カリフォルニア大学バークレー校のMechanical EngineeringプログラムにはSenior Capstone Designコースがあり、毎年4年生は指定された問題を機械工学で解決するという課題を与えられる。2016年の春学期は「Team SkyBison」という名の6人チームに、DJI Matrice 100の飛行時間を無限にせよ、という課題が与えられた。
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DJIはカリフォルニア大学と組み、UAV技術をカリキュラムに導入できることを嬉しく思っているという。DJIのエンジニアリング部門の副代表であるDarren Liccardo氏は次のようにコメントしている。
Darren Liccardo氏:教育へのサポートは、DJIにとって次世代のイノベーターを育てるということだ。私は、新たな飛行ロボットのアプリケーションに繋がるようなチャレンジングな課題を学生たちに与えたかった。
DJI Matrice 100(以下:M100)はDJI SDKで制御可能な、カスタマイズが行える開発者向けの飛行プラットフォーム。通常の最大飛行時間は、二つのバッテリーを用いて40分。より長時間の飛行を行うことで、移動可能な電波塔のごとく一時的なデータ通信として使用可能となる。学生チームは、理論上M100が無限に飛行できるソリューションを考えることとなった。要求された仕様は以下の通り。
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- 何らかの物理的接続を介した上で、M100クアッドコプターの無限なホバリング
- 地上から100フィート(約30メートル)以上離れること
- 接続ケーブルの自動巻き取り
- ピークの電力使用から50Wのバッファを設けること(アクセサリー使用のため)
- 予備バッテリーを外すこと
Team SkyBisonのメンバーであるJustin Wang氏とGrace Alexander氏にどのようなプロセスを経てソリューションの提案を行ったのかを聞いた。
――ソリューションの提案にあたって、最も苦労した点は?
このプロジェクトの主なチャレンジは、質量を減らすことと物理的接続を介するということでした。M100の積載量は決まっているため、追加で載せるものは全て軽量である必要がありました。接続ケーブルの自動巻き取りは最低でも100フィート必要で、プロペラ等にひっかからないようにする必要もありました。
――どのようなソリューションを提案したのでしょう?
Team SkyBisonは、パワーシステムと巻き取りシステムを担当する二つのチームに別れました。各チームがそれぞれテストを行い、最終的にそれを組み合わせることにしました。
電源については、地上からドローンまでACで提供することにしました。ACを選んだのは、より電圧を上げるのが簡単だからです。電圧を上げることでパワーロスを減らし、接続ケーブルを細くすることもできました。そこで変圧器を使って110VACから220VACへ変換しました。
更にTDK-Lambda PFE1000Fを使って、220VACをボード上で24DCへ変換しました。接続ケーブルは三本の22AWGワイヤーを使って、120フィート(約37メートル)を5cmごとに熱収縮チューブでまとめました。ケーブルの総重量は540グラムになりました。
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全ての配線が整ってから、プロペラを付けずにM100に電気を通しました。そこで、無事電源を付けモーターを回すことができました。またその際の電源の温度も測定し、追加したファンが必要だということも分かりました。
M100の下降時、ケーブルの巻き取りシステムには二つの定力バネを用いました。バネと巻き取りシステムのトルクを抑えるために、16:1の歯車減速機も二つの間に使いました。こうすることで、120フィート分のケーブルをリリースしつつもバネへの負荷を抑えることができました。歯車はレーザーカッターとアクリル材で自作し、ベニヤで作られたハウジングの中に納めました。
電源システムと巻き取りシステムがそれぞれ動くことを確認してから、組み合わせてテストしました。その後テスト飛行を行い、電源部分の熱やケーブルにかかるテンション等を測定しました。アクセサリーを追加しても大丈夫なことを証明するために、強力なLEDスポットライトも搭載しました。半日テストを繰り返し、我々のプロトタイプが全ての仕様を満たしているという自信を持つことができました。
――今後の展望は?
ケーブル接続と無限の飛行時間を持つドローンは多くの可能性を秘めています。一時的なWi-Fiタワーや電波塔として使えたり、スピーカーをマウントしたり、灯台として使ったり小さな天気測定ステーションとして使ったりすることができます。バッテリー駆動時間等に左右されずに、長い時間サーベイを行うこともできます。またケーブルを介すことで救出活動にも使え、スポーツやコンサートの中継にも使うことができます。