本技術は、見通し外かつ携帯電話圏外の山中などでの設備点検、捜索、災害調査など、レベル3飛行(無人地帯上空での補助者ありでの目視外飛行)以上でのドローン活用の拡大に役立つことが期待されるという。
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背景
設備点検・捜索・災害調査・物流・測量・警備など幅広い分野でのドローンの活用が進んでおり、更なる普及とビジネスの拡大に向け、国による制度整備・規制緩和も進められている。
しかし、目視外飛行は、常に操縦者とドローンの間で無線通信がつながっていることが前提となっており、現状、携帯電話圏内での運用か、海外の衛星通信システムを搭載するしか方法はなく、ドローン活用のニーズが高い山中などでは安全に飛行できるエリアが非常に限られているという問題があったという。
今回の成果
NICTではこれまで、見通し外を飛行するドローンに対し、中継用ドローンを経由して、従来使用されてきた電波に比べて遠くに飛ばすことができる169MHz帯電波で通信接続するマルチホップ中継制御通信技術(コマンドホッパー)の開発を進めてきた(図1参照)。
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今回の実証実験は、山中の砂防堰堤の点検を想定した片道約3.9kmの経路で、見通し外かつ携帯電話圏外の屈曲した沢筋でコマンドホッパーを初めて使用し、全飛行経路において安全にドローンを制御・監視することに成功した。
実証実験の詳細
今回の実証実験は、山形県の月山山麓の立谷沢川沿いにて行いました。途中3か所の砂防堰堤と1か所のダム施設の映像を撮影しながら、対地高度約100mを維持して上流に向かって図2に示す経路に沿って点検用のドローンを飛行させ、全ての撮影対象を通過後、安全に着陸させた。
この経路では、中間点付近から先は、沢の屈曲により、ドローンを離陸させた場所にある地上局からの見通しは効かなくなり(図3、図4参照)、従来使用されてきた電波(2.4GHz帯)では通信が途切れる状況だ。
このため、飛行経路の途中、地上局から約1.8km上流の河床からの高度約120mの地点に、中継用ドローンをホバリングさせ、これによる通信中継で、地上局から点検用ドローンへの制御信号送信と、その逆方向の位置情報受信の双方向通信を維持した。
実験の結果、離陸点を離陸してから、地上局からの見通しが全く効かない着陸点上空までの全飛行経路で無線通信を途切れることなく維持することができ、点検用ドローンを安全に飛行させることに成功した。飛行経路におけるホップ数は、図5に示すように、着陸点上空までの全飛行経路でホップ数2を維持し、安定して通信できていることを確認した。
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本実験では、特にドローンに搭載する169MHz帯のアンテナに改良した。従来の方法では、4分の1波長の長さのモノポールアンテナをドローンの中心胴体上に設置するのみだったが、この方法では、カーボン素材で構成されたドローンの胴体やプロペラアーム、脚部等の影響を受け、必ずしも良好な電波放射特性が得られず、ドローンの構造や向きによっては通信距離が想定より短くなるという問題があった。
これを改善するため、点検用ドローンと中継用ドローンの搭載アンテナにそれぞれ2本の地線(ラジアルとも呼ばれる。図6参照)を追加。その結果、図5に示した長距離で安定した中継用ドローン経由のホップ数2の通信特性を得ることができ、地上局から見通し外となるエリアにおいて、図7に示すような砂防堰堤の映像を安全にカメラのメモリ—に保存し、取得することができた。
本技術を用いて中継用ドローンを適切な高度でホバリングさせることによって、点検用ドローンとの通信エリアを拡大できるため、点検対象である砂防堰堤に、点検用ドローンを接近させて撮影することが可能になった。図8は、その時に中継用ドローン経由で地上局にて受信された点検用ドローンの位置情報等を表示する監視制御画面の一例を示している。
今後の展望
今回の実証では片道約3.9kmまでの山中での飛行だが、169MHz帯電波は更に長距離で通信できるポテンシャルを持っているため、山中のみならず、海上や災害現場での設備点検、捜索、災害調査、物流などにおけるドローンの実用化を目指しますという。
今後は、更にシステムの信頼性を高め、より長距離かつ見通し外での運用実績を蓄積して、レベル3以上の飛行運用の普及に貢献していくとしている。
今回の成果は、国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所が提供する場所において、株式会社建設技術研究所の協力によるものだ。