今回の実施実験の結果、点検用ドローンが飛行しながら、風車の位置や向き、ブレードの停止位置を自ら検出し、併せて波や風で揺れる風車ブレードを自動追従し、画像を撮影する完全自動点検のめどが立ったという。2024年2月までに完全自動点検完了を目指すとしている。
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これは、NEDOが助成するグリーンイノベーション基金事業「洋上風力発電の低コスト化」プロジェクトの一環によるものだ。
背景
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、再生可能エネルギーを最大限導入することが求められている。洋上風力発電は、大量導入やコスト低減が可能であり、経済波及効果も期待されることから、再生可能エネルギーの主力電源化実現の切り札とされる。
これまで欧州を中心に洋上風力発電の導入が拡大しているが、2050年に向けてはアジア市場の急成長が見込まれている。一方で、洋上風力発電の大量導入に当たり、コストの3割超を占める、運転保守、修理、監視、点検などメンテナンスの高度化を実現する技術開発が必要だ。
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特に、洋上での作業は、強風や波浪のある厳しい気象・海象条件の下で行われるため、洋上で安全に作業するための技術を習得した保守員が必要であるほか、アクセスに船が必要なため、陸上風車に比べて迅速な対応が難しいという課題がある。このような背景の下、NEDOは2022年度からグリーンイノベーション基金事業「洋上風力発電の低コスト化」プロジェクトで「洋上風力運転保守高度化事業」に取り組んでいる。
その一環として、東芝ESSは「遠隔化・自動化による運転保守高度化とデジタル技術による予防保全(以下、本事業)」と題し、今後建設が見込まれる浮体式洋上風力発電向けの技術として、ドローンによる風車外観点検の自動化、ロボットによるナセルの内部点検作業の遠隔化、センシングデータによる洋上風車の健全性分析サービスの開発など、保守・メンテナンスの低コスト化に向けた技術開発に取り組んでいる。
今回の成果
本事業のテーマの一つである「ドローンによる風車外観点検の自動化」で東芝ESSは、四国風力発電株式会社の僧都ウィンドシステムで実証試験を実施した。本実証では、点検用ドローンが飛行しながら、風車位置からナセルの向き、ブレードの静止位置を自ら検出した。併せて波や風で揺れる風車ブレードに自動追従し、点検用の画像を撮影する完全な自動点検を実現するための要素技術の検証を行ったという。
従来ドローンでの点検は、風車の正面位置などのスタート地点へ、ドローンを手動で移動させる必要があった。今回、ナセルの向きとブレードの静止位置を把握できたことで、スタート地点への移動も自動化され、完全自動点検に必要な技術評価を完了した。
以上の成果から今後洋上風力発電での導入が増えると見込まれる世界最大級の大型15MW級風車のブレード点検を完全自動化するめどが立ったという。
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今後の予定
2024年2月の検証では、風車全体を見渡せる位置に手動でドローンを移動させてから風車方位の検出を行う従来の手法ではなく、ドローンが旋回飛行しながら画像を撮影し、同時に処理することで正面位置とブレードの角度を認識し、自ら移動して検査する完全自動点検の実現性を確認する。
今回の完全自動点検が実用化されれば、定期点検や、落雷などにより風車ブレードに異常が検知された場合でも、保守員は風車まで行くことなく、点検が可能となり、風車まで保守員を送り届ける輸送費や人件費の削減で点検コストが低減される。さらに、保守員の人材不足への対処も期待される。
東芝ESSは、今回開発した技術をもとに、2024年2月までにドローンを用いた風車外観点検の完全自動点検実現を目指すという。また、ナセル内部点検を遠隔で実施するシステム開発、および東芝ESSのエネルギーIoTサービス「TOSHIBA SPINEX for Energy」上での風車健全性分析サービス提供により、浮体式洋上風車の運用・保守コスト20%削減を目指すとしている。