ふわふわドローンを知っていますか?
ドローンといえばスピーディーでシャープな動きをするものというイメージがありますが、それとは真逆に、ふわふわと風船のように浮かびながらゆっくり飛ぶバルーン型のドローンがいろいろ登場しています。
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ヘリウムガスで浮かぶバルーンに小さなプロペラを取り付けてコントロールできるバルーン・ドローンは、ライブコンサートやイベント演出用として数年前から見かけるようになってきました。デザインのしやすさやインパクトの強さで注目を集めるようになり、風に流されたり墜落する危険のあるアドバルーンに変わる安全な広告手法として用途が拡がっています。
2016年にはスイスのSkye Aero社が、プログラミングで自在に動かせる直径10フィート(約3メートル)のバルーンを開発するプロジェクトをスタート。現在はAEROTAIN社に名前を変え、様々なデザインや形のバルーン・ドローンを提供していて、巨大な目玉やサッカーボールといった球形以外に、スタートレックのエンタープライズ号のような複雑な形のバルーンもドローンにして飛ばせる技術を提供しています。
■AEROTAIN
ふわふわと浮かぶバルーンはドローンの得意とする空撮にもぴったりです。そこに目をつけたのがニューヨークを拠点にするスタートアップのSPCIAL社で、同社が開発する「Halo」シリーズはバルーンに映像中継用のカメラを搭載し、主に屋内でスポーツやコンサートを空撮するために設計されています。
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ポイントは撮影の邪魔にならないようローター音を極力抑えて静かに移動できること。イベントの最初から最後まで撮影できるよう一度の飛行で連続3時間飛び続け、最高時速30kmで移動もできます。ビルボードとしてのインパクトも高く、ソーシャルメディアの拡散という点でも評価されています。
■SPCIAL「HALO」
SPCIAL社のHALOはカメラを使ってコントロールする
SPCIAL社では「HALO」のようなバルーン・ドローンを「ロボット・クラウド」と呼んでいて、新しいジャンルを確立させようとしています。そこに早速参入しているのがパナソニックで、「バルーンカム」という名前のバルーン・ドローンを開発し、今年1月にラスベガスで開催された国際家電見本市のCESでプロトタイプを発表しています。
見た目はまさしく雲のような形で、ローターはバルーンの中に隠れるよう配置されています。ポイントはバルーン内にあるLED照明でカラーリングを変えたりメッセージが表示できること。空中から投影できるプロジェクターも搭載されていて、幅広く活用できるようにデザインされています。
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■パナソニック「バルーンカム」
パナソニックのバルーン・ドローンはローターが外から見えないのがポイント
人の気持ちを察するドローン「Zoological」登場?
不思議な雰囲気を感じさせる「Zoological」のドローンたち
こうした広告用途と異なるところでもバルーン・ドローンは使われています。アーティストグループのRandom Internationalがつくったバルーン・ドローンは、ヘリウムで浮かび上がるバルーンに小さなローターを付けて飛ばすところまでは同じですが、見た目のシンプルさとはうらはらに、自動運転自動車にも搭載されている高性能な車載ライダーを使用した完全自律飛行が可能で、複数のバルーンで複雑なフォーメーションを組んで飛ばすことができます。
ポイントは飛行システムで、センサーで地上にいる人の動きとそこから感じられる“気持ち”を察し、その気分にあわせて近付いたり離れたりするという面白い仕組みになっています。「Zoological(動物学)」と名付けられた作品の制作目的は、群れで動く動物の動きを自律型のバルーンで表現するとともに、群れの近くにいる別の動物(この場合は鑑賞者)の動きからどのような影響を受けているのかを可視化することで、観客は機械と動物の動きがどのようなアルゴリズムで動いているかをバルーンを通じて体感することができます。
プログラミングの監修に世界的に有名なダンス振付師として知られるウェイン・マクレガー氏が参加しているのもポイントで、メディアアート作品としての完成度も追求されています。
というと、いかにも神秘的な作品に思えますが、Zoologicalを紹介するビデオを見る限りではドローン独特のあのモーター音がかなりうるさく、BGMの音楽も聴こえにくいほど。それでも人の動きに反応して、ゆっくりとフォーメーションを変えるバルーンの動きはまるで生きているようで、ここからまた次の新しいバルーン・ドローンのアイデアが生まれるかもしれません。