txt:藤川理絵 構成:編集部
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実証の概要
中電技術コンサルタントとKDDIスマートドローンは、SYSTEM5の協力のもと、広島県内にある砂防堰堤(さぼうえんてい)において、「DJI Dock」と「Starlink」を組み合わせて活用する、巡視点検の試行実証を実施した。
現場は、過去に豪雨で土石流が発生して、死亡者を含む甚大な被害を生じ、防災事業として砂防堰堤が整備された場所で、このような場所でのDJI Dock試行実施は全国でも初めてだという。
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また、2023年10月24日~25日に広島市内で行われた「建設技術フォーラム inちゅうごく」に出展した中電技術コンサルタントのブースにおいて、現場の様子をライブ配信して、砂防施設における巡視点検の自動化・省人化の実現性を示した。
実証の背景と狙い
気候変動に伴い、日本各地で豪雨災害が頻発する昨今、砂防施設の重要性はますます高まっている。しかし、人口減少が著しい日本では、砂防施設の巡視点検においても、担い手不足は深刻な課題だ。また、雨が降っている最中での災害対応は、二次災害の危険性が極めて高い。
中電技術コンサルタントでは、10年前からドローンによる代替可能性を模索してきたという。同社上席執行役員で先進技術センター長をつとめる荒木義則氏は、このように話す。
荒木氏:ドローンによって作業員の安全確保や省人化を図ってきたが、さらにDJI Dockを上手く活用することで、どこで何が起きても対応できる体制を、平時から整えることができる。また有事の際には、三次元計測による差分解析で、どこが大きく崩れたのか、土砂量はどうか、周辺の崩れる危険性などを見て取ることができ、非常に効果が高い。
「DJI Dock」×「Starlink」
しかし、山間部でのドローン運用は、電波の途絶が課題となる。また、DJI Dockはクラウドで遠隔管理するため、通信は必須だ。
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そこで本実証では、高速かつ低遅延の衛星通信「Starlink」を組み合わせて活用。下り300Mbps、上り20Mbpsほどの通信環境を、安定的に確保できたという。
KDDIスマートドローンが事前に調査を行い、電波状況を確認したうえで、DJI Dockと接続し、クラウド「DJI FlightHub 2」経由で、遠隔管理を行なった。
KDDIスマートドローンの事業企画部 部長 小川兼治氏は、「DJI FlightHub 2」を用いるメリットについて、このように説明した。
小川氏:PC上でウェイポイント設定時、撮影する場所、カメラの角度、ラップ率などの撮影設定も3次元地図上でできるので、もちろん現場での安全管理や危険予知の能力は求められるが、熟練の操縦技術が必要なくなることも、DJI Dockを用いる大きなメリットだと考えている。
将来目指す姿
荒木氏:今回の実証では、こういった点検しないといけないところが、広範囲に連続しているエリアに、DJI Dockを常設することで、効率化できると確認できた。
DJI正規販売代理店であるSYSTEM5や、DJI Dockの取扱いを行うKDDIスマートドローンは、企業や自治体の要望を受けてPoCを行うことも可能とのことだ。本実証を皮切りに、大規模インフラ設備での利活用を見据えた実証が、各地で進むことが予想される。通信や電源の確保といった技術課題のみならず、所有者と運用者の役割分担や人材教育など、導入に向けた課題の抽出と解決に向けた議論が進むことが期待される。DJI Dockに関するお問い合わせはこちらまで。