出展された。地上走行時は4輪を使用。発災時、行けるところまでは陸路をたどり、道路が使用できなければ飛行するという運用を想定する。

飛行時はタイヤが地面に対して並行になり、タイヤに取り付けられたプロペラが回転し、クアッドコプターと同じように姿勢制御を行う。揚力は車体底部に取り付けたローターで発生させるという。

Hondaはラストワンマイルの移動に利用する電動スケートボードのコンセプトモデルを展示した。

SkyDriveに出資するスズキは搬送などに使用できる4輪タイプのロボット「MITRAコンセプト」を出展。球体ドローン「ERIOS 3」を販売するブルーイノベーションともMITRAで協業しているが、今回はセブンイレブンの配送ロボットなど、各社で使用されたロボットが展示された。

スズキのブースでは四脚のモビリティ「MOQBA(モクバ)2」も見られた。配送用など様々な仕様に改造できるという。

トヨタは4足で歩行するモビリティ「walk me」や、2輪モビリティ「boost me」を展示。
大阪・関西万博で空飛ぶクルマの認知度が一気に上がったことから、今回のモビリティショーではエアモビリティの出展も増加するのではと予想していた。蓋を開けてみると、実際にはやや控えめな印象だ。それでも数年後に迫った空飛ぶクルマの社会実装に向け機運を高めるSkyDriveによる鉄道とのコラボブースや、コンビニにドローンを組み込み社会インフラ化しようとするKDDIの取り組みなど、エアモビリティの最先端を感じ取ることができる催しだった。次回のモビリティショーでは、デビューを果たした空飛ぶクルマが主役に抜擢されることを期待したい。