ElevationSpaceが開発したELS-Rは、無人小型衛星を使って、宇宙環境を利用した実証・実験を行うことができる宇宙環境利用・回収プラットフォーム。
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同社は、宇宙実証ニーズの高まりを受け、サービス提供の本格開始を2年早め、より大型のサービス機(以下:2号機)を2026年に打ち上げることを決定し、宇宙環境を利用した実証・実験を希望するペイロードの募集を開始する。
今後も、2023年6月13日に正式決定した国の「宇宙基本計画」「宇宙安全保障構想」を踏まえ、宇宙での実証機会提供によって民間事業者等の更なる宇宙産業参入を促進し、宇宙の安全保障や産業力強化に貢献できるよう、研究開発やパートナー企業との協業、業界啓発のためのセミナー開催などを行っていくとしている。
背景
2023年6月、政府は国の宇宙政策の今後10年の基本方針を示す新たな「宇宙基本計画」と、宇宙分野の安全保障に関する指針となる「宇宙安全保障構想」を決定した。
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これらの政策の中では、宇宙の安全保障や宇宙産業の競争力強化のために、官民が連携した宇宙利用・開発を推進していく必要性や、非宇宙産業を含めた民間事業者の更なる参画が重要であることが言及されている。
一方、日本が強みを持つ自動車部品や電子部品などを宇宙転用するためには、宇宙特有の放射線、真空や熱といった環境に耐えられるか確認する必要があるが、宇宙環境で性能を試験する機会が限られていることが、民生技術の宇宙転用が進まない障壁になっており、宇宙基本計画の中でも課題として挙げられている。
このような問題を解決するため、ElevationSpaceでは、企業や政府機関等からの依頼を受けて宇宙での性能試験や実証を無人の小型衛星で行い、実験成果を地球に持ち帰りお客様のもとに返すサービス「ELS-R」を展開し、2025年に初号機を打ち上げることを予定している。
ELS-Rは、現在宇宙環境を利用した様々な実験が行われている国際宇宙ステーション(ISS)に比べ、高頻度に利用できる点、実証・実験内容の自由度を高く設定できる点、計画から実証・実験までのリードタイムを短くできる点が特徴だという。また、ISSが2030年末に運用を終了した後も、宇宙環境利用の空白期間を作らずにサービスを提供できるため、宇宙産業の競争力強化への寄与が期待できるとしている。
今回、ELS-Rの初号機へのペイロード搭載が積載可能量の上限に到達し「完売」となったことを受け、当初の構想より2年早い2026年に2号機を打ち上げることとし、宇宙転用を目指す民生技術・地上製品など、宇宙環境を利用した実証・実験を希望するペイロードの募集を開始することになった。
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初号機に搭載予定のペイロードと、実施予定の実験・実証について
2025年に打ち上げ予定の初号機は技術実証機であり、人工衛星の開発技術に加え、世界でも民間企業が成功させたことのない"宇宙に打ち上げた小型衛星を制御して地球に帰還させる"ことを実現するための「軌道離脱」「大気圏再突入」「回収」といった技術の実証を目的としている。
しかし、この初号機に対して同社の想定を上回るペイロード搭載希望があり、その搭載量が積載可能上限に到達したため「完売」となった。初号機では、以下のような実験・実証を予定している。(順不同、敬称略)
株式会社IDDK | ワンチップ顕微観察技術を用い、小型人工衛星内での微生物・細胞の培養状況センシング、顕微観察画像取得を可能とする小型バイオ実験環境を実証する。 |
株式会社ユーグレナ | 微細藻類ユーグレナの宇宙空間での培養により、宇宙の環境が生物に与える影響を調べ、それを生きた状態で地球に持ち帰る。国産宇宙機による生きた状態での生物回収は日本初の試み。 |
その他、企業名・実証内容非公表の案件として、宇宙機用小型推進システム、宇宙転用を目指す車載コンポーネントなどの実証を行う予定。
サービス機となる2号機の打ち上げ前倒しについて
初号機に対して想定を上回るニーズがあったことや、より早い時期に宇宙環境での実証・実験を行いたいというニーズが顕在化したことを受け、2028年の打ち上げを構想していた2号機の規模を変更した上で、打ち上げ時期を2年早め、2026年に打ち上げることを決定した。
2号機についても、すでに宇宙機部品や宇宙転用を目指す高性能素材の宇宙実証、エンターテインメント利用などを希望する企業と、搭載可能性に関する連携を始めてるという。
今後も、宇宙実証機会の提供によって民間事業者の更なる宇宙産業参入を促進し、宇宙の安全保障や産業力強化に貢献できるよう、研究開発およびパートナー企業との協業を進めていく方針。
宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」概要
無重力環境を活かした実証や実験を、無人の小型衛星を使って行い、それを地球に帰還させて顧客のもとに返すサービス。
現在基礎科学的な実験から産業利用まで幅広く利用されている国際宇宙ステーション(ISS)は、構造寿命などの関係から2030年末に運用終了が決定しており、その後宇宙利用を行う場所が無くなると考えられている。
また、宇宙の安全保障や宇宙産業競争力強化のためには、更なる民間事業者の宇宙産業参入が不可欠だが、宇宙環境で製品や技術の性能を試験する機会が限られているために民生技術の宇宙転用が進まないという課題がある。
これらの問題を解決するため、「ELS-R」は開発されたという。国際宇宙ステーション(ISS)に比べ、高頻度に利用できる点、実証・実験内容の自由度を高く設定できる点、計画から実証・実験までのリードタイムを短くできる点が特徴だ。また、ISSが2030年末に運用を終了した後も、宇宙環境利用の空白期間を作らずにサービスを提供できるため、宇宙産業の競争力強化に寄与することが期待できるとしている。