毎年、数字の予測や執筆に参加している「ドローンビジネス調査報告書」(インプレス)も10年目を迎えた。
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ドローンビジネスを捉える際のポイント
ドローンビジネスを捉える際に重要なのは、以下になる。
1.自社事業の立ち位置
大きく分けると、3つに分かれる。
1つ目が機体関連のビジネスである。機体メーカーは勿論であるが、機体メーカーに部品や周辺機器、アプリケーションを納入したり、機体メーカーに対しての開発や検査を請けたり、また、機体の組立てなどを請けたりする事業も、ここに含まれる。ビジネスの市場規模に換算されないが、機体の販売会社や代理店も機体関連のビジネスレイヤーに含まれるだろう。もし限られた機体メーカーのために事業計画を立てている場合は、その機体メーカーの事業依存が高くなる。
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日本においては残念ながら、機体メーカーで黒字化している企業や事業部門は少ない。それは、今まで多くが国プロといった補助金や助成金といった形での依存度が強く、その補助金や助成金を受けている間に一定数の機体販売の数量の確保を実現することが難しかったという現状がある。
より詳しい状況は以前のコラムに書いた。
2つ目がサービス関連のビジネスだ。サービスといっても、いくつかのカテゴリーに分かれる。オペレーション(操縦・運用)系のサービス、ドローンで取得したデータ処理系のサービス、機体や運用管理系のサービスなどとなる。また、サービス提供の仕方も、実際のオペレーターの提供や、アプリケーションやクラウドを中心にしたものなどがある。
このサービス関連のビジネスにおいては明暗が分かれている。この明暗に関しては後述したい。
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3つめがドローン周辺関連のビジネスだ。これはオペレータースクールやドローンエンジニアスクール、保険、ドローン活用ユーザー向けの開発業務、コンサルティングなどがある。ドローン市場の拡大とともに、この周辺関連も拡大してきてはいるが、オペレータースクールなどは過剰感が生じている。ドローンビジネス市場規模には換算されないが、今まではドローン関連の国プロや自治体予算のビジネスの窓口や事務局といった動きも一定の規模感があった。
2.活用段階
(1)実証実験
実証実験は、企業が事業企画の予算を支出し行うケースと、国や自治体が公募し実施するケースとある。当初は実態検証のような「何ができるか」を検証する機会も多かったので、国や自治体が開発に近い部分で出しているケースが多かった。
しかし、様々な分野でドローンの実態が明確化していく中で、こういったケースは少なくなってきた。現在も国や自治体が公募するケースはあるが、件数が少なくなっており、どちらかというと、ユーザーやサービサー向けの補助金や助成金にシフトしてきている。企業が支出する実証実験はより実際の環境やシチュエーションの中での効果測定やその進捗の中での効率化といった部分に注力されている形が多い。
(2)実用前検証
これは2020年12月のこのコラムでも書いたが、実際のところ、2020年から現在に至っても、この段階で留まっており、なかなか実用化といったステージに進まないものも多いのが現状だ。
この段階においては、以前も示した以下のような検証課題がある。
- 技術の確立
これはその内容に応じた技術が確立しているかという視点で、ドローンの機体制御だけでなく、カメラやセンサーなどのペイロード制御技術やその現場に即した個別の技術が伴っているかということだ。 - 方式の確立
これは個々の技術ではなく、その技術の方式や自動化などの実施技術がいかに確立しているかという視点となる。これは機体管理や取得したデータ処理などの技術の使いやすさや効率化がなされているかということだ。 - 容易性
これは「方式の確立」とも連動するが、横展開するためのアプリケーションやトレーニングマニュアルがいかに整っているかという視点である。実用化の壁という点においては、この「容易性」というのは非常に重要なポイントになってきている。 - 制度化
これは外部的な要因で、法令や省令、業界でのルールやガイドラインが整ってきているかという視点である。特に点検などの市場においては、各種点検でのルール(実施サイクルや点検箇所など)が定まるとドローンの立ち位置が決まるため、定常的な利用という点では非常に有効となるポイントだ。 - 経済性
ドローンソリューションというものも、多くはそのものが目的ではなく、手段という点からも、この「経済性」が伴わないソリューションが定常化するのは難しいだろう。「経済性」は導入効果ということで、実施することで付加価値を上げるか(企業収入の増加、人的リスクの低減、顧客満足度の向上など)といった方向とコストの削減が図れるか(人的リソースの効率化、期間の短縮、SCMの実現など)といった方向がある。
実用化に進まないのは、その中でも活用のエリアや内容によって、異なるものの多くは技術の問題というよりも、現場で使うに値するものになっているのかというポイントがある。
これは使う側においても、使い勝手が万全でないと採用しないといった、日本特有の完成度の高さをあまりに求めすぎるといった点もあるだろう。
また、ここの段階において、多くのシーンにおいて、より現場にドローンの作業がシフトしていくといった流れもある。その場合、自社の部門ということもあるが、測量や点検といったエリアにおいては、大手企業での活用が多いため、子会社や関係会社に作業委託するケースも多い。年間に数回といった実施ケースの場合には、飛行部分を今まで通りにドローン企業に委託するケースも多いが、日常的な実施の場合には、その子会社や関係会社で実施する形になるケースが多く、その場合には、導入サポートやトレーニングをドローン企業が請け負う。
(いわゆるドローン事業者は、それまでは運用や操縦といったオペレーター業務を請け負っているが、実用が進むにつれてそういったビジネスが少なくなってきており、この実用化が進むフェーズにおいて、ドローン事業者のビジネスが先細りをしていくといった背景がある)
(3)実用化
もし、活用段階がこのステージで安定的にドローンビジネスを伸ばしている会社があれば、それは事業としても異なったステージに入ってきていることになる。
この実用化の段階を迎えている事業に関しては、苦しんでいるドローン事業者が参入してくるケースも多く、事業者の過剰状態にもなりやすく、その中で価格競争なども生じやすい。
ただ、既存の事業者は実用化する中で、工夫をしてきており、そのソリューションが定着していく過程で一定の事業ノウハウも蓄積しており、活用者側も単に価格だけではなく、その効果検証も必要だ。また、自らの顧客にどうやって価値を与え続けるかといった観点も提供する側は重要となってくる。
(この辺に関しては、ドローンビジネスだけでなく、その他のビジネスも同様だ)
3.活用頻度
ビジネスを組み立てたり、その検証したりする中において、重要なのは実用化されたときの活用頻度である。
毎日、週2-3回、週1回、月2-3回、月1回、半年に1回、年に1回、数年に1回など、その活用頻度によって、ドローン事業者の顧客に対するポジショニングも変わってくる。特に利用頻度が高くなればなるほど、先ほど書いたようなオペレーティングの内製化の流れは強くなってくる。
また、一方で活用頻度が高いものは、その初期費用コストが多少高くなっても、1回あたりの使用コストは安くなってくることもあり、コストをかけやすい。逆を返すと、活用頻度が低いものは、その初期費用コストを掛けにくく、その費用対効果の観点が厳しくなる。
また、ドローン事業者もどういったサイクルで売上が上がっていくのかをきちんと考慮して、マーケティングや組織作りをしていくことも必要だろう。
ドローン事業者においては、こういった観点をきちんと捉えて、自社企業の強みや経験値などを考えて、ユーザーに対して、きちんとした提案を行っていくことが肝要であろう。