前作のDJI Avata(日本未発売)の発売から2年、待望の"技適付き"FPV完成機がDJIより2024年4月11日にリリースされた。普段より業務運用としてDJI製ドローンだけでなく、自作のFPVドローンを用いる筆者が様々な角度からDJI Avata 2の詳細解説を行う。
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DJI、DJI Avata 2、Goggles 3、RC Motion 3を発売開始。FPV飛行初心者でも、プロレベルのFPV飛行ができる
没入感を生む2.4GHzでの圧倒的な低遅延
DJI Avata 2をパッケージから開けてアクティベーションを行い、バインド作業をするとすぐにドローンは飛び立ち動画のRECが開始された。作業にするとわずか2分ほど。そして、飛ばし始めて一番最初に感じたのは…
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「あれ???遅延がない?」
日本で技適付きで発売されると知り、私が少なからず心配していたのが「映像受信の遅延」である。通常自作のFPVドローンは、コントロールは2.4GHz・映像の送受信には5.7GHzの周波数帯を使用することがほとんどだが、この理由の一つには映像のような大容量データを高速に遅延なく通信させる狙いもある。
しかし、このDJI Avata 2は、日本仕様においては2.4GHz縛りなので、遅延があると疑っていたのだが、想像以上の低レイテンシーで快適に操作ができたのが最初の驚きだ。
2.4GHzで技適有!初心者でもすぐにFPV飛行が可能に
上述したように、これまでのFPVドローンでは映像の送受信に5.7GHzの周波数帯を使用していた。そのため、趣味であれば4級アマチュア無線、業務であれば3級陸上特殊無線技士以上の資格がそれぞれ必要であり、加えて総務省へ使用する電波局の開局申請を行い、免状を取得する必要があった。
FPVドローンという、ドローンの中でもとてもニッチな使用用途に対する法律の整備が、十分でないのは理解できるものの、あまりにも導入のハードルが高いことが起因して、FPVの活用用途はこれまで限定的になっていた現状があった。
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しかし、今回のDJI Avata 2により大きな変化が起きる可能性がある。これまでに私達が見たことのない視点や角度、狭隘部分の移動などにより、ドローン業界だけでなく、他の業界へどのような変化をもたらすかを想像して読み進めてもらえば嬉しい。
突出した飛行安定性と高い効率性を持つFPV完成機
詳しくは動画でも解説しているが、DJI Avata 2の機体やゴーグルなどについても、はじめに触れておく。まず機体を持ってみるとわかるのが「軽さ」と「バランスの良さ」だ。私は前作の「DJI Avata(日本未発売)」も購入し海外で使用した経験があるが、持ち比べるとその違いがよくわかる。
重心位置が真ん中に位置していて、上下左右への偏りがほとんどない。高品質なFPVカメラも正中にあり、映像を見ながら飛行させるだけでなく、4K60fpsで映像記録することもずれるので操縦時との画角にも差異がない。
実際に飛ばしてみると、その軽さと安定性が際立つ。プロペラは3インチで、モーター規格はおそらく1407サイズほど。これまでの自作マイクロドローンと比べると大きく感じるものの、飛行した体感としてはかなり小さく感じるのではないだろうか。
これまで自作FPVドローンが抱えていた課題を次々と解決しているのも興味深い。底面のセンサーや後方にある魚眼レンズは、後方や下方との距離を見て安定させる役割もあるし、フレーム下部にある凹凸はヒートシンクの役割を担っていて、高温になり熱停止しやすいO4映像伝送ユニットの連続稼働時間を伸ばしている。
本テスト中に割と激しくクラッシュしたものの、フレームやカメラは全くの無傷であり、耐久性もかなり高いとこれまでのマイクロドローン経験が読み取れた。プロペラの交換にも工夫があり、わずか数秒で交換作業が行えるのも魅力的だ。
他社アクションカメラに引けを取らない高精細・高色調
DJI Avata 2は、1/1.3インチイメージセンサーを備えている。撮影した映像を見ると、見た瞬間に前作との違いがわかるくらい、解像感も色調の豊かさも変わっていると感じた。
カメラ設定において、D-Log M 10bitで撮れることに加え、ISO上限は25600、シャッタースピードの変化もfpsにかかわらず設定できるのも他社アクションカメラと比較しても良いポイントだ。なお、他社アクションカメラと同様に絞り値は変えられず、パンフォーカスである。
他社アクションカメラと比較して素晴らしいと感じた一つが低照度環境への対応だ。ISO6400まで上げても解像感が残りノイズリダクションをすれば素材として使える。FPVマイクロドローンの良さの一つである、「ワンカット映像」は、撮影環境の露出の変化が激しいため、カメラ側での露出変化やポスト処理での対応が必要になりやすい。
しかし、ワンカットであるがゆえに照明などを用いて対応することが困難になるし、シャッタースピードによる可変は描写を大きく変える可能性があるため、ISOの上限が広がることはとても助かるポイントだ(別売りでNDフィルターもある)。
自作FPVマイクロドローンとの違いは?
