開催のねらい――ザワつきを解きほぐして誇れる産業へ
安全保障環境の緊迫化を受け、日本は防衛力の抜本的強化と、それを支える産業基盤・技術基盤の再構築を迫られている。防衛装備庁が中小企業やスタートアップの新規参入を後押しし、ドローンが経済安全保障推進法の「特定重要物資」に指定されるなど、民生技術を防衛分野へ取り込む流れは加速している。
防衛産業への参入は、機微情報の扱い、品質保証、長期にわたる調達サイクルなど、従来のものづくりとは異なる論理を要する。さらに、防衛に関わること自体が世論や取引先、採用にどう受け止められるかというレピュテーション(評判)リスクも、参入をためらわせる無視できない要因だ。個社が単独で越えるには壁が高く、技術力を持つ地域企業ほど二の足を踏みやすい。
SAMURAI防衛協議会がねらうのは、ザワつきを解きほぐして誇れる産業へと育てることだ。製造業を核としながら、金融、行政、大学、VC、監査法人までを一つのテーブルに集め、技術・資金・制度・人材を結び付けるプラットフォームを目指す。
当日のプログラム――来賓挨拶、キーノートから鼎談、Q&Aまで

プログラムはオープニングに続き、キーノートスピーチ、鼎談、Q&A、クロージングという流れで進み、閉会後には名刺交換会・ネットワーキングが設けられた。
開会にあたっては、会場のあるSTATION Aiを選挙区に含む愛知3区(名古屋市昭和・緑・天白区)選出の衆議院議員・水野良彦氏(自由民主党)が来賓として応援に駆けつけ、挨拶した。水野氏は相次ぐ自然災害にも触れ、「災害はもはや平時であり、防災でも安全保障でもドローンが果たす役割は大きい」と述べて、ドローン技術と国の安全保障の結びつきを強調。先人から受け継いだ社会をより良くして次世代へ引き継ぐのが政治の役割だとして、参加者とともに学びを深めたいと語った。

キーノートには、元防衛装備庁長官で朝日大学客員教授の土本英樹氏が登壇した。土本氏は2022年12月の安保三文書策定時に同庁長官を務め、利益が出ずに撤退する企業も相次いでいた防衛産業の実情を踏まえて、利益率の算定方式の見直しをはじめとする一連の施策を主導した当事者でもある。
講演では、その経験を土台に、防衛産業になお残る課題を三点に整理した。第一に、企業の自主研究が装備品の価格や利益に十分反映されていない利益率の問題。
第二に、いまなお"死の商人"といったレッレッテルがつきまとうレピュテーションの問題で、現行の安保三文書が「防衛産業は防衛力そのもの」と初めて位置づけた意義に触れつつ、ESG(環境・社会・ガバナンス)に防衛(Defense)のDを加えた「ESGD」として、より積極的に打ち出すべきだと提案した。
第三に、防衛産業の労働力の確保。自衛を上げた。官の採用が少子高齢化のなかで難しさを増す一方、同じく防衛力を支える防衛産業の人材確保については現行の安保三文書に施策が盛り込まれておらず、次の三文書で手当てが必要だと訴えた。
そのうえでドローンについては、民生と防衛の双方に生かすデュアルユースと、有事を見据えた「予備生産能力」の確保が、戦いを続ける力=継戦能力の鍵になると指摘。研究開発費を適正に価格へ反映する「開発コストと適正対価」のあり方や、「家族に堂々と語れる、誇れる仕事としての防衛産業」への意識転換の必要性など、持続可能な防衛ビジネスに向けた論点を提示した。

続く鼎談は、JUIDA参与の嶋本学氏が進行役を務め、株式会社Prodrone代表取締役社長 戸谷俊介氏、愛知県県会議員 政木りか氏の3名が登壇した。Dual-Useで、防衛装備の開発・生産に携わる戸谷氏と、市民の声を代弁する立場の政木氏。異なる視座が同じ議論の場に並んだ。
議論はまず、防衛を語るときに生じる"ザワつき"を言語化して、因数分解することから始まった。対処・迎撃・防護・センシングといった機能の境界が曖昧なこと、情報が十分に共有されないなかで倫理やレピュテーションをどう扱うか、そして現場と自治体との間に温度差があること。登壇者は、こうした漠然とした戸惑いを一つずつ言葉にしていった。
次に「供給控え/出資控え/ダンピング」の三つの側面から整理された。ひとつは、企業が参入や増産に踏み切れない「供給控え」。金融機関やベンチャーキャピタルが防衛関連への資金供給をためらう「出資控え」。そして、適正な対価が確保されないまま価格が下押しされる「ダンピング」である。
信頼性と継続性に見合う価格をどう設定し、参入時の実務上の課題をどう乗り越えるか——作り手・出し手・買い手の三者にまたがる課題として議論された。
また、民生と防衛の双方に技術を生かすデュアルユースの重要性についても語られた。「ドローンはの防衛装備のコメである」という発想のもと、平時は民生・輸出で開発と生産を回し、有事には迅速に防衛へ転用する。そうした産業基盤づくりが、収益性と継戦能力の両立につながるという視点である。
最後に、防衛産業の"応援団"をどう増やすかへと向かった。話は技術や制度だけでなく、採用の場や社内で事業の意義をどう語るか、地域・行政・有権者の理解をどう育てるか、さらにVC・町工場・大学がそれぞれの強みを持ち寄るエコシステムをいかに築くか、など、多岐に渡った。
特筆すべきは、これらの議論が特定の企業や業界に閉じることなく、オープンな場で交わされたことだ。製造業からドローン、スタートアップ、金融、行政、大学、そしてメディアまでが分け隔てなく席を並べ、防衛をタブー視せずに語り合う。SAMURAI防衛協議会は、そうした開かれた対話の場として運営されている。
参加者の顔ぶれ――10分野が結集した"多様性"
第1回の参加者は53名にのぼった。その内訳を見ると、製造業・ものづくり企業が最も多く全体の約28%を占め、次いでドローン業界が約17%、金融機関・VCが約15%と続く。さらにスタートアップ、商社、メディア、官公庁・自治体、監査法人・コンサル、大学・研究機関などが名を連ね、実に10の分野が一堂に会した。技術・資金・制度・人材という、参入に不可欠な要素がこの一枚に凝縮されている。

次回開催
第2回の開催は、2026年9月25日(金)17時からを予定している。回を重ねるなかで、具体的な事業連携をどこまで生み出せるかが、この試みの真価を問うことになる。同会は、主催・運営は「SAMURAI防衛協議会」が行っており、Prodroneが事務局を務めている。