ドローン・ジャパン株式会社は、イームズロボティクス株式会社と協働し、その経験とパートナー連携を基に、国内ドローン関連の製品・サービスの社会実装を加速するため、各ドローン関連企業の技術連携が可能なプラットフォームを形成するための「ドローン オープンプラットフォーム プロジェクト」を開始する。
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背景
ドローン産業も社会実装が本格化してきている。ドローン産業の健全な発展のためには、ドローン本体の基本機能だけでなく、機体の拡張機能、ペイロードなどの周辺機器や通信、アプリケーションも、各業務分野の特性に合わせて、適切な構成をする必要があり、また、上空LTEのサービス化が進む中で、安全性やセキュリティの向上も必要になってきている。
資本力や規模の大きいドローン機体メーカーであれば、すべてを含んだ垂直統合型のソリューションが提供可能だが、日本のドローン機体メーカーはベンチャー企業が多数を占め、すべてを含む垂直統合型の企業に成長するには非常にコストと時間がかかる。米国ではそういった課題解決のため、オープン系の機体プラットフォームの採用により、社会実装に拍車がかかっている。
日本においても、社会実装を加速するには各ドローン関連企業が連携可能な形でのプラットフォームの形成が急務になっており、今回の日本版オープンプラットフォーム構想において、それを実現する必要があるという。また、経済産業省や国土交通省が策定しているガイドラインや標準化、グローバルな視点も取り込みながら進めていくとしている。
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ドローン オープンプラットフォーム プロジェクトとは
ドローン・ジャパンとイームズロボティクス、同プロジェクトの参加パートナーが、構成員(プロジェクトメンバー)となる。「各ドローン関連企業の技術連携が可能なプラットフォーム」の形成を目的に、ドローンを各技術ブロックに分解し、以下を行う。
- ブロック間の接続やデータ交換のルールの策定
- 各機能におけるドローンソリューションの整理
- 各業務分野におけるドローン技術の整理
- 当プロジェクト推進のための人材育成
- 共通したサポート体制の構築
ドローンオープンプラットフォームの技術ブロック構成
各技術ブロックの内容
[ドローン本体]
- Flight Controller:基本機体制御、高可用性、二重化など、安定性や安全性を高める技術を提供
- センサー(IMU、コンパス、GPS/GNSS、気圧計など):自己診断など、安全性や安定性を高める技術を提供
- バッテリー:二重化、自己診断など、安全性を高め、扱いやすい技術を提供
- モーター:熱や回転むらなどの異常検知といった安全性を高める技術を提供
- Flight Code:基本機体制御の中で、セキュリティ(セキュアフライトモード)、フェイルセーフなど、他の技術ブロックと連携し、安全性や安定性を高める技術を提供
- Companion Computer:業務に合わせた飛行が可能な高度な機体制御、ドローンに搭載するペイロードの機体と連動した制御、通信の優先順位などを制御する通信制御、ユーザーがより使いやすい機体管理が可能な技術の提供
- ペイロード:搬送物、散布機、カメラ、ロボットアーム、パラシュートなどのペイロードを遠隔で操作、機体と連動する技術を提供
[ドローン外部]
- 通信:通常の無線、LTE、5Gなどの通信に対応し、通信の安定性や安全性を高めるため、二重化やフェイルセーフ、セキュリティなどの技術を提供
- アプリ:使用環境に応じて使いやすいアプリケーションを提供するとともに、安定性・安全性を考慮し、リスク回避やセキュリティを強化したアプリケーションの提供
- プロポ:二重化、セキュリティなど、安定性や安全性を高める技術を提供
- クラウド:実運用に向けて機体やパイロットの管理、搭載しているフライトコード管理などを容易に行うことが出来るソリューションを提供するとともに、安定性や安全性を向上させるためのログ自動解析ソリューションの提供
ドローン オープンプラットフォーム プロジェクトの主な活動
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- 各技術ブロック間の接続やデータ交換のルールの策定・標準化
- 各機能におけるドローンソリューションの整理
- 各業務分野におけるドローン技術の整理
- Open Platform推進のための人材育成
- 共通したサポート体制の構築
+ (各参加パートナーの技術やソリューションが揃ってきた段階) - 各参画企業の技術やソリューションの紹介
- ソリューション別、業務別の事例の紹介
- ユーザー顧客とのエンゲージメント
ドローン・ジャパンの役割
- 各技術ブロックのとりまとめ
- プロジェクトメンバーへのコンサルティング
- ユーザー企業へのプロジェクトメンバーが持つ技術紹介、提案とアレンジメント
イームズロボティクスの役割
- オープンプラットフォームで長年培ってきた製品の提供(機体全般:UAV、UGV、USV 他)
- ペイロード搭載と連携支援・制御アルゴリズム開発、AIモジュールの提供
- リモートID送受信機・内蔵モジュール、3キャリア対応LTEモジュールの提供