今後、FPV撮影目的で自作ドローンを始める人はほとんどいなくなるのではないかと思えるほど、今回のDJI Avata 2の機能性・カメラ品質・導入の容易さ・狭隘部における安定性は高い。
FPVドローンスクールやFPV講習の多くは、DJI Avata 2での運用に置き換わるのではないかと考えている。では、自作のFPVマイクロドローンは無くなるかと言われれば、それは少し異なると私は考えている。
DJI Avata 2の安定性は、当然だが各種センサー(GPS/気圧/赤外線/障害物用カメラセンサー)が付いていることに起因している。これらのセンサー類をあえて搭載しない自作のFPVドローンは操作難易度も格段に上がるし、製作も難しい。フライトコントローラーのチューニングも自ら行う必要があるので、覚えることも山積みだ。
逆に言えば、センサーがない分、より操縦者自身にシンクロする。機体が安定しないからこそできる映像表現もある。より動物的、より本能的に、空域を自由に移動できる自作ドローンにしか捉えることができない視点があると私は考えている。このDJI Avata 2を入口にして、自作のFPVドローンに踏み込む人も増えるのではないだろうか。
狭隘部分でどれくらい安定した飛行ができるのか?
話を再度DJI Avata 2に戻す。今回動画レビューでも紹介したが、狭隘部分の飛行も本製品であればいとも簡単にできてしまう。私が運営するFPVドローンラボ「YDL」は廃墟を活用したドローン実験施設だ。
メンバーの1人が水路調査を小型ドローンで調査撮影するにあたって用意していた高さ70cmx幅40cmx奥行き17mの段ボール通路があったので、DJI Avata 2を試しに飛行させてみた。
結果、一発で通過することができた。そして面白いのが、マンホールのように上部から水路に侵入するような軌跡も、カメラチルト機能を組み合わせることにより簡単に実現できたことだ。
当施設は廃墟でボロボロであるため天井も抜けている。これまで同じ場所で何度もマイクロドローンを飛行させている部屋もある。DJI Avata 2だと、上を向いたり下を向いたりといったことが、自在にできるので天井裏への入口をすぐに発見し、そのまま入って探索することができた。
この8年で500機以上のドローンをつくり、市販されている空撮機のほとんどすべてを飛行させてきた私ですら、初見で段ボール通路の通過と天井裏の侵入ができた時、子どものように「すげぇええ!!」と感動した。ちょっとしたテクノロジーの進化と応用でここまで世界が変わるのかととても驚いた。
まだまだあるDJI Avata 2のおすすめ機能
FPVが目視内飛行になるPiP機能!?
DJI Avata 2 Fly More コンボに含まれるDJI Goggles 3は、リアルビュー+PiP(ピクチャー・イン・ピクチャー)機能を搭載している。ゴーグルの外側についているカメラの映像が目の前のリアルビューを表示させることができる。そして、PiP機能を使うことでFPVビューにリアルビューを同時に視聴することができるのだ。
つまり、ゴーグルを外すことなく周囲の環境を確認することができるので、目視外飛行という日本の航空法の規制からも外れる飛行ができるはずだ。
ワンプッシュでできるアクロバティック飛行
他にもアクロバティックな回転技ができる「ワンプッシュフリップ」などトイドローンに搭載されていたような機能から、「ワンプッシュ 180°ドリフト」という高速ターンのような機能も搭載された。私はまだ使用できていないが、単に遊びでくるくる回るだけでなく、映像表現を組み合わせる使い方ができるのではないかと想像している。
モバイル端末へのワイヤレス映像伝送
DJI Fly アプリを接続した状態でDJI Goggle 3をUSB-Cで有線接続することでFPV映像をリアルタイムに視聴することができることに加え、有線接続をしないでもWi-Fi経由で無線接続してワイヤレス映像伝送ができるようになった。やや遅延があるものの、プレビューのしやすさや選択肢が広がった。
まだまだあるDJI Avata 2の機能や魅力は、ぜひ手にとって一度体感してみてほしい。
私のFPVドローンラボ「YDL」でもDJI Avata 2体験会やDJI Avata 2を使用したワンメイクドローンレースを開催していくので興味ある人は続報をお待ちください。