映画『ベイマックス』を思わせるユニークな外観を持ちながら、時速60〜80kmで10時間以上の自律飛行が可能。インフラ点検や監視業務において、従来のヘリコプター運用コストを劇的に削減する革新的な機体だという。
数千キロメートルにも及ぶパイプラインの点検が必要になった場合、石油会社の社員であれ、環境破壊を防ごうとする監視員であれ、この広大なインフラをどう維持管理するかは極めて困難な課題だ。
広大な距離を徒歩や車で回ることは現実的ではない。では、有人飛行機を活用すべきだろうか。しかし、飛行機の導入には多額の製造・運用コストがかかるだけでなく、離着陸のために長く整備された滑走路も必要となる。ヘリコプターやVTOL(垂直離着陸機)であれば滑走路の問題は解決できるが、依然として高額な人件費や燃料費という壁が立ちはだかる。
そこで、コストを最小限に抑えつつ、最大限の効率を実現する「最適解」として浮上したのがドローンの活用だ。それも、ステルス爆撃機やハンググライダー、あるいは映画『ベイマックス』に登場するケア・ロボットを組み合わせたような外見を持つ、画期的な「空気で膨らむ固定翼ドローン」である。

なぜ、一般的な硬い機体を持つプロペラ式のVTOLドローンではいけないのか。Celeste Ecoflyersによれば、回転翼システムは「利便性のために航続距離を犠牲にしている」という。
さらに、同社の「dAS10」は膨らませる方式を採用しているため、平らに畳んだ状態で保管し、大人数のスタッフを介さず迅速に膨らませて展開できる。
同社は、数分単位ではなく、数時間単位の飛行が可能だと主張している。ただし、今年5月7日に行われた初飛行の映像では、浮上したのはわずか数秒間であった。
dAS10は、セレステ・エコフライヤーズの創設者兼CEOで、エンジニア、そしてULM(超軽量動力機)の飛行教官の資格も持つオリヴィエ・マネッテ氏の手によるものだ。彼は計算神経科学の博士号も取得している。
セレステのホームページによると、このドローンは時速60〜80kmの巡航速度で10時間以上の自律飛行が可能であり、最大5kgのペイロード(積載物)を運ぶことができる。低高度の監視や中継に効果的だという。初期の商用テスト運用は、2026年第4四半期に予定されている。
マネッテ氏がdAS10で目指すのは、「航空運用をより安全に、より手頃に、そして大幅に持続可能にすること」だという。そのため、セレステ・エコフライヤーズは最初の顧客としてインフラ事業者を求めている。パイプラインや電力網の運営者が航空点検を行う場合、dAS10はコストを抑えつつ効率を高めるとセレステは主張する。
将来的には、物流事業者や、地上インフラが限られた海域の監視員なども顧客候補に挙がっている。

セレステ・エアのウェブサイトによれば、ヘリコプターによるパイプライン点検の相場は1時間あたり2,500ドル(約40万円)で、これにはパイロット代や燃料代、給油によるロス時間は含まれていない。また、悪天候やパイロット不足により、飛行の最大25%がキャンセルされるという制限もある。新しいアプローチが必要な時期が来ているのは明らかだ。
dAS10は膨らませる構造のため、一般の人は小型の飛行船(ブリンプ)と見間違えるかもしれない。しかし、同社はそのような表現を明確に否定している。DefenceBlog.comによると、同社は次のようにコメントしている。
「セレステは飛行船ではない。固定翼機だ。浮力ではなく、空気力学的な揚力で飛ぶ。空気式なのは翼の構造自体だ。硬い外装や桁(スパー)の代わりに、加圧されたテキスタイル製のエンベロープ(外皮)を採用している。これにより、展開や現場での修理が可能になり、8メートルのプラットフォームとしては珍しいレーダー反射特性を持つことになる」

固定翼ドローン自体は珍しくないが、セレステ・エコフライヤーズのシステムは、乗員費やコンプライアンスコストの増大、長距離自律飛行を許可する欧州の新しい規制、そして空気式構造材料の向上といった、近年の要素が重なり合って誕生した。同社のウェブサイトが言うように、5年前にはこのような条件は存在しなかった。今、それらが揃ったことで、セレステ・エコフライヤーズはドローン産業における成功という目的地へ向け、独自のフライトプランを着実に描きつつある。