プロジェクトメンバーの参加にあたって
- MAVLINKでのコミュニケーションプロトコルを採用していること
- ドローン オープンプラットフォーム プロジェクトが策定する各技術ブロック間接続やデータ交換のルールに基づき機体提供を計画すること
プロジェクトメンバーとして参加するメリット
各技術ブロックサービス提供企業
- 自社の開発した技術が様々な機体メーカー、ドローンサービス提供企業、ドローン活用企業に展開可能
- 将来的には、日本だけでなく、諸外国、東南アジア、アフリカ、欧州などといったエリアにも展開可能
- 今後同様なプラットフォームを、マルチコプターだけでなく、固定翼やVTOL、陸上走行車、ボート、潜水艇にも展開可能
機体メーカー
- 開発コストを抑えて、新たな機体制御、ペイロード、アプリケーション、クラウドサービスを自社の強みと組み合わせて、採用が可能
- 共通な技術人材におけるサポート網の確立
プロジェクトメンバーが提供する機体メーカーや各サービス提供企業の技術を活用するユーザーのメリット
- 自社の活用領域に合わせての技術選定が可能で、独自開発を必要としなくなる
- 1社だけへの技術依存が減り、様々なリスクが低減される
- 共通な知識をもった技術人材の育成によりサポートコストが削減される
プロジェクト開始時の賛同パートナー(プロジェクトメンバー)
技術ブロックサービスパートナー
- 日本航空電子工業株式会社:国産の高信頼性フライトコントローラ等の開発・提供(Fright Controller)
- 古河電池株式会社:インテリジェントな通信等による電池の安全な活用技術(バッテリー)
- 株式会社アスター:ドローン用国産防塵防水モーター(モーター)、ドローン用国産ESC(モーター)
- Ardu X Japan株式会社:フライトコードのカスタマイズ化(フライトコード)、基本のモバイルアプリケーションの開発・提供(アプリ)
- NECソリューションイノベータ株式会社:コンパニオンコンピューターによる機体監視・制御(Companion Computer)、通信方式の多重化(通信)
- パナソニック システムデザイン株式会社:高度な機体制御(Companion Computer)、LTE通信制御(Companion Computer)、遠隔監視・制御(クラウド)、機体・ペイロード管理(クラウド)、機体認証とデータ保護によるドローンセキュリティコンサル
- パーソルプロフェッショナルアウトソーシング株式会社:ログの暗号化(Companion Computer)、ログの自動解析(クラウド)、クラウドサービスのセキュリティ対策・検査
- 日本工機株式会社:ドローン用パラシュート装置の開発・製造(ペイロード)、非火薬ガス発生剤および火薬利用のデバイス開発・製造(ペイロード)
- 株式会社ザクティ:ソリューション開発・販売、事業支援サービス、デジタルカメラ及びデジタルイメージングデバイスの開発・製造・販売(ペイロード)
- 株式会社TKKワークス:ドローン向け無線機の開発・製造・販売(通信・プロポ)、カスタム機体の設計受託および試作機の製作
機体メーカー
- 株式会社石川エナジーリサーチ:機体プラットフォームの開発・販売
- 株式会社エアロジーラボ:UAVの機体開発(関連パーツやデバイスの統合を含む)
- 株式会社ACSL:MAVLINK対応のドローン開発・提供
- 株式会社空解:長距離型VTOL固定翼ドローンの研究開発・製造販売・オペレーション。自社設計、日本製
- セブントゥーファイブ株式会社:MAVLink対応機体の取り扱い、ドローン開発・システム開発、ドローンを用いた点検サービス
- 株式会社ジェットシステム:ヘルプデスクやオンサイトなど機体トラブルの一次診断や営業補助等
- 株式会社プロドローン:バッテリーマルチ/エンジンシングル機体開発生産、量産機種KDDIスマートドローン搭載、自社GCS開発販売、ワンオフドローン制作
アドバイズパートナー
- DRONE FUND:企業連携に関してのアドバイス
- 一般社団法人セキュアドローン協議会:ドローンのセキュリティに関してのアドバイス
今後の目標と取り組み
2022年度中に、技術提供企業20社、機体メーカー10社、ドローンサービス企業5社、ユーザー企業10社の参加を目指し、ユーザー事例3~5件(実証実験ベース)を目標としているという。2025年度までには、各業務分野における技術適正化によるドローン活用市場拡大によって、プロジェクトの活用によるドローン市場を7,000億円(現状5,861億円予想[インプレス総合研究所調べ])へ拡大することを目指すという。
同プロジェクトが連携を予定する海外のプロジェクトは、既に世界で1,000社以上が参加するオープンソースコンソーシアムだという。各国の機体メーカー、センサーおよびデバイスメーカー、ソフトウェアハウスがそれぞれのシステムを提供する中、日本プロジェクトはハードウェアやソフトウェアにおいて共通のルールやドキュメントを揃えることで、グローバル展開への後押しとしたいとしている。
また、内閣府が進める準天頂衛星"みちびき"の受信範囲での事業展開推進についても検討しているという。同プロジェクトを通して参加メンバーが、健全に"競争"し、業界全体の拡大のため"共助"できるような取り組みとなるよう目指していくとしている。