2025年開催の大阪・関西万博で空飛ぶクルマの商用飛行を目指す独eVTOLメーカーのVolocopter社は、運用を予定している2人乗りのeVTOL機「VoloCity」の実物大モデルを公開する展示会「ヴォロコプター・アーバン・モビリティ・ショーケース」を3月8日より5日間、大阪梅田にあるグランフロント大阪で開催する。初日には同社CCOのクリスチャン・バウアー氏と、大阪府副知事の山口信彦氏らが出席するオープニングセレモニーが開催された。
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2011年に世界で初めてeVTOLの飛行を達成したVolocopter社は、数年前から経済産業省・国土交通省による「空の移動革命に向けた官民協議会」ならびに、大阪府による「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」に参画し、関係自治体と協力しながら国内での安全かつ持続可能なUAM(Urban air mobility/アーバン・エア・モビリティ)のエコシステム構築に向けて動いてきた。複数の日本企業と製造や資金援助の面でパートナーシップを次々と結び、今月21日には国土交通省よりエアタクシーの型式証明申請が受理される予定だ。
VoloCityはVolocopter社が開発する3タイプある機体のうち、同社がエアタクシーと呼ぶ都市内で近距離を自律飛行するeVTOLで完全電動化されている。機体の全体の直径は11.3mあり、重量は700kg。18個の独立したローターを備え、これまでのテストではそのうち3個が停止しても安全に飛び続けられたとしている。動力は9つのバッテリーパックを使用し、現時点での巡航速度は時速90km、航続距離は35kmだが、バッテリーの改良によって変更される可能性がある。
自律飛行を想定しているため機内にはハンドルなどの操作設備は無く、運航をコントロールするタブレットのみが搭載されている。その分だけ機内は広々としており、ラグジュアリー感がある。ただし、実際の飛行ではドライバーが同席するため、実質的には一人乗りとなる。最終的な飛行ルールや利用料金についてはこれから調整に入るところだが、現時点では往復で航続距離の範囲で安全に飛行できるルート設計を検討している。万博では他にも複数が商用飛行を予定しているため、それらの調整も必要だ。
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会場でバウアー氏は同社のこれまでの取り組みについて説明し、「1500以上のテストフライトを成功させた経験に基づき、運用では安全性に最も力を入れる」と強調した。大阪での運用前に、2024年には夏季オリンピックを開催するパリでの商用飛行を予定しており、その他のシンガポールやローマなどの地域で運用を行う計画を進めている。それらで得られたデータや経験をもとに、半年間の万博開催期間中にどのような形でサービスを行うのかも検討していく。
セレモニーのあいさつで山口副知事は「万博だけのデモンストレーションに終わらせず、その後も確実に定着するために、まずは2025年に向けた準備を加速させている。商用飛行を開始するにあたり、今回の展示で実際に機体を見て、感じてもらうことで空飛ぶクルマが大阪の空を埋め尽くすようになる未来をイメージしてもらえるのではないか」と語る。一方で、「eVTOLの商用飛行は日本では初めてとなるため、運航ルールから離発着所の整備まで決めなければならないことはたくさんある」とも述べた。
課題解決に向けては日本企業とのパートナーシップ強化に力を入れる。2020年にJALと提携したのをはじめ、今年に入って住友商事からの出資や、積水化学工業との資本提携を行っている。Volocopter社では運用システムなどの開発で Microsoft の協力を得ているが、国内ではNTTコミュニケーションとの連携を図っており、今後も連携先は分野にこだわらず増やしていくとしている。
Volocopter社CCOバウアー氏及び広報担当の糸賀さんへの取材レポートはこちらになります。
Volocopter社CCOバウアー氏に単独インタビュー。日本でeVTOL機体生産する可能性も