人口集中地区(DID)上空でのドローン飛行は、飛行経路下の立ち入り管理措置をはじめ、航空法により制限されている。特に、最大離陸重量25kg以上の大型機については、より厳しい審査基準が設けられており、今回は珍しい事例だとしている。
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飛行の目的
鉄塔の建て替え工事に伴い、新設された鉄塔と既存の鉄塔の間に高圧電線を架線するためのパイロットロープの設置。旧鉄塔が建設された昭和58年(1983年)以降、宅地化が進み、高所作業車を用いた地上からの架線工事が困難なため、ドローンを使用した架線が選択された。
現地地図
飛行概要
架線業務では、高圧送電線の鉄塔間に電線を渡すために、まず細い延線ロープ(パイロットロープ)を架線し、徐々に太いロープに交換していき、最終的に送電用の電線に差し替える。今回は、このパイロットロープの架線にドローンを活用した。
径間A
新設鉄塔直下から離陸し、105m離れた既存鉄塔最上部にいる作業員がパイロットロープをドローンに接続。再び新設鉄塔まで牽引し、最上部の作業員に受け渡した。飛行ルートの直下には住宅地が広がっているという。
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径間B
新設鉄塔直下から離陸し、鉄塔最上部の作業員によりパイロットロープを接続。363m離れた既存鉄塔まで牽引し、作業員に受け渡した。飛行ルートの下には小学校と住宅地が含まれている。
使用機体「DJI FlyCart 30」
延線業務に使用されたドローン「DJI FlyCart 30」は、2024年1月に発売された機体で、最大積載量は40kg、最大18分(重量負荷30 kg/デュアルバッテリー使用時)の飛行が可能だ。
各種センサーにより、重い荷物を搭載しても安定した飛行が可能で、万が一の墜落に備えてパラシュート装置を搭載。これにより住宅地での飛行が可能と判断され、今回の架線業務に採用された。
DJI FlyCart30(ウインチモード)
サイズ | 2800×3085×947 mm(長さ×幅×高さ) |
最大飛行時間 | 18分(重量負荷30 kg/デュアルバッテリー使用時) |
搭載重量 | 40kg(シングルバッテリー)/30kg(デュアルバッテリー) |
動作環境温度 | -20~45°C |
安全性能
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保護等級IP55および耐腐食性 /レーダー/両眼ビジョンシステム/インテリジェント障害物検知/デュアルバッテリー/非常用パラシュート
ドローン架線・延線のメリット
高所作業車を使って地上の障害物を避けながら架線業務を行うのが難しい場合、従来はヘリコプターによる架線か、ペットボトルロケットや小型ドローンで細いリード線をパイロットロープとして架線し、ラインを徐々に太くする方法が一般的だ。
大型ドローンの活用により、断線しにくい丈夫なロープを使用することで、後工程の作業を大幅に短縮できる。
当日の様子
径間Aの作業では、離着陸地点からドローンが105m先の鉄塔に飛行し、延線用ロープを機体に接続。その後、再び105m飛行し、新設鉄塔に延線ロープを届けた。輸送に要した時間は約4分、離陸から着陸までの作業時間は約10分で、従来の高所作業車を使用した作業に比べ、大幅な時間削減が実現した。
径間Bの作業では、新設鉄塔から延線ロープを接続後、363m先の鉄塔に飛行。飛行経路には小学校の校庭(その間、児童は校庭に出ないよう依頼済み)、および複数の道路を含むため、技術力の高い操縦者と補助者による連携で繊細な飛行した。作業時間は径間Aよりも長くなったが、全体で15分程度に収まったという。
今回の作業により、ドローンを活用した架線業務の効率性と、住宅が密集する地域でも安全に作業できる可能性が確認された。ロジクトロンでは今後も大型物資運搬ドローンを活用し、延線業務や山岳・丘陵地での物資輸送などに取り組むとしている。