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「The Guardian」は、数十年以内に確実に起きるとされる南海トラフ地震や日本・千島海溝型地震による巨大津波、さらには激甚化する一方の豪雨災害に対する備えとして、自治体向けに構築する住民のスマホを対象にした精密避難支援システムだ。
観測衛星が捉える各種データと雨天時にもエンジンで長時間飛行し続ける独自開発の産業用無人航空機が巧みに連携し、巨大地震発生時には海岸線上空からの長時間ライブ中継を、河川氾濫の恐れがあるときはピンポイントで浸水被害を数十時間前に予測し、住民のいち早い避難行動を促すという。
同社は現在、来年春の竣工を目指し、次世代の研究開発製造の中核拠点となる「福島RDMセンター」を福島県浪江町「南産業団地」に建設している。イノベーションの力で震災からの復興を目指す浪江町と同社は、21年4月に本システムの実用化に向けて連携協定を締結し開発に着手した。24年春にも浪江町を流れる請戸川河口付近においてシステム一式の初号機「Episode 1:NAMIE」を社会実装する。
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開発には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の衛星データ処理を担う一般財団法人リモートセンシング技術センター(RESTEC)、エンジンドローン開発のアラセ・アイザワ・アエロスパシアル(AAA)のほか、ドローンの自律航行やピンポイントの浸水被害予測のデータ処理基盤となるSYNCWORLDエンジンを開発するため、ひとのデジタルクローン技術で世界をリードするオルツ、ゲーム開発のハニカムラボなど複数のエキスパートが参画しているという。
「The Guardian」は、5つの異なる技術を連携させて、個人の緊急避難や計画避難に資する防災用のデータ価値を生み出す取り組みであり、主に巨大地震が引き起こす津波と、ゲリラ的な豪雨による河川氾濫の二つを対象としている。
一定震度以上の地震が発生した場合、強風・降雨時でも飛行できる産業用無人航空機「G-1」(Engine Drone AZ-500)の500㏄エンジンが自動的に起動、耐震機能を備えたコンクリート製のドローンシェルター「G-2」(Autonomous Drone Shelter / ADS)から確実に飛び立ち、自律航行しながら連続5時間にわたって海岸の映像を上空からスマホにライブ中継する。報道ヘリや自衛隊のヘリが駆けつける前に、住民一人ひとりが「鷹の目」を持つことになり、非常事態において適切な避難行動を促すという。
一方で「The Guardian」は、地球観測衛星「G-3」(EOS)によって河川幅の経時変化を「星の目」で常に捉え続けている。同期型の電子座標軸であるSYNCWORLD「G-5」は予め河川の堤体の詳細な地形データを含む対象エリア全域のデジタルツインを管理しており、これに最大51時間先の降雨量を1㎞メッシュで把握する気象観測衛星「G-4」(Meteorology Satellite)からの精密なデータを統合して解析することで、越水の時間を予測するのみならず、「あなたが今いる場所は、数十時間後に〇センチまで水に浸かる」という世界に例のないパーソナルな「水害未来予測」を提供できるようになる。
洪水警報が出ても避難をせず、突然の浸水によって命を失うというケースが増えているが、個々人に向けて発信されるパーソナルかつピンポイントの事前警報は、垂直避難を含む計画的な避難を住民に強く促すことになり、大切な家財を安全な場所に一時退避させるなど財産の保全にもつながるという。また自治体職員にとっては、災害時に行っていた危険な巡回業務をなくすことができ、避難誘導業務も大幅に軽減する。
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同社は浪江町を舞台に「The Guardian」の第一弾「Episode 1:NAMIE」を社会実装すると同時に、本システムの導入を隣接の自治体などに拡げながらネットワーク化を進めて行く考えだ。
日本の網の目のような水系と長大な海岸線が衛星の「星の目」で常時監視され、「鷹の目」を持つドローンが定期的に行き交う「水上のハイウェイ」へと進化し、新たな防災インフラとして定着することを目指して、本システム構築を進めていくとしている。