ZF Groupは、CES 2023において「Next Generation Mobility NOW」の実現に向けた革新的技術の大幅な前進を見せると発表した。電動モビリティ、自動輸送、ソフトウェア・デファインド・ビークルの世界的な普及を加速させるため様々な開発が行われているという。
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ZF GroupのCEOであるホルガー・クライン博士は次のようにコメントしている。
クライン博士:ZFは、持続可能なモビリティに貢献し、世界の脱炭素化を推進する革新的なテクノロジーを提供します。当社は高度な高性能コントローラー、インテリジェントセンサー、スマート・アクチュエーター、コネクティビティおよびクラウドソリューション、そして最先端のソフトウェアと機能に基づく総合的な車両システムでお客様を万全な状態でサポートします。
また、自律輸送システムのフルレンジプロバイダーとして、さらにその先のクリーンで安全な市場が求める公共交通ソリューションを実現するエコシステムを提供することができます。
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「ZF ProAI」高性能コンピュータ、マルチドメインバージョンでさらに限界を超える
新しいマルチドメイン対応型の「ZF ProAI」高性能コンピューターは、別々のボード上のドメインベースのADAS、インフォテインメント、またはシャシー機能を1つのデバイスでサポートできるという。これは複数のサプライヤーによるシステムオンチップ構成も含む。ADAS機能用QNXやインフォテインメント用のAndroid Autoなど、複数のオペレーティングシステムを並行して処理することもでき、特定のマイクロプロセッサー上で開発・実装されたソフトウェアスタックを、マルチドメイン構造で引き継ぐことができるのも大きなメリットだとしている。
これに対応するため、ZFは全体的な処理性能を高め、前ハイエンドモデルから50%増の最大1,500 TOPSを達成。同時に、新しいマルチドメインバージョン「ZF ProAI」は、12x6x2インチのコンパクトなパッケージを維持しながら、ワットあたり5 TOPSという優れたエネルギー効率を提供するという。マルチドメイン「ZF ProAI」は、早ければ2025年に新車プラットフォームの30~40%がドメインベース化されるという同社の予想を裏付けているとしている。
高性能コンピューター「ZF ProAI」ポートフォリオは完全に工業化され、市場投入の準備が整っているという。すでに1,400万台以上を受注し、さらなる受注増加が見込まれているとしている。2024年から開始予定の強力なスーパーコンピュータの量産は、将来の車両コンセプトの重要な構成要素を短期間で開発し、スケールアップするZFの戦略と能力を示した。
省エネ化を目指した接触型ヒーター「ZFヒートベルト」
CES 2023で、ZFは車内暖房の省エネにつながるスマートなアイデア「ZFヒートベルト」をさらに世界初公開する。この接触型ヒーターは、編み込まれたワイヤーを介して体の前面を暖め、わずか70ワットのエネルギーで最大表面温度、摂氏40°/華氏104°を実現する。取り付けは簡単で、ベルトリトラクターやプリテンショナーの調整は不要だという。「ZFヒートベルト」をシートヒーターやステアリングホイールヒーターなどの他の接触型ヒーターと組み合わせることで、車内の暖房を低く設定でき、寒冷下での電気自動車の航続距離を最大15%延伸できるという。
次世代レベル4シャトルを世界初公開、多様な動作環境に対応するモジュールソリューション
CES 2023で発表するZFの次世代シャトルは、SAE(自動車技術者協会)が定義するレベル4の自律運転が可能であり、現地の法制度が許す限り、多様な交通状況下をセーフティスチュワードなしで走行できる。これにより、ZFは人口密集地域において、分離または専用のシャトルレーンを必要としない自律輸送システムの運用を可能にし、脱炭素化に大きく貢献するという。
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「ZF ProAI」を中核とするZFの包括的な自律運転システムに統合されているのが、パフォーマンスパスとセーフティパスの2つの主要部分で構成されているVirtual Driverソフトウェアスタックだ。この2つを組み合わせることで、レベル4シャトルやその他の輸送機関の安全で信頼性の高い運用が可能になるという。
セーフティパスは、安全面における全体の状況を監視し、パフォーマンスパスのための仮想ガードレールを定義し、必要に応じて介入することで、危機的な状況を緩和する。一方、パフォーマンスパスは複雑なシナリオでのスムーズな走行を可能にするという。ZFは、商用自律運転ソフトウェアの世界的リーダーであるOxbotica社と共同でこれを開発した。
新しいレベル4対応の多様な交通状況用シャトル車両は、完全にモジュール化された内装設計を採用しており、ユーザーのニーズに合わせて調整可能だという。これは、拡大中のZFポートフォリオに現在のシャトルモデルと並んで加わるもので、分離または専用レーンのZF ATSエコシステムにすでに組み込まれている。このシャトルの最新モデルは、最近ロッテルダム(オランダ)のRiviumビジネスパークで運用が開始された。
Beep社と提携し、米国市場向けに新世代シャトルを搭載した自律輸送システム(ATS)エコシステムを提供
ZFは、米国のモビリティサービスプロバイダーBeep社と、米国における顧客プロジェクト向けのレベル4 ATSを開発および展開する契約を締結した。この契約には、数千台のレベル4シャトル車を米国で展開する計画が含まれている。
Beep社のCEOであるJoe Moye氏はCES 2023でのZFプレスカンファレンスで、次のようにコメントしている。
Moye氏:ZFとはモビリティに関する共通のビジョンを持っており、同社の次世代シャトルを当社のターンキーモビリティネットワークソリューションの一部として米国市場で提供するため、同社と提携できることを嬉しく思っています。この車両は、安全で効率的なシェア型自律輸送により、モビリティの公平性を拡大し、二酸化炭素排出量を削減するというビジョンを追求し続ける中で、ユースケースを拡大し、高まる顧客の需要に対応するものです。
E2Eソフトウェアベースの機能および統合システムのすべての主要コンポーネントをスケールアップ
2008年以降に生産され、CO 2排出量の削減に大きく貢献した200万台以上の電気モーターに加え、将来の車両コンセプトを早期に実現するためには、スマートコンポーネントや統合ハードウェア/ソフトウェアシステムの急速なスケールアップが不可欠だとしている。中国を含むすべての主要地域で今年発売されるスマートセンサーおよびアクチュエータは量産契約により、販売が伸びている。ZFのスマートカメラ4.8などの革新的なカメラシステムは、すでに販売台数5000万台を突破し、2022年だけで1000万台が生産されたという。
同様に、完全自動化されたバイワイヤ車両制御用のスマートアクチュエーターの販売も伸びている。複数の自動車メーカーとの量産契約は、今後数年以内にすべての主要地域で開始される予定だという。
総合的なアプローチの一環として、ZFは高性能コネクティビティプラットフォーム「ZF ProConnect」で、顧客がクラウドベースの情報とデータ共有を活用できるよう支援している。モジュラーハードウェアとカスタマイズ可能なソフトウェアを備えた高度なコネクティビティモジュールとして、最新の車載・車外通信技術を搭載し、理論的にはあらゆる車種に対応するとしている。
ZFは、OEMが個々のシステムアーキテクチャに統合できるスタンドアローン型ソフトウェア製品も提供している。この製品カテゴリは、インテリジェントセンサー、スマートアクチュエーター、コネクティビティおよびコンピューティングモジュールのフルラインアップを補完し、いずれもダイナミックな成長を遂げているという。
その一例が、2022年に大手自動車メーカーとシリーズ生産を開始した「ZF cubiX」ビークルモーションコントロールだ。スマートコントロールソフトウェアは、制御アルゴリズムでシャシーのアクティブおよびセミアクティブアクチュエーターを連動・調整し、快適性、ダイナミックハンドリング、安全性を高める新機能を実現するとしている